村、脱出
夜。
村の牢屋だけあって、見張りも帰宅をするようだった。ランプのろうそくも燃えつき、辺りが暗くなった頃、囚人は動き出す。
カチャカチャと金属が擦れる音。しばらく鳴っていたがやがて、カチャンと外れる音となって止まった。
「やっと外れた…」
ふう、と一息。すぐに次の行動に移す。
集中。自分の身体の中を流れる気を感じ取る。
いつも感じるのは、自分の中の熱い気持ち。熱さはどんどん上がっていき、対象を燃やし尽くすイメージを浮かべる。
だが今回は違う。夜、暗い世界、光の中に生まれる影、黒…初めて感じる魔力。暗くて、寒くて、寂しい、虚しい…負の感情が、少女を包み込む。
不安。力を行使することで、自分が違うものになる。そんな感覚。だけどーーー
ーーーいける。使える。力が、闇が、あたしの声に応えてくれる!
なんとなく、おかえりと、帰還を祝われたような気がした。
少女は唱える。
「シャドウ・ダイブ」
じゃぼんと水しぶきを上げて水の中に潜る感覚…揺らめく水面…だが水面はハッキリと表の世界を映し出していた。
初めて入る影の中は水中のような空間だった。建物の構造と同じような空間。四角い牢屋。鉄格子のない四角の牢屋。壁の場所も奥行きがあるが、透明の壁があるようでその先に行くことはできない。鉄格子のある場所を泳ぐように潜り、階段を登る。
階段の上は事務室のようだった。表では机が並び、窓から月明かりが差し込んで来ている。
影の中は机は無いが月明かりが差し込む箇所に壁が出来ている。当然、壁には入れない。
(影のところしか通れないんだ…!)
泳ぐように入り口へ向かう。入り口からも月明かりが差し込むため、ここで浮上。プールから出るように水がまとわりつき、流れ落ちる。そんな感覚。実際には濡れてなどはいない。
(不思議…だけど今は先を急ごう…)
誰にも見つからないように警戒しつつ、フィアラは外へ出る。
満月に照らされた村はとても静かだった。そよ風の音がうるさく聞こえるほどに。
フィアラの見える範囲には人の姿は見えなかった。みんな家に帰っているのだろうか?もっともその方が今の彼女には都合が良いのだが。
「今のうちに…!」
なるべく素早くかつ音を立てないようにフィアラは走り出す。村の出口に近い建物の角を曲がったところで、
(…っ!やばっ!)
さっと建物の角を引き返す。人がいたからだ。
「あーあ。つまんねえの。もう討伐されたなんてさ」
「いいじゃないか。危うきには近づかない方がいい」
「俺たちだって、そこそこに強くなったんだ!強敵とやり合ったって勝てるはずだぜ!なあ?」
「それでも悪魔は危険よ。私は反対」
「ちぇ…弱気なんだからよぉ…」
角からそーっと覗き見る。冒険者だろうか。4人が話し合っていた。実際話していたのは3人だが。
ふと、1人が振り返った。顔を引っ込める。
「どうした?」
「…いえ。見られていた気がして…」
「本当に用心深いなぁ!村の中だぜ?もっと気ぃ抜いたって大丈夫だろうぜ!」
「まあまあ。とにかく宿に戻ろうか。明日次の街に出発するんだろう?早く戻って休むべきだ」
「さんせーい!行きましょ、レティ!」
「…ええ」
終わったのか4人は出口から逆の方へ去っていく。
フィアラは音を立てないように歩き、角から4人が去った方を覗く。鉢巻をした戦士の男、重装備を身につけた騎士の男、ローブを着た魔法使いの女、動きやすそうな装束に身を包んだ長髪の少女。4人が並んで村の奥に歩いていくのを見て、フィアラは村の出口に向かった。
その姿をレティと呼ばれた長髪の少女は振り返って見ていた。
闇魔法の行使、村脱出、冒険者との邂逅
意味深な感じになったかな?
(なってない)




