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しおりと望み叶える魔法使い  作者: 須藤 柘榴
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その1・季節廻る国と魔法使い

初めて書き上げた作品のため、お見苦しい点が多々あると思いますが、お付き合いいただければ幸いです。

しおりは、いろんなお話が好きな女の子。

いつも、寝る前には本を読んでもらったり、新しいお話を考えたりしていました。

そんなしおりのマイブームは、お気に入りの本を枕の下に入れて眠ること。

そうすると、夢の中でそのお話の中に入れる気がするからです。

ある日のこと。しおりは、枕の下に入れる本を探していました。

すると、今まで家で見たことのない、不思議な本を見つけました。

その本は、お話が書いてあるのは最初だけで、後ろのページが真っ白だったのです。

今日は、その本を枕の下に入れて眠ることにしました。


しおりは布団に入ると、枕の下に入れた本のことを思い出していました。


『あるところに、春・夏・秋・冬・それぞれの季節を司る女王様がおりました。

女王様たちは決められた期間、交代で塔に住むことになっています。

そうすることで、その国にその女王様の季節が訪れるのです。

ところがある時、いつまで経っても冬が終わらなくなりました。

冬の女王様が塔に入ったままなのです。

辺り一面雪に覆われ、このままではいずれ食べる物も尽きてしまいます。

何故冬の女王様は塔を離れないのでしょうか。

何故春の女王様は塔に訪れないのでしょうか。』


最初の方に書いてあったお話は、こんな感じだったな。

冬の女王様が塔に入ったままなのは何でだろう。春の女王様が来ないのは何でだろう。

あんな理由かな?それともこんな理由かな?そして……という具合に、お話のことを考えているうちに眠ってしまいました。


気がつくと、しおりは知らない場所にいました。

木で囲まれた小さな部屋で、窓の外には真っ白な景色が見えます。

(お家で寝たはずなのに、ここはどこだろう、隣で寝てたお父さんとお母さんはどこにいったんだろう。)

そう思って、不安で泣きそうになったところに、誰かが話しかけてきました。

「こんばんは、お嬢ちゃん。あなたに協力してほしいことがあってね。それでお休みのところ悪いんだけど呼び出させてもらったんだ。」

そう言ったのは、紺色のローブに三角の帽子をかぶった、魔法使いのような格好をした人でした。

白い髪をかかるくらいに伸ばし、長いまつげと切れ長の目にすっとした鼻の綺麗な顔をほほえませています。

何でこんなことになっているのかわからないしおりは、とりあえず自分を呼び出した、というその人に色々聞いてみることにしました。

「ここはどこ?あなたはだれ?呼び出したってどういうこと?わたし、お家に帰れるの?」

魔法使いのような人は、不安そうなしおりの様子を見て、膝を曲げ、目線を合わせて言いました。

「私は『望み叶える魔法使い』。そしてここは『季節廻る国』と呼ばれている。だけど、今この国は冬になったまま、春が廻ってこなくなってしまっているんだ。」

それを聞いてしおりは、寝る前に読んだ本のことを思い出しました。

「そう、お嬢ちゃんが読んだ本に書かれてあったのは、今、ここで起きていることなんだよ。そして、困ったこの国の王様は、こんなお触れを出した。」


『冬の女王を春の女王と交代させた者には好きな褒美を取らせよう。

ただし、冬の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。

季節を廻らせることを妨げてはならない。』


「『望み叶える魔法使い』である私は、王様の望みを叶えてあげたいと思った。けれど、なぜ冬の女王が塔を離れないのか、春の女王が塔に入らないのか、その理由まで一つ一つ魔法を使ってなんとかするわけにもいかない。私の魔法は大きなちからがある代わりに、何度も使えないから、ここぞという時に一度だけ、と決めているんだ。そこでお嬢ちゃんには、王様の望みを叶えるのに協力してほしいんだ。」

「えっ、そんなこと言われても困るよ……わたし、お家に帰りたい……」

「大丈夫、ここはお嬢ちゃんの夢の中みたいなものだから、次に目が覚めるときはお家のお布団さ。だからどうだい?夢の中で、本の世界を楽しむと思って挑戦してみないかい?」

魔法使いは、優しそうな声でそう言って、しおりの頭をなでました。

そのとき、しおりは寝る前のに考えていたことを思い出しました。

(そうだ、私、寝る前に冬の女王様が交代できない理由を色々考えてた。そして、もしも私がその国にいたらどうするかって考えてた!)

すると、今まで感じていた不安よりも、お話の中に入れたというワクワクの方が大きくなりました。

「わかった、やってみる!」

しおりの答えを聞いた魔法使いは、

「うん、いい返事だね。それじゃあまずは、外に出てこの国の人から話を聞いてみよう。期待しているよ、お嬢ちゃん。」

そう言って、にっこりと笑いました。

外に出ると、そこには真っ白な雪で覆われた町が広がっていました。

石かレンガで造られた家が建ち並び、その向こうには大きな塔とお城が建っているのが見えます。

まさにお話の中に出てくるような町並みと、その中に自分がいるんだということに、しおりはとてもうれしくなりました。

「さて、誰に話を聞いてみる?カフェでお茶会をしている人たちか、塔のあるお城の人あたりがいいんじゃないかと思うけど。」

魔法使いがそう聞いてきたので、しおりはすぐに答えました。

「お城!」

あんまり早く、そして元気よく答えたので、魔法使いはクスリと笑って、

「わかりましたよ、それではこちらへどうぞ。」

と、わざとらしいくらいに丁寧に案内しはじめました。

からかわれていると思ったしおりはそっぽを向きましたが、

「おや、よほどお城に行きたいんだと思ったんだけど、違ったのかな?カフェに行く?」

魔法使いはこんな意地悪な事を言ってきたので、

「お城、行く」

しおりはそう言って、口をとがらせながらお城に向かいました。

そんなに長い話ではありませんが、出題編と解答編で分けるために切りのいいところで分割しました。


1/17 20:30 魔法使いの台詞に、魔法で解決しない理由を追加しました。

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