変化。
ただいま…
私は家まで走って帰ってきた
何かを消したくて何かから逃げたくて
まさかあの転校生の不良が陸くんだったなんて…
なんであんな不良になったんだろう…
両親は仕事で家にはいない
外は夕暮れ時、薄暗い部屋に明かりをつける
そして私は鞄をリビングのソファに投げ置き
台所で水を飲もうとコップを棚から出し蛇口を捻る
学校から家までそんな距離はないのに
全力疾走したお陰で喉はカラカラだった
そしてコップ1杯の水を一気に飲み干し
コップをシンクの隅に置く
それから私は
自分の部屋に入りベッドに体を沈めた
はぁー……ため息を吐く
「明日何も無いといいんだけど…」
そう私は願った
。。。
翌日。
こんなにも学校行く事が嫌な日は
小学校以来だと思う…
足が重たくて仕方がない…
静かに学校生活を送りたい…
今まで通り静かに…
そしていつも通り靴を履き替え教室へ向かう
「ねーねー!珍しいじゃん!学校来るなんて!」
女子のキーキー声が廊下にもわかるほど響いていた。
その声は私の教室から聞こえて
朝からイライラさせられた
そして私は下を向いたまま後ろの扉から教室へ入った
その女子達の中心に居たのは不良くんの柳田だった
学校にあまり来ないからか珍しく思った女子達が集まっていたのだ
なぜあんな人だかり…?
私は静かに後ろの窓際の席に座り小説を机の中から出そうとした
あ…。
その小説は私にとって大切なもので…
時間がある時はいつも読んでいる
だから図書委員の仕事の時も読んでいる
そして図書委員の仕事が終わったあといつも教室へ戻り次の日忘れないようにと自分の机の中に入れていたのに
昨日勢いで帰ってしまってここに無いのだ
やってしまった…私の楽しみが…
「ちょっとあの人誰…?」
私がガッカリしているとコソコソ話が聞こえ
声のする方を見てみると女の子2人が後ろの扉の前で隠れるように柳田を見ていた
「4月になってすぐに転校してきた柳田 陸って人らしいよ!」
もう1人の女の子が自慢気にもう1人の女の子に答えていた
私情報持ってます
ってオーラ出てるよあの子……ふっ
「そうなんだ!あの人見た目不良なのになんであんな人気なの!?」
興味津々の女の子がまた情報持ってますオーラ満載の女の子に質問する
「あー見えて頭良くてイケメンで優しいしそしてスポーツ万能らしいよ!」情報持ってますオーラ満載の女の子はまたまた自慢気に興味津々の女の子に答える
イケメン…?スポーツ万能…?そうなの?
私は疑問だった。
小学校の頃は私より小さくて泣き虫で私の後ろを着いてくる可愛い男の子だったんだけど……んー…
まぁ確かに身長は伸びたのだろうけど…
私はいつの間にか扉の近くて話をしている2人組の女の子の話を聞き耳をたてて聞いていた…
何やってんだろ私……小説無いと辛い
「じゃぁ、なんで転校してきたの??」
興味津々の女の子がまたまた情報持ってますオーラ満載の女の子に質問する
何故だか情報持ってますオーラ満載の女の子のその自慢のオーラが消えた
「ごめん…それだけは分からないの…」
興味津々の女の子は残念といったような顔になった
「はぁー…そっかぁ…知りたいねー…」
そう興味津々の女の子は情報持ってますオーラ満載だった女の子の肩を叩いて励ましていた
私も何故か肩を落としていた
残念…
って何考えてんだ私は!!!!
私は頭をくしゃくしゃにして考えていた事を消そうとした
「何してるの?」
私の頭上で声がした。
くしゃくしゃになった髪の隙間から見えた顔は昨日図書室で見た顔だった
"ガタッ"
私はびっくりして椅子ごと後ろに下がった
「笑美ちゃんおはよう!」
そう挨拶してきたのは柳田だった…
私は挨拶代わりに頭をペコッと下げた
びっくりして眼鏡がズレてしまった…
かける意味の無い眼鏡…
私は少し下を向いたままゆっくり眼鏡をかけ直し
ミディアムほどの長さの髪を手ぐしで直していく
「え…柳田くんその根暗と知り合い?」
柳田を囲んでいた女の子達が私に睨みながら柳田に質問している
……面倒だ。
「笑美ちゃんは小学校が一緒だったんだ」
柳田は笑顔で女の子達の質問に答えていた
言わないで…私の過去…
私は自分の席を立ちゆっくり廊下へと歩き出す
「笑美ちゃん?」
柳田は私に声を掛けた
その瞬間私はまた逃げるように走り出した
「笑美ちゃん!待って!」
柳田は私を追いかけてきた
なんで追いかけてくるの!?!?
「柳田くん!!授業始まっちゃうよ!!」
女の子達の中の1人が柳田に声をかける
「わりぃ!サボる!」
柳田は二カッと笑顔で女の子に手を振って再び私を追いかけだした
「何…あの根暗女…」女達の妬みの声は私には届かなかった…
続く