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第三十九話 『ゴルディアスの結び目』 OP
夕季は自分の部屋で一人物思いにふけっていた。
いつぞやの奇妙な出来事を思い返していたのだった。
最初にひかるの顔を思い浮かべ、そこで出会った見知っているはずの別の顔を思い返し、母の写真へと目をやった。
*
夕季から差し出された緑色の石を受け取り、雅が包み込むような笑みを向けた。
「役に立った?」
夕季は何も答えようとはせず、ただ黙って雅の顔を見つめていた。
そんな夕季を雅も優しげなまなざしで見つめ返した。
「よかったね」
そう言って意味ありげに笑う。
途端に夕季の身体中の血液が騒ぎ出した。
沸騰するように、或いは凍えるような寒さを伴いながら、全身を駆け巡る血の脈流。
それは目の前にある笑顔の彼方までほとばしり、多くのかけらを融合させた。
「おかえり……」
*
ふいに切ない気持ちに見舞われ、目を伏せる夕季。
連日の呼び出し調査の疲れからか少し熱っぽいこともあり、そのまま眠そうに目を閉じて机に突っ伏していった。
交じり合う記憶が徐々に薄らぎ始めていることに、その時の夕季は気づいてはいなかった。