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第二十九話 『いびつな器』 OP

 


 その声は心に直接語りかけてくるようだった。

『貴様か』

『死にたくない、助けて……』

『貴様が引き継ぎし者か』

『わからない……』

 樹神雅はただ一点に天井を見つめていた。

 ベッドの中、室内に明かりをともすこともなく、怯える少女の心情のごとくにゆがみひしゃげながら闇に吸い込まれるその一点を。

『理を受け入れよ……』

『こわいよ、こわい、よ……』

『……すべてを混沌の渦に誘うもの……』

『いや……。死にたくない……』

「大丈夫。泣かないで」

 雅が呟く。

 優しく、穏やかに、目の前で泣きじゃくる子供を慰めるように。

『……誰』

『我の名は……』

「私は……」

『……淀みを統べるモノ』

「……」

 やがて声の途絶えた部屋で右手を差し上げる。

 手のひらを開き、その中に握り込まれていたものを眺めて目を細めた。

 薄碧色の冷たい塊が、淡く妖しく光を纏う。

『いつの日か必ず迎えに……』

 まばたきもせず、雅が頷いた。

「……はい」






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