#1
ルシファーはいつも通り、大理石に居座っていた。
目の前には長い長い廊下があって1日中時の流れを感じながら其処に座りつづける。
地獄の奥の更に奥。未知なる所に一人 ポツンと何千年もの間下人を見下しながら生きていた。
Necessary
夕日が深く沈んで廊下に影を作る。深い刻時、時計の針は一振りも動かずに音だけが鳴り響いて。
この空間に時間は必要無いから。
音が偽者と現る。
「・・・暇だ・・・」
深い溜息と共に出たのは少しの期待。何かが起きないかと内心からそう思った。
ルシファーが動くのは大きな問題が予想される時。
「大きな問題、ねぇ・・・」
もう一度深い溜息をついた。
***
「バイバイ!!」
「じゃあな」
俺の名前は愛童 智那。12歳。家は旅館を経営してる。将来継ぐのが
俺の夢だった。
「ちな、コッチよ」
「母さん」
なのに。
二度目に名前を呼ばれた時、横断した俺は
さっきまで苺味の雨を舐めていたのに
鉄の鈍い味へと変わった瞬間。目には綺麗な夕空とその空に刻み込まれた赤い斑点が映った。
***
「ルシファー様。お入りします。」
この声を聞くのはかれこれ数千年ぷり。
閉じていた瞳を開けて目の前へ移動されたドアを見据えた。
「ベリアル・・・?」
ゆっくりと開けられドアの中に立っていたのは優雅で権威に満ちた姿を持つベリアル。
如何したものかと、思わず席を立ちそうになった。
「・・・。10月31日午後4時48分29秒、愛童 智那トラックにより重体に陥り現在生死をさ迷っている状態。」
ベリアルは一息も置かずに口早に其れだけ告げると息継ぎをした。
「・・・アイドウ チナ・・・?一ミリとも耳に聴かない名だ。それが何か?」
「未知の子供です。」
その言葉にピクリと眉を寄せ、自分の耳を疑うようにルシファ―はベリアルを睨み付けるような目で見る。
「まさか、もう・・・?」
「はい、メタトロンはミカエルを使いに出しておりますが・・・。。私が出ましょうか・・・・」
「いい、俺が出てやる」
「は・・・・!?」
とにかくココの部屋から出たかった。血筋が騒ぐのがわかる。凍るような指先をグッと握り締りながら
ルシファーは智那が眠る病院へと向った。早く、早く。
何度も心の中でその言葉を繰り返しながら
病室の前には智那の両親が2人して蹲っていた。枯れた涙は頬に後を作られて。
「フン・・・。」
ルシファーは手術が行われている病室へと入る。中には焦りと困惑で空気が腐り、どの人間も目を真ん丸に見開いていた。
そのなかに一人智那が眠っていて。
「結構可愛い面してんじゃねーか。んじゃ仕事といきますか。」
智那の額に手をかざし地獄へも連れて行かんとしたところ。
「ルシファー!!お待ちなさい、その子は我等の子です。」
周りの人間の動きが止まったと思ったら目の前の扉からミカエルがやって来た。
ルシファーは小さく舌打ち。
「ミカエル・・・久し振りだナァ・・・。残念だがコイツは俺の物だよ?」
ニッコリと笑うと智那をゆっくりと抱きかかる。ミカエルはふいに戦闘態勢へと入りそうになった。
「無駄だよ、アンタじゃ俺に勝てねぇよ。」
ルシファーは自分なりの忠告をしたけれどミカエルは短く笑うと智那を奪い取ろうと手を伸ばす。
「試してみるのが一番です。ルシファー」
ルシファーの腕の中で小さく智那が動いた。