断章:その背中は星だった
地球ではないどこか、魔法と科学が両立する世界。
俺は、ライリー。ヒーローとして仲間と共に魔族と戦っている。俺には、憧れ続ける存在がいた。
──女傑ステラ
彼女は、俺の師匠でヒーローとしての知恵と技を与えた人だ。優しいけど強い、でも怒ると結構怖い。
でも、厳しい訓練がなかったら、今の俺はいない。それに、今は“友達”がある事情で離れ離れ……。いつか、取り戻してみせる。
そんなある日、魔族の発生の根源が発見され、それを破壊する任務を遂行していた。けど、俺たちは謎の結界に阻まれた。
「ダメ……何度も叩いても、ビクともしない」
と、俺の仲間はそう言う。その通り、結界にヒビすら入れられない状況だ。
「何か方法はあるはず……」
俺は冷静に考えたが、焦りが消えず方法が浮かんでこない。すると、俺の肩にそっと手を置いた人がいた。
「師匠!」
「貴方たちのために、活路を開く。この結界が破壊されるまで、ここにいなさい」
「で、でも……」
俺は、師匠の言葉に何かを戸惑った。こんな感じに、時折重要な判断ができなくて師匠に叱られることが多い。
「いいね?」
「……っ! は、はい」
俺は、師匠の言う通りに待つことを選択した。師匠は、勢いよくその場から駆け出す。
すると、それを阻むかのように、師匠に向かって敵が接近する。どうやら、結界を守っている人型の使い魔のようだ。
「フン! たぁッ! ちぇいや!」
師匠は躊躇うことなく、次々と使い魔を刀で斬り伏せていく。それは、水のように流れ、炎のように強く、星のように輝いていた。
どんな攻撃が振りかかろうとも、恐れることなく進む姿は、俺にとってヒーローとしての理想だ。
「ハァァァァァァァァァァッ!」
師匠は最後の使い魔を叩き斬ると、斧を手にして結界へ一撃を入れる。ただ、魔力を全開にしているのを俺は見ていた。そこまでしたら、身体が保たないと。
「師匠ッ!」
俺は、叫んだ。彼女に届いたのかはわからない。でも、結界に小さくヒビが入り、それが徐々に広がっていく。
「こんのヤローがァァァッ!」
師匠は、ヒビが大きく入ったところで高く飛んで急降下した。斧を大きく振り下ろすと、見事に結界を打ち砕いた。
「師匠ッ!」
俺は、仲間と共に師匠の着地した場所へ向かう。師匠は息を整えていたが、その身体は透けていた。でも、その背中は頼もしく、俺の憧れるヒーローのように輝いていた。
「し、師匠ッ?!」
「大丈夫。これで、私の役目は終えた。でも、忘れないで……いつかまた会える」
師匠は、安堵したように言った。それでも、俺は師匠と一緒に冒険したいし、強くなるための特訓がしたい。
「でも、俺はまだ……」
「行きなさい、ヒーロー! 貴方ならできる」
師匠は、そう言った。その時、彼女の──女傑ステラの兜が消えて素顔を見せた。優しい笑顔で、瞳に希望を抱いていた。
「──◯◯◯!」
俺は、彼女の本名を叫んだ。聞こえた彼女は、とても嬉しそうな笑顔を俺に向けて消えてしまった。
その光景は、二十代になった今も覚えている。俺の師匠──女傑ステラこと◯◯◯は俺の一番星だ。
彼女のように、俺も誰かの星になれたらと思う。




