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紫陽花と雨に濡れた女

作者: 昼月キオリ
掲載日:2026/04/14

雨の日。

傘を差して歩いていると、

路地裏にずぶ濡れになっている一人の女が立っていた。


濡れたウェーブがかった長い髪に濡れた衣服。

それと、虚ろな目をしていた。

唇の右側の赤い口紅が乱れていた。


20代半ば・・・

同い年くらいだろうか。


出会った女の隣には紫陽花が咲いていた。

私はその人を紫陽花さんと呼んだ。


ある人が言っていた。

紫陽花には毒があるなら気を付けなさい、と。


「大丈夫ですか?」


「私は、捨てられたの。」


「それは恋人に、という意味ですか?」


「ええ。」


「理由は何です。」


「私の愛が重いと振られたの。

家族や親戚とも縁を切って、友達もいない私にはその人だけ。

だから最後に唇を奪ってやったのよ。」


ああ、やはり紫陽花には毒があったのか。


「私ならあなたをこんな風に悲しませたりはしないのに。」


女は俯く。


「あなたもきっと私を捨てるわ。

私はそれに耐えられないの。」


一目惚れだった。


「命を賭けましょう。

もし、私があなたを捨てる日が来たら、この身を引き裂かれてもいい。」


「約束、してくれるかしら?どれだけ重い愛でも受け入れてくれると。」


雨が先程よりも強くなる。


「もちろんです。あなたのような美しい方にならいくらでも。

愛は重いほどいいですから。」


手を差し出すと、女はその手を取った。


「とにかく、濡れた体を乾かしましょう。

私の家、すぐ近くですから。

女と女、何も怖がる必要はないでしょう?」


「そうね。まだまだ夜は長いわ。」


雨が霧に変わる。

二人は路地を抜けると霧の中へと消えて行った。

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