第2章
美沙が姿を消して最初の年を越した。
そして、ようやく冬の厳しさがいくぶん和らいだ3月11日……
未曾有の大地震が、東北地方を襲った。
オレは職場のデスクで、パソコンに向かっていた。初めは普通の地震だろうと思ったが、それは間違いだった。
激しく大きくあらゆるものを揺らした。天井の繋ぎ目からプレートが落下した。
悲鳴が聞こえ、身の危険も感じた。とてもとても長い時間だった。
地球が怒りをあらわした瞬間だった。
地震がようやくおさまったあと、ただちに外に飛び出した。
隣のビルの看板が落ちていた。尋常でないことを悟った。
すぐ近くの定禅寺通りには、たくさんの人たちが避難していた。ざわざわと人々の声で満ちていた。火事でもないのに、あたりが異様に煙っていたのが印象的でだった。
オレはごったがえす定禅寺通りを渡り、晩翠通りを南へ向かった。途中、古い木造家屋が屋根だけを残して崩壊していた。
急いだ。
寒さのため息は白い。
「大仙台駐車場」の王蟲カングーが、心配だったのだ。
──駐車場の天井が崩壊し潰れていないか?
5階建の「大仙台駐車場」のエレベーターは、当然使えない。螺旋階段のような駐車場を、駐車していた4階まで走って登った。
照明の消えた薄暗い中、ぼんやりとカングーは浮かんでいた。どうやら何事もないようだ。天井からの埃が、いくぶんフロントボディに落ちていた。
ホッとした。無事だった。
安心して、ふたたび晩翠通りに出ると、暗灰色の空からひらひらと細かな雪が舞っていた。3月でも雪の舞うとても寒い日だった。
そして、巨大な大津波が東北地方を襲った時刻が迫っていた。
世紀末のような異様な雰囲気の中、多くの人々は寒さに震えながらた佇んでいた。急ぎ職場に向かった。
定禅寺通りの欅並木の下には、やはり大勢の避難した人たちで溢れていた。交差点の信号機の明かりも消え、通りの車は渋滞し始めていた。そんな人たちの合間を縫って、白い息を吐きながらオレは急いだ。




