表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

影の英雄

作者: 小雨川蛙

 

 あっ、こんにちは。

 はい。

 あなたの想像している通りです。

 あなたはつい先ほど天寿を全うしてこの場所に来ました。

 早い話が輪廻転生のためにね。


 話が早くて助かります。

 そうです。

 あなたは前世の記憶を完全に無くして生まれ直すんです。


 ついでに言うとこれからどんな人生を生きるかも決められます。

 さて、あなたは何になりたいですか?


 ――えっ?

 英雄になりたい?


 あー……残念ですが英雄として生まれることが出来る人生は残っていないんです。

 理不尽だって――仕方ないじゃないですか。

 この世界に生まれる人は皆、何かしらの役割を持って生まれるんですから。

 そりゃ、皆さん真っ先に『英雄』だとか『勇者』だとか『聖女』辺りを望みますよ……。


 他に残っているものですか?

 そうですねえ……あとはまぁ『教師』だとか『パン屋』だとか他には――え? ありきたりで嫌だ?

 私は普通とは違う存在になりたいんだ? 

 ……そんなこと言われましても。


 それじゃ、いっそ人間を止めてライオンにでも生まれてみますか?

 あー、人間として生まれたいんですね。

 はい。

 分かりますよ、百獣の王と言ってもぶっちゃけ人間の天下となった現代では虚しいばかりですもん。

 はぁ……まいったなぁ……そんなに英雄が良いって言っても――あっ、あれがあったな。


 ご希望の『英雄』として生きる人生。

 まだ残っています。

 まぁ、本物の英雄ではなくて――言わば、影の英雄ですが。


 はい。

 影の英雄って言うのはつまり『表には出ない英雄』ですね。

 華々しい活躍はない。

 しかし、彼らのおかげで人々は『一つ』になるんです。

 そして一つになった人間の強さは言わなくても分かりますよね?

 何せ、人間は古来から一つになることで進化してきたのですから。

 ――いかがですか?


 はい!

 あなたは影の英雄として生きることになりました!

 では、人生を楽しんで来てください!



 ***



 僕は今日も一人、ベッドを涙で濡らしていた。

 毎日のように続く虐めに耐えかねて、僕は今日ようやく勇気を出して先生に虐めの事を話したんだ。

 ――だけど、返って来た言葉は一つだけ。


『クラスの皆のために我慢しろ』


 それじゃ、僕は虐められるためだけに生まれたっていうの?

 意味が分からない!!

 そんな人生なんて誰が歩みたいと思うんだよ!!


「ちくしょう……」


 ――そんな理不尽な思いに包まれながら僕は今日も一人で泣き続けるばかりだった。



 ***



 影の英雄として生きる魂を見つめながら私は呟いた。


「前世で人を虐め殺したんですから、それくらいは少し我慢しなさいな」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ