守護騎士任命
「ファイア!」
今日も広大な荒野でフィーレリアの魔法が炸裂する。
魔物の代わりに目標とされた数十の案山子の様な物体は、勢いよく燃え盛った後、灰と化し風に吹かれて消えた。
「まさか、これほどとは…」
目の前で起こったことが俄には信じられない様子で、監察者たちがつぶやく。
皆がその光景に驚愕している。
未知なるものへの恐怖と、それを上回る魔物退治への劇的な期待感で体の震えが止まらない様だ。
これまで、王命により、官僚、騎士団員、執事や侍女、庭師やコックに至るまで、16歳以上の多種多様な者が、フィーレリアの魔法を己の目で確かめ、「第二王女が魔物討伐に参加することの意義」について、各々意見書を作成し国へ提出していた。
その結果をもってフィーレリアの今後が決まる。
また、この国にとって幸運だったことの一つが、フィーレリアが行使できる魔法は1種類だけではなかった、ということだ。
火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、光魔法、時空魔法…
そもそも、これら全ての魔導書が、城の書庫に保管されていたわけではない。火魔法と水魔法に関するものだけであったのだ。保管されていたのは。
だが、フィーレリアはイメージし、頭に浮かんだ呪文を唱えることで、あらゆる魔法を自由に発現することができた。それらは最早フィーレリア特有の魔法と言える。
当然フィーレリア本人も理屈などわからない。
「やるしかない」中で「やってみたらできた」のだ。
出し惜しみはしなかった。全身全霊で魔法を披露した。必ず皆に認めてもらわねばならないのだ。
-----そして、1年。フィーレリアは如何なくその実力を国中に知らしめ、常識を覆し、兄や母、遂には父を陥落させることとなったのだが、一つだけ、条件が出された。
『守護騎士をつけること』
フィーレリアに対する国民の盛り上がりは異常な程で、これを覆すことは王であっても不可能。それは一目瞭然であった。
騎士を付けたところで、これほどまでに強力な魔法を使うフィーレリアにとっては、何の意味も無いのかもしれない。
だが、過酷な戦場において、信頼足る歳の近い者が側にいることで、フィーレリアの心が少しでも和らぐのではないか。
そんな微かな期待のもと、守護騎士に任命されたのがこの時齢12歳になるアレクシス=グランデであった。
父であるイーヴァンは何かせずにはいられなかったのだ。茨の道を歩ませてしまう娘に対しての、せめてもの親心であった。
アレクシスの父であるブルーノは、守護騎士として魔物討伐に参加しなければいけない、ということをアレクシスには伝えていませんでした。
伝えても伝えなくても、基本感情が乏しいアレクシスにはさほど影響がないとわかっていたし、まっさらな気持ちでフィーレリアに仕えてほしいと考えていたからです。
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