アレクシス=グランデ 12歳(2)
引き続きアレクシス目線です。
7年前の冬。雪がハラハラと降りしきる寒い日、アレクシスは一人王城を訪れていた。フィーレリアに拝謁する機会が設けられたのだ。
緊張などしない。
ただ、どんな方なのか人並みに気になりはする。
いつまでかはわからないが、ひとまずは自分の主君になる方なのだ。
父上や兄上からは、随分と可憐な方だと聞いているが果たして。
アレクシスの母は彼が幼いときに亡くなっている。流行病だった。
それ以来、女性という存在と、アレクシスはまともに接したこともないし、向き合ったこともない。
もちろん公爵家の乳母や侍女に世話になってはいるが、それは別の話だろう。その者たちは家族であり身内だ。
身内外の女性に対してのイメージが全くといっていいほど沸かないし、実際今まで興味もなかった。
…可憐?可憐ってどういう女性のことだ?
そんなことをつらつらと考えながら、案内役の騎士に連れられ長い廊下をひたすら歩く。
どうやら指定された時刻よりも少し前に着いたようだ。
「中に入りしばし待て。」
簡潔な騎士の言葉とともに重厚な扉が開かれた。
アレクシスは一つ、息を吐き、一歩、扉の中へ足を踏み入れる。
初めて訪れた謁見の間。天井が高く開放感がある。やたら、広い。
(すごいな。さすが王城だ。)
きょろきょろと辺りを見回したい気持ちを抑えながら足を前へ進めると、すでにアレクシスの父であるブルーノ=グランデが控えている姿が見えた。
他にも数名の文官や女官達がいる。
「膝をつき頭を垂れろ」
部屋の中心部を少し過ぎた辺りで父から声をかけられたアレクシスは、命に従い、その場で言われた通りに姿勢を取る。
---数分待っただろうか。
「お待たせしてごめんなさい。どうぞ顔を上げて?あなたが私の護衛をしてくださる方ね?」
細い声だ---。
普段、男ばかりの生活を送っているアレクシスはふとそう思った。
顔を、上げる。
少し先に女性が座っているのが見えた。
いや、女性というより少女と言った方がいいか。
背は小さい。随分と華奢だ。
さらさらとした白銀の長い髪と、宝石のように綺麗な瞳が印象的だ。確か、紫色の宝石があったはずだ。
令嬢のことなどよくわからないが、多分、歳の割には落ち着いていらっしゃると思う。
「はい。アレクシス=グランデと申します。精一杯お仕えいたしますので、よろしくお願いいたします。」
アレクシスは無難にそう答えた。
「こちらこそ、よろしくね。」
フィーレリアはふわりと微笑んだ。
可憐かどうかはやっぱり自分にはよくわからない。
ただ、何となく---
外に舞い降る雪のように、儚く消えてしまいそうな笑みだと思った。
アレクシスは宝石の名前など知りません。
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