フィーレリア=エスト 6歳
物心ついた時から違和感はあった。
3歳の自分ではうまく言葉にできなかったが、
ずっと感じていた違和感。
自分が二人いるような。
自分のことを別の自分が頭上から眺めているような
---自分が自分ではないような。
両親や兄姉からの愛情を疑ったとなどない。
何かが嫌だとか、辛いとかそんなこともない。
城のみんなも優しくしてくれる。
だけど---
(私、ここにいてもいいのかな…)
幼いフィーレリアは漠然とした不安を常に抱えていた。
違和感が確かな形になったのは、フィーレリアが6歳の時だった。
(あ、私、違うんだ)
本当に、突然。ストンと『わかった』。
(私、この国の人間じゃなかったんだ)
この日、何か特別なことをしていた訳ではない。
いつもの様に、城の書庫で本を読んでいたフィーレリアの頭の中に突然景色が流れ込んできたのだ。
明らかにここではない世界で、明らかにフィーレリアではない女性がいる。
黒い髪の黒い瞳の女性。歳は自分より上に見える。
今のフィーレリアとは容姿も服装も雰囲気も何もかもが違う。
だけど、わかる。この人は、私だ。
(なんだ、そっか。)
悲しいとか、嬉しいとか、そんな感情は一切浮かばなかった。
ただ単純に、『理解した』
これだけだった。
この一言に尽きた。
ふと、自分が「こう」なのは、何か理由があるのだろうかと考える。
…いや、やめよう。考えても答えなんてわかるはずがないのだから。
ずっと感じていた違和感の正体はわかった。
霧が晴れたような、晴れ晴れとした気分だった。
満足した、と言っても過言ではない。
---さっきの私、ひとりぼっちだったな。
(恩返し、しないと。)
こんな半端物の自分に優しいこの世界に。この国すべての人々に。
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