猪狩り
「あ、旅人さんだ〜キャハハ!」
「鉄砲見せて〜!」
タデ村の依頼をこなすために歩いていると、村の子供達が珍しそうに囲んできた。
「おはようございます‥」
正直子供は苦手だが無下には出来ない。
「ねぇねぇ見せてよ〜!」
「キャハハ!キャハハ!」
無邪気なものだ。無宿渡世とは無縁の笑顔に少し癒される。
「おじさんはこれから猪狩りだ‥危ないから離れてなさい‥」
「えぇ〜嫌だ〜!」
「早く見せて〜!」
参ったな。コレじゃ足止めを食らう。
「お前たち!迷惑かけるんじゃ無いよ!」
どこかの農夫の嫁らしき女が子供達を叱ってくれた。
「はーい‥」
渋々引き上げてくれたようだ。
「どうも‥」
「困ったらいつでも言いな!」
そうして女は去って行った。
少し歩いて目的の場所に着いた。
小麦畑から程近い場所だ。向こう側には山が見える。
あそこから勢いよく猪の群れが来るらしい。
俺は頼んでおいたマグナム弾と脚立をカデナ村長から借りた。小麦は視界を遮るので高い位置から見下ろす為だ。仮に突進されてもせいぜい脚立を倒されるだけだ。怪我をしたら村に迷惑が掛かる。
ガンベルトからパイソンを取り出して最終確認だ。
以前奪った弾薬と合わせて充分な弾数だ。
再装填し易いように弾はスピードローダーに詰めてポケットにしまう。
昼過ぎだが野うさぎが顔を覗かせるくらいで何も無い。農夫たちも夕方になれば畑仕事を終える筈だ。
やや空が茜色に染まる頃、遠くで動く群れが見えた。
俺は銃を取り出した。スピードローダーも1つ出して口に咥える。
後方の離れた場所にはチラホラと野次馬が着ている。
群れはドンドン近づいてくる‥
マグナムの射程に入った!
バーン!バーン!バーン!
群れ数頭の内2頭を倒した。
ブヒヒー!ブヒヒー!
猪の断末魔と銃声が穀倉地帯に響く。
咥えたローダーで素早く再装填する。
あまりに素早いため幾らか外したが、確実にその数を減らしていく。猪は真っ直ぐにしか進まないので逃がしたのは後ろに行ってしまう。
警戒したのか群れはもう攻めてこない。
脚立を畳んで後方に移動する。
「場所を変える!弾の来ない場所に頼みます!!」
大声で野次馬に知らせる。
村長はそれとなく誘導してくれた。助かる。
後方へ下がって逃げた猪を探す。
ある程度走ったせいか、畑をウロウロしている。
静かに脚立を立てて再びパイソンを構える。
バーン!カチン‥バーン!カチン‥
バラけているのでシングルアクションで精密射撃を繰り返す。銃声で1頭逃したがほぼ退治した。
今日はこれぐらいだな‥
パチパチパチ!
安全地帯に逃げていた村人が拍手を送ってくれる。
およそ抗争ばかりの活躍の中で珍しく人の役に立った気がした。
「ケン殿、お疲れ様です。死んだ猪は血抜きして皆で振る舞うとしよう。明日も頼みますよ」
「お気遣いかたじけない‥」
野次馬の中ではこんな会話があった。
「あの旅人、ヤバいぞ!」
「ライフル無しでよくもあれだけ‥」
「何人殺したんだ‥?」
ある者は驚き、ある者は脅威に感じるのであった。