交渉
軍部に書類を届けた後に俺たちは案内役として軍の先頭に立って進んだ。
渡世人と軍人という組み合わせはなんとも可笑しな絵面だ。しかもこれからスラムのボスにも会うのだからな‥
「私が軍の代表だ!!パイク!出ろ!」
俺たち渡世人含めて護衛は4人だ。
馬で来た。
「よく来たな大将さん!!捕虜を見せようか!」
手を縄で縛られた兵隊がスラムの武装者に連れられて前に進む。
同時にこちらも進んでいく。
「改めて代表のジョーイ副将軍だ」
「おい‥大将の約束だが‥?」
緊張感が漂う。
「私も指揮官だ。実際指揮もあの時とっていた」
何とか決裂を回避しようとしているが‥
「初めからアイツは来ないんだろう?馬鹿にしやがって!」
「待て待て!書面の通り討伐はしない!人命優先だからな!」
なんだか嫌な予感がする。俺たちはさりげなく2人から距離をとり窺う。
「もういい!お前たち!ヤれ!!」
マズイ!俺たちは急いで伏せた!
ズババババ!!
捕虜は将軍達の目の前で射殺された!
そしてジョーイ副将軍が捕まった。
「そこの兵隊2人!撃ってみろ!」
「クソッ!」
その時遠くから狙撃銃の銃声が聞こえた!
ズバーン!
ウガッ!
見事にパイクの腕のみを撃ち抜いた。
別働隊が後方から来ていたのである。
俺たちは密かに銃を抜きつつ伏せたままだ。
「ヤバいな‥」
「あぁ」
2人して適当にズラかろうとした瞬間。
砲声が聞こえた!!
ヒュー‥ドガーン!!
弾着が徐々に修正されていく。
「俺に構うな!兵隊を殺せ!」
「スラムを一掃しろ!撃て!」
いつのまにか二大勢力が激しい銃撃戦を繰り広げ、人数はドンドン増えていく。
ズババババ!ドドドド!!
ズダーン!バン!バン!
ヒュー‥ドドーン!ボガーン!!
銃声、砲声、叫び‥戦場だ‥!
逃げ惑うスラムの弱者から順に流れ弾で死んでいく。
もう訳がわからない混戦だ。
一部では歩兵と抵抗勢力が銃剣やピストルで白兵戦をしている。
「なあっ!!ケン!博打は負けだ!這って逃げるぞ!」
「せめてここは渡世の義理!貫くぞ!!」
砲声に耐えながら“お互いに生き抜く”という約束を交わして二手に別れた。
もう会う事も無く死に別れかもしれんが目の前の不義理より信用は出来る。
俺はパイソンを持ちながら這い回る!
身体中を兵隊やスラムの連中が踏んづけて息が苦しいが何とか出る。
弾に当たって無いのに血だらけだ‥
何時間這いずり回っただろう‥
気が付いたら荒野に出ていた。
遠くでは時折ライフル銃と機関銃の銃声が聞こえる。
まだ戦っているみたいだ。
自分の身体を確認する。
散々踏まれたが切り傷、打撲で済んだ。
撃たれてはいない。
ふと遠くを見ると誰がが倒れている。
リックス!!
水筒の僅かな残りを確認してキャップで飲ませる。
「悔しいぜ‥見ろ‥」
脇腹を爪で抉られたような傷だ。
これは砲弾が炸裂した証拠だ。銃じゃ無い。
「仁義を守ってくれてありがとう‥」
リックスは死んだ。
無宿渡世で死んだ筈の心が少し蘇った。
だが涙は出ない。
骨の随まで渡世人だ。
こんな男を本来なら教会に埋めてやりたいが同じ渡世人として違う気がした‥
シャベルもスコップも無いが石と棒切れで半日かけて穴を掘った。
正直死にそうになった‥
不思議と無心で掘れた。
土を被せて土饅頭を作った。
「安らかに眠れ‥」
クタクタのまま木の枝を杖にして歩いた。
そんな時、後方から気配がした。
「薄汚れた旅人だ!お前らやれ!!」
「ヒャハー!!」
ショットガンとマグナムが身体中を貫通する。
いつもなら抜き撃ちで反撃するが体力が無い。
ウガッ!!
俺は蜂の巣になり倒れた。
「兄貴〜!コイツ金持ってますぜ〜!」
「とんだ掘り出し物だな!!」
穴だらけにされ、追い剥ぎまでされた。
血だらけになりながら俺は呟いた。
「やっと堅気になれたのか、俺は‥」
ケン・シャイダー‥
シール領ノイツ村の港町に産まれたという。
なぜ無宿渡世の道に進んだのか誰も知らない。
《完》
某時代劇が大好きで書き始めた作品でした。
元々長くは続けない方針で進めていた為短めです。
どんなに強く運の良い者でも最後は呆気ないというドライさを感じて頂ければ幸いです。




