安堵
ケン•シャイダー‥
シール領ノイツ村の港町に産まれたという。
兵隊崩れの格好は砂漠の土と埃で汚れている。
親分や宿に世話になる頃にはすっかり身なりを整えている。
そうしなければ生きていけなかった…
腰のパイソンを頼りに無宿渡世に身を置く‥
「やぁやぁ旅人!帰り道はあっちだぜ?」
それなりに発展した街に着いた。
門番らしき人物が挑発して来るが逆に助かる。
“ダーラス”
首都より近い地方都市だ。
治安維持の為に保安官の数も充分だ。
馬車が通りやすい様に舗装や馬小屋も立派なものだ。
ヤクザなどはおらず緊急時の為に兵隊がいる。
彼らの装備・練度は高い。
銃器などの工業製品が街の収入源となっている。
何故挑発行為に助けられたかと言うと、ここから先は渡世人やヤクザの命の保証がないと教えてくれたからだ。無駄な争いを避ける為の配慮だ。
「失礼しました‥土産を買う道を教えて頂きたい」
これは暗黙の了解で裏道や治外法権のエリアを尋ねる手段だ。都市部でしか通用しない。久しぶりに口から出た。
「しょうがないな!周って右が安宿・酒場。左はスラム街で兵隊が掃討作戦中だから行くなよ!」
「ありがとうございます‥」
無言で10デル程渡した。都市部は物価が高い。
暫く右に進んで徐々に家や建物が見えてきた。
ダーラス中央よりは静まり帰っているが地方より活気がある。治安がそれなりな為に出店もある。
食べ歩きが出来そうだ。
適当に煮豆定食を出店で頼んだ。
定食とは言え味付け豆を挟んだパンとドロドロの豆スープの組み合わせだけだ。
正直食べるだけで作法を求められる渡世人にはありがたい。
頬張りながら街の看板や掲示板を眺める。
求人や闇働きなど様々だ。
当然人も多い為良からぬ仕事が多数だ。
“新型銃試験立会求む、生命の保証無し”
笑ってしまうだろうがこんなのザラだ。
射撃にはそれなりの自信がある。受けてみよう。
「シール領ノイツ村のケン・シャイダーと申します。求人募集をお見かけしました。宜しくお頼み申します」
「そうかい旅人。助かるよ。言っとくが暴発事故の責任は取らないからな」
「お構いなく」
銃を作るのは並大抵の事では無い。
俺が持つパイソンや普及した銃器たちもこのように実際に人が試して作られている。
小銃や機関銃など政府側の武器は試験にも予算を掛けて安全に行うが、街工房の武器はそうも行かない。
生命の安い渡世人やヤクザが高額で受けている。
上手くいけば大金、最悪は事故死だ。
広々とした空き地に長いテーブルが置かれている。
3,4人の渡世人が既に来ている。
勿論テーブルの上には試作銃と弾薬が大量に置かれている。
「お邪魔します」
「同業か‥宜しく」
田舎からここまで辿り着く渡世人は余程運が良いか賢いかのどちらかだ。これまで見てきた連中より幾らかマシに見える。いきなり撃ち合いにはならなそうだ。
こうしてダーラスの一日が始まった。




