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未熟者

「それではどうぞ召し上がれ」


食事の部屋は簡素だ。これはどこの親分に世話になっても同じだ。あくまでも栄養補給。食事を楽しもうとは以ての外である。


夕食は大きめの皿に野菜煮込みのスープが1皿と硬めのパンが2切れだけだ。

気前の良い親分の場合はスープに肉が入っていたり、小皿にピクルスが添えられたりする。


「頂きます‥」

2人して食事にありつく。

この時給仕役は旅人の作法を観察している。


軽くスープを啜りパンを千切って食べる。

その繰り返しである。スープを半分ほど飲み干したら必ずお代わりをするのである。

これは客人に充分な量の食事を出したという親分側の体裁を守る為だ。拒否は出来ない。


また旅人の技量や経験値を測るものとしての作法である。うっかり知らずに1杯だけなら、殺されはしないが冷たい対応をされるのである。


「お代わり願います」

「願います」


「作法に乗っ取りありがとうございます」

給仕が皿にスープを注ぐ。

また黙って食べ始める。


パンも残り少なくなってきた。隣のガイはむしゃむしゃと食べているがどうなるか知らない‥

引き続き俺は作法に従う。


パンの切れ端を使って皿の余りを掬って食べる。

スプーンではなかなか綺麗にはならない。


全て食べ終えて一言。

「ご馳走様です‥」


その後給仕は白湯を皿に注いでいく。

食事の終わりの合図である。

その時給仕の顔色が変わった。


「ガイ殿‥旅は初めてか?」

「‥い、いえ滅相も御座いません!」


瞬間、頬を思い切りぶん殴られた。

ガイは涙目になっているが必死に座り直した。


「正直に言えばいいものを、格好つけやがって!隣の旅人に教えて貰いな!!」


これはまだ良い方だ。玄関に放り出されることもあるのである。


「ケン‥何がいけなかったんだ?」

さっきまでの元気は無い。教える他ない。


「ガイ‥あんたの皿は汚れてないか?」


旅人は出された食事の始末もしなければならない。

パンである程度皿を綺麗にして最後の白湯で完全に汚れを取らなくてはならない。

僅かに残る物は懐から紙切れを取り出して拭くのである。


「みっともないとこ見せちまったな〜」

笑って誤魔化すが今にも泣きそうだ。


「殺されないだけましだ。お先に失礼‥」

少し長めにトイレに籠る。

暗黙の了解がこの世界は多すぎる。

ガイは今頃部屋で赤目だろう。


用便を済ませて部屋に戻る。

銃や装備も問題ない。早めに寝るつもりだ。

ガイは毛布に包まって寝ている。

奴は経験が浅い。正直その方が堅気に近いのだがな。


虫の声が響く頃にドアが叩かれた!

「襲撃だ!!敵は6人、助っ人頼む!!」


恐れていた事が起きた。

俺たちはガンベルトを身に纏い急いで駆け出す!


まだ銃声は聞こえないが、確かに居るみたいだ。

コソコソと裏庭に潜んでいる。


換気窓に影が見える。

「いつでもどうぞ」


いつの間にかレンやその他大勢の組員が武装していた。客人は先陣を切らねばならない。


パイソンのハンマーをカチリと起こす‥

バーン!!


換気窓ごとぶち抜いて1人を倒した。

ババーン!!バン!!バン!!

外の敵が闇雲に撃ちまくる。

俺たちは低い姿勢で弾をしのぐ。


シュバ!!バリ!ピュン!!

屋敷の壁を穴だらけにしていく。


「ガイ、男をあげるチャンスだ!撃て!」

「は、はい〜!!」

バーン!バーン!バーン!


マグナムの反動を制御しきれていない。

闇雲に撃つのは敵と同じか‥

カチカチ‥奴の弾倉はもう空だ。


組員たちは落ち着いて反撃している。

暗くてよく見えないがパイソンの小を皆が使っている。取り回しが良く隠し持てる銃だ。


3人倒した様だ。残る2人は闇夜に消えていった‥


「助っ人感謝する!後はこちらで処理する」

組員が忙しそうにしている。


俺とガイは部屋で眠りに着く。


翌日、朝日と共に目覚める。

身支度を整えて部屋を出る。

長居はできないのが旅人の掟だ。それ以上は宿や野宿と決まっている。ガイは目の下に隈が出来ている。初めはこんな物だ。


玄関にてお礼の挨拶を述べる。

「一宿一飯の義、ありがとうございました!」

「ありがとうございました!」


「ケン殿、ガイ殿、昨晩はご苦労様です。せめてもの御礼です」


帰り際に初めてバクスター親分に会った。

昨日の襲撃時は遠方に居たらしい。


助太刀をして働きが認められると礼金が支払われる場合がある。なかなか気前が良い。


「頂戴します‥」

2人分用意されているが中身は開けないと分からない。揃って玄関を出る。


「なぁケン!幾らだ?なぁ!」

散々ビビリ散らかしていた癖にこのザマだ。

呆れた奴だが割とこんなのは多い。


「100デルだ。あんたは?」

「‥50デル‥」


距離が空いた。嫌な予感だ。

「チキショ〜!!テメェ恥かかせやがって!」


「あんたは経験が浅い。歳は関係ないぞ!渡世は厳しいんだ!受け入れろ!」


その時銃のハンマーを起こす音が聞こえた。

すかさずこちらも抜く。


バーン!!バーン!!

2発のマグナムが町外れに響いた。


ガイのパイソンは銃身が曲がり吹き飛んだ。

親指は少し怪我をしている。


「ソイツはオモチャじゃない!まだアンタに銃は早い!!」


踵を返して町を出る。

少し歩いた所で後ろから銃撃された!

パン!小さな破裂音。デリンジャーだ。

近距離でない為に擦りもしない。


「渡世の仁義だ。許せ‥」

バーン!!

ガイの射程外から頭を撃ち抜いた。奴はいずれバクスター組が片づけるだろう。


「鍬でも握れば死なずに済んだ‥成仏しな‥」



レイルウェイの片隅に銃を握って生き絶えた男が1人、

町に背を向けて歩く男の影に重なった‥

某時代劇の演出をかなりパクってます。

主人公の年齢や過去は追々出すつもりです。

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