1.魔術の不得意な少女
アシュレット大陸の中にあるタイメート王国。その南部にある森で、1人の少女が1人の男と一緒に魔術の特訓をしていた。少女は額に汗を浮かべながら詠唱をしている。
その少女が詠唱を終えると少女の周りに、輝きがホワッっと灯った。
本来ならばその輝きが術師の指定した場所に集い、水球になるはずだった。しかし、その輝きは少女の周りに灯っているだけだ。
「うひぇっ…!」
少女___ユーサ・ハシューラは声を上げた。出来るはずだった水球は輝きのまま保っている。まだ隙だらけの魔術のせいで、コントロールが出来ていないのだ。輝きはユーサの魔力。ユーサはまだ未熟な魔術師だった。
ユーサは肩を下げため息をついた。また失敗だ。すると魔力の輝きはすうっと薄まっていき、消えた。
ユーサのため息と魔力が消えたのを確認した側にいる1人の男が、肩をぴくりとさせた。
その男___顧問のレイット・クリストンは、目を細め、ため息をつく。
「はぁ、見苦しい。早く制御できるようにしなさい」
「だっだってぇ…イットせんせぇ…」
今ユーサが操っているのは水属性の者が扱う初級魔術だ。
ユーサは魔術を学び出して、約2年半。 同じ頃に学び出した同級生はもう水球から槍の形状に変化し、それを飛ばせる状態だ。
それなのに、まだユーサは水球を発生することもままならない。
ユーサはまだ魔力のコントロールの仕方も曖昧な状態なのだ。魔術を学び出して6ヶ月の者の方がコントロールも上手いだろう。
レイットは1つため息をついて詠唱をする。レイットが詠唱を終えると、周りに魔力の輝きが灯り、魔力がレイットの掌の上に集う。水球が生み出された。
「私の手本を見なさい、まず感知の魔術を発動すること」
「はっはい」
そう言ってユーサは慌てて詠唱をした。
感知の魔術は、一定時間指定した物の魔力を確かめる魔術だ。魔力で物体を物質を作るのとは、別物だ。どのような密度か、魔力がどれくらい配合されているかなどが分かる。
魔力を通して、対象の魔力を含んでいる物の魔力を分析する。
ユーサが詠唱を終える。瞬く間に水球に何粒のも輝きの粒が灯った。
__否それを見えているのは、ユーサだけだ。
ユーサが感知の魔術を使ってレイットが操っている水球を見た。
「あっ、水球の魔力が一定の割合で分布している」
「そう、魔力が一定の割合になっているので、水球が弾けることもない。さらにこのような割合にすると、水球も発生しやすい」
魔力がバラバラの比率だと水球は弾け飛ぶし、水球も作りにくいんだ。とユーサは考えた…と思っているが復唱しただけである。
「お前の水球は水球になってなく、魔力がバラバラでしょう。それでは水球を生み出すために必要なものは?」
「うぇっ!と…水属性魔術に対する理解力?」
ユーサが合っていなさそうにしてぼやぼやっと言った。レイットは笑顔でこう言った。
「私が先週した授業の内容をもう忘れているのですか?魔力操作ですよ」
「うへえ…だっだってぇ…」
ユーサがしゅんと落ち込む。ユーサは座学も苦手だ。
すると、森の入り口からガサっという音がした。
レイットとユーサが顔を見合わせて森の奥の方を見る。
「ユーサ、調子はどう?」
「お母さん!」
奥から出てきたのはユーサの母。
ユーサは嬉しそうに駆け寄った。勿論、レイットが舌打ちをしたことは聞こえていない。
ユーサはこれまでの一連を話した。しかし、主にレイットの愚痴である。
「ふふっレイットさん、ユーサのことよろしくお願いします。ああそれと、昼食は一時からです」
「ええ、分かりました。それとユーサのことですが…」
「お母さーん!なんとか言ってよぉー!」
ユーサはレイットの話をさえぎって、レイットはニッコリと笑いユーサを見た。ユーサはぷーっと頬を膨らませながらこう言った。
「みんなしてやめて〜!!」
頬を膨らませながら言い訳をしているユーサ。この時12歳であった。
世界観についてお話ししておきます
時代は私たちが生きている時代です。スマホあります。
強いて言うならば、
・地球に似た世界観
・文化などは西洋に似せている
・古っぽいけれどそう言うものとして受け止めてほしい。(願望)
・技術は現代と同じ
なお、歴史に基づいで(少しだけ)制作しておりますが、綻びはあります。実際の地名などは使用しておりません。