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戦争

戦争


マーシャが魔王と謁見している間に戦争賛成派の2名は、北の砦を基点とし総勢2万の兵を進軍させた、本来魔王軍があと5千人参加する予定なのだが、そちらは魔王直属近衛軍とサザラード公爵率いる魔族辺境軍だ、これらは魔王が直接命令しない限り動くことは無い。

それは50年前の戦争を彷彿とさせた、現在北の砦にいるのはロドリゲスバイロン率いる辺境自治隊300人、ビルシュタイン・シュローダー将軍率いる魔真隊900人そして第一皇子が率いる近衛隊200人の1400人しかいない。

但し魔王軍の2万のうち半数の1万は魔獣であり魔法生物なので、召還術師を叩けば消えていなくなる。

それでもこのまま10倍以上の敵を相手にすれば王国軍が無事で済む可能性はない。


「魔王よわらわは一度前線に戻る、王妃はこのまま置いて行くが心配は要らぬ、但し奴隷紋を解除しようなどとは思わぬ方が良いとだけ言っておく」

「いやそのような心配は無用だ、それにしてもこんな魔法があるとは・・・」


フロウラたちに聞いた話で魔王は絶句した、要はマーシャの隷属魔法は神との契約に等しいと。

しかも普通に話も出来るし、普通に暮らせると言う、にもかかわらず神の加護により傷一つ付くことがないなどと言われれば信じられなくても仕方の無いことだ。

どうせなら魔族全員奴隷にしてもらった方が手っ取り早いと思えなくも無い、そうすれば戦争の無い争うことの無い幸せな国が出来あがる。

まあこれは極論だが、マーシャはそこまでは考えていないしたぶんできない。

元々神の使徒として洗礼をうけたわけでもなく、ただ成り行きでこうなっただけで信仰心などもほとんど無いのだ。

あまり出過ぎた事をして天界から粛清が入らないとも限らない、神の使徒というよりマーシャの考えは生前の世の中みたいな状態を目指しているだけなのだから。


魔族だろうが人族だろうが殺し合い憎み合うなどということがいかに無駄でおろかなことか。

それを説いて回るだけ、ただそれだけなのだ。


「宰相は連れて行ったほうがよさそうじゃな」

「こんなじじいでも使える場所がありそうかのう?」宰相

(もうこうなったらなるようになれじゃ)

「そこまではわらわにもわからぬがな」


「では通常の転移魔法陣を使わせてもらうぞ」

「了解した、だれかあれマーシャ殿を案内して差し上げよ」


チームマーシャと宰相を連れ、メイドが来たとき使用した魔法陣とは違う通常登城するとき使う魔法陣へと向かう、そうしないと宰相がはじかれてしまうからだ。

マーシャ達が去り魔王はホッと胸をなでおろした。


「それにしても、何なのだあの娘は?」

「困りましたこれではわが息子を魔王に出来ないことに・・・」

「王妃よそれは違うぞ」

「何処が違うのですか?」

「魔王とは力が強いものがなるのだ、世襲ではないぞ本来」


「魔王にしたければ強く育てろあの娘のような絶対の自信を持つように、見たかあれで7歳だというぞ、いくら神からギフトをたくさん貰っていようとあの娘はその短い7年という歳月でさえ努力を積み上げて来たのだ、そうでなければあのような強さ手に入れられるわけが無い」

「魔王様、あの娘は魔王様より強いと?」

「戦えば傷を負わす事ぐらいはできるかも知れぬが、勝てる未来を予想すら出来ぬ、恐ろしい少女だ」


転移魔法陣を使用し一時ルルド村の魔法陣へと戻ってきた一行。

すぐに魔真隊へと連絡する。


「本当ですか?」

「ああ本当だ魔族の軍2万、今北の砦に向かって進軍しておる」

「マーシャ様どうするんですか?」

「まずはこの村に兵を20ほど残し村の警備をまかせる、後は戦いに行くかそれとも引き返すかだ」


今の状態、捕虜もいるし魔王の息子もいる、これらを置いてはいけないし かといって2万対1400の戦争などいくら魔真隊の魔法が強かろうと無事にはすまないし。

うまく切り抜けても残党と化した魔族がこちら側に散らばれば小さいながらも被害は出てしまう。

せっかく復興した村が又戦渦にまみれるとなれば、即参戦して魔族の軍を出来るだけ減らす方が得策だ、それにうまくいけば戦争を回避できるかもしれない。

マーシャは戦場に行くだろう、それはそれでよいとして、学友達はどうするだろうか。


「私は反対です、まだ君達は学生なのですよ」アルバート

「先生いまさらですよそれ」

「魔王と対峙して生きて帰ってしかも元凶である宰相や王妃まで無効化したのでしょ」

「そうそう後は向こうの戦争ジャンキーを止めれば終わる」

「俺たちが参加しない理由はないでしょ」

「俺はもとよりそのつもりだ」


「皇子はどうされますか?」

「こちらの首都へ単独で行ったとしてそれではまるで私が戦いを避け逃げるようです、それでは無責任すぎる、私としてもしっかり成り行きを見てから先を決めたい」

「お兄様が行くなら私も付いていきます」

「決まりじゃな奴隷にしたもの4名それに王族2名、あとは学生全員か?」

「姫様戦いたいのは魔族だけじゃないですよ」

「やれやれじゃ」

「困ったものですね」

「魔真隊に頼んで機工車を借りよう」


結局、機工車4台に分乗し50名近くが北の砦へと向かうことになった。


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