転移魔法
転移魔法
ストレージ魔法の便利さは一度手に入れると二度と手放せないのがよく分かる。
「あとは転移魔法ぐらいか・・」
「何ですマーシャ様?」
「ああ妾がまだ手に入れていないのは転移魔法ぐらいだなと、思ってな」
「でも、それならばフロウラさんに教わればよろしいかと」
転移魔法は前にも書いた通り召喚魔法の流用で作成は可能だ、要するに逆の発想。
召喚は向こう側からこちらへ呼び寄せる、転移はこちらから向こう側へ移動する事。
魔法陣の書き込みを逆に設定すればよい、但し転移の場合は移動する場所の座標を描くか、またはその特徴をしっかり頭に思い浮かべないと、とんでもない場所に移動してしまう場合がある。
ジルもフロウラも召喚魔法が得意なため魔石部隊に派遣された、少人数でも召喚魔法で魔獣を呼べば楽に対応できる、召喚魔法を知っていると言う事はそれ系の魔法を知らない訳がない。
まあ彼女らは聞かれないと答えないということにしているらしいので、知りたいことはちゃんと質問しなければならないのだが。
「フロウラよ教えてもらえるか?」
「あ~はい教えます」
フロウラは少しいやそうな顔をするが、抗えないので諦めたようだ。
それから転移魔法をレクチャーされると、マーシャはそれをすぐさま改良。
そして魔法の腕輪に転移魔法をストレージ魔法や魔法補助と同じように取り付けた魔石に覚えこませた、こうすることによりわざわざ魔法陣を描く必要がなく、魔法の使用量も格段に少なくて済む。
「まさか魔法具に入れてしまうとは・・・」
「便利じゃろう」
「普通魔法具に魔法を込められるのはそれ相応の修行をした職人だけです、信じられません」
いまさらながら驚いているようだがマーシャのFA値は現在1000になるFA値200で細工ができるようになりFA値500を超えれば名工と言われる。
そして魔法を込められるのはFA値300からだが、FA値300は初級魔法しか込められない。
FA値500で中級魔法を込められる、上級ともなると魔法の種類にもよるがFA値700以上は必要になる。
当然込めるときは使用するときの数倍の魔力が必要なのでFA値だけでなくMP値も相当量必要になる。
現在マーシャのMPは1万をこえてさらにどんどん増えている。
「これでいつでも簡単に転移魔法が使えるな」
「確かにそうなりますが、転移先の情報を知らないとどこでも移動できるわけではございません」
「それは分かっておる、どれ一度学院にでも戻って見るか・・」
そういうと数秒後に忽然と消えてしまった。
「ま! マーシャ様!」
数秒後元の場所に姿を現す。
「さすがに学院には誰もおらんかったぞ」
その様子を見て、数名が恐れおののく。
「なっ!」
「姫様奴隷を置いて転移なんて、どうかしています」
「まずいのか?」
「普通の奴隷契約は主がそばにいないともがき苦しみます」
「そのようだな」
「そのようだなって・・」
「あれはペナルティとして魔法の中に入れ込んだ条文じゃろう」
「はいそうしないと逃げてしまうでしょう」
「妾の奴隷魔法にはその項目はないぞ、その代わりどこに行こうがすべてわかるようにしてある」
(ああそういうことか)
(逃げれば姫様の思い通りって感じです)
(夢でも見ているみたいだわ・・・最悪の)
囮にも使える、わざと逃がして敵の親玉に接触したらそこまで転移してしまえばすぐに元凶を粛清できる。
これでマーシャからは完璧に逃げられないと分かってしまった、今日捕まった直後であれば逃げられたということも分かったが、分かったところで時すでに遅し。
転移魔法を知ってはいけないものに知られてしまったというところ。
食事も無事終わり、現在は食休みタイム。
マーシャを含む奴隷数人は後数分で魔王城を攻略しに行く事になった。
「それでマーシャ様作戦は?」
「そんなものないぞ」
「え~それでどうやって宰相と王妃を見つけるのですか?」
「それを妾に尋ねるのか?」
「え~‼」
「この奴隷たちはどうして捕まった?」
「マーシャ様の?おちからで・・・」
「そういう事じゃ、同じように捕まえて脅して、吐かせればよい」
奴隷の三人はマーシャが薄ら笑いながら話すたびに背筋が凍り付く。
あの恐ろしいい光景がまた繰り返されるのだ、いくら聖属性の完全修復魔法をかけられるからとはいえやられる方の苦痛は死ぬよりつらいのを知っている。
特に隣にいる暗殺部隊のカユーラは実際にやられているのだ、横目で顔色をうかがうとその顔は青ざめて体はがくがくと震えている。
まあカユーラは殺しを専門にしているはずなのでやられることも覚悟しているはずなのだが。
普通はやられればそれで終わり、マーシャに捕まったばかりに恐ろしい目にあわされても死ねなくなってしまった。
「ああそういえば3人になったな、フロウラよ4人で行くことも可能か?」
「あの転移門の人数限界は10人だったと思います」
「ではカユーラも同行した方がよさそうじゃな、どうする?」
「えっ・・・・わ 私でしょうか?」
「うぬ残っても良いぞ」
残れば針の筵行けば囮として盾にされる、だが情報がまだ少ない。
奴隷先輩であるジルやフロウラと一緒にいた方が何かと都合がよいし、知らないことがあれば教えてくれたりする。
「あ いや私もお供します・・・」
(それしか選択肢なくない?)
「そうか、それでは4人でいくとしよう」
食後の団らんも終わりをつげいよいよ作戦遂行の時間がやってきた、公会堂の中に魔法陣を描く、こちらから向こうへ行くための転移魔法陣。
マーシャに命令され、逆らえないフロウラは床に間違いなく文字を書き入れる。
約15分後、魔石を溶かしたインクを用いて、夜伽用魔法陣へと転送するための魔法陣がフロウラの手により綺麗に床へと書き込まれた。
「それでは行くか?」
「それではこの円の中に全員お入りください」
「これで良いか?」
「はい、では参ります」
「過去の記憶を元にわれらの体を指定の場所へ移動せよ、テレポーテーション」
この先を掲載する事にしました




