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待ち伏せ

待ち伏せ


翌朝はうまい具合に谷は霧に包まれていた、たっぷりと水分を含んだ霧は動物の鼻も効かなくしてくれる。

視界も悪くなるため、魔法でも使わなければそこに誰かが隠れていても気付くことはできない。

朝食は干し肉や固焼きパンで済ませ魔族の補給部隊が来るまで待つことになった。

すでに全員が所定の場所に隠れ息を潜める、午後2時を回ったところで異変を感じてマーシャは索敵スキルを使用する。

案の定、補給部隊の斥候が現れた。


(くんくん)

(ガウッ)


マーシャは魔狼が目の前に差し掛かったところでシャドウバインドで魔狼たちを縛る。

霧のせいでよく見えないため、魔狼も直前まで近づかなければこちらの存在に気付かないみたいだ。

動きを拘束した魔狼に氷の矢をお見舞いする、そしてリリアナに魔法で魔狼の死体を隠すという作業を頼む。

これで補給隊は魔狼の部隊に何があっても知ることはない。

それから1時間後思っていた通りゴブリンを先頭に補給部隊が現れる、霧のため索敵の魔法がなければどこに敵がいるかは分かりにくいが。

マーシャはすでに敵の規模も把握していた。


(スキル索敵)


広範囲に索敵スキルを展開し魔族22人、ゴブリン32体トロル7体魔狼20体をとらえていた。

縦に長細く補給部隊のキャラバンは先頭に魔狼、次にゴブリンそして魔族、最後にトロルという形で山を登ってきた。

やはり最後のトロルは肩や背に50kを超す荷物を背負っており、その歩みはそれほど早くはない。


(思った通りじゃな)

(マーシャ様どうしますか?)

(ゴブリンが切れたところで土魔法で崖を崩し分断じゃ)

(了解です)


先頭のゴブリンが周りを警戒し始めたところでど真ん中付近に崖を崩し岩を落とす。


(ゴンッ!ガンッ!)

(ガラガラガラ)

「ギャ!グエッ!」

「何だ!」

「がけ崩れです!」


霧に隠れているため周りがどうなっているのかわからずパニックに陥る。

分断された魔族にマーシャ達が、ゴブリンには騎士団と学生がそれぞれに襲いかかる。

先日教えた視覚補助魔法を使い少しでも視覚を確保する、案の定夜とは違うが真白の霧でもなんとか敵の存在を確認できる。

さらに毎日訓練している防御魔法を体にかけ、生徒たちはゴブリンに襲い掛かる。

気を付けなければいけないのは、この状況下では同士撃ちだ。

騎士団の大人もそれは分かっており、ゴブリンを確実に一体ずつ倒していく。

徐々に霧が晴れてくるとそこに立っているのは騎士団と学生だけだった。


「姫様大丈夫かな?」


後方にいた魔族は、すぐに召喚魔法を展開しようとしたが、マーシャに即阻まれた。


「シャドウバインド」

「ぐっ!」


まずはリーダーらしき魔族3人を捕縛、リリアナたちが残りの魔族を土に埋めていく。


「グラウンドメイク、タイプマーシュ」

(ずぶずぶばしゃばしゃ)


たちまち足元から体が沈みだす、体が胸までうまったところでリリアナが土魔法で固定化する。


「グラウンドメイク、タイプハード」

「なんだこれは」

「た 助けて~」

「ぬ 抜けない…」

「うわ~~」


魔族たちは地面に埋まりほぼ全員が胸まで埋まってしまった、もちろんその後ろにいた荷物持ちのトロルも。


「姫様こちらも完了しました」

「うぬ」


手分けして魔族を捕縛し隷属魔法で身動きも反抗もできなくしていく、そうこうしているうちに先頭のゴブリン部隊もうまく殲滅できたみたいだ。


「姫様ゴブリンは全部やっつけました~」

「ん ご苦労」

「それでは話を聞くとするか」


魔族の補給部隊の隊長は男の魔族、もちろん召喚術師であり彼を捕らえ命令すれば後方のトロルも消えていなくなるが、そうすると荷物を運べなくなる。

まずは情報を聞き出すことと、捕虜にする人数そして魔族側への忠告を知らせる者を選定する。


「姫様こんなに連れて行くのですか?」

「殺しても良いがそうすると、仕返ししようとする魔族が増えるじゃろう」

「命はそうたやすく奪うものではないぞ、連れて行くのは確かに面倒じゃがな」

「どうするおぬしら死んでみるかそれとも妾の奴隷となるか?」

「た 助けてください…」

「すべて話すならば助けてやるが、おぬしらは捕虜として我が国へ連れていくことは変わらんからそのつもりでな」


それからは全員の名前そして部隊の所属などすべてを聞き出し、マーシャのスキル情報開示で照らし合わせ嘘つきをあぶりだす。

嘘をついた者は当然だが隷属の魔法を強くかけ逃げ出さないように、逆に正直に話したものを2名選定し敵側への伝令役にした。


「おぬしたちは命令した将軍や上級士官へこのことを知らせよ、戦うならば国が滅びるやもしれぬとな」ニカッ!

「は はひ~~」


マーシャは振り向くと王国へ連れ帰る捕虜たちにも告げる。


「後の者はこれから王国側へ連れていく、逃げ出そうと思うなよ」ふっふっふっ!

「ひえ~~」


トロルはそのまま使役し荷物を運ばせる、魔族は総勢20人うち上級士官3人。

谷あいの道は崖崩れの跡をそのままにしておく、少しでも国境を渡るのが面倒な方がよいと感じたからだ。

特にこの場所は交易ルートでもないので、できれば道そのものを潰しておいても良いのだが、面倒なのでそこまではしないでおくことにした。

まあ一応魔法で崖崩れを起きやすくする仕掛けはしておいた。


「では撤退する」

「お~」


特に騎士隊も学生もこれといったけがはなく、50匹はいたゴブリンと魔狼は全滅、魔族20名を捕らえることに成功し、一時ボロウロア町へと凱旋する。

そこには意外な人物が待っていた。

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