魔族の補給部隊
魔族の補給部隊
今に始まったことではないので学生たちはほぼ慣れてきたが、奴隷になった魔族2名と獣人2名はマーシャの発言やすることなすことが、まるっきり常識の範疇外のため。
自分の目で見てはいてもまるで理解できなかった。
「姫様は魔族や獣人をなぜ怖がらないのですか?」
「ん?なぜと言われても童にもわからないが…」
「たぶん妾に怖いものはないぞ・」
「怖いものはないって…」
「お化けとか竜とかも?」
「うぬ 基本こちらから手を出さねば向こうから攻撃してくることはないからな」
「お化けがどう考えておるかはわからないが、害のないものを怖がる必要はないぞ」
「以前に何か怖い思いをしたかと言われればそれもないからのう…」
「それより好奇心の方が先に立つ、魔族の国にはいろんな種族がおると聞く」
「魔族は主に獣人の亜種とバンパイヤなどの不死族に分かれますね」
「フロウラは羊の獣人とサキュバスの因子が入っておるな」
「その通りです姫様」
「その角と体つきを見れば大体の想像は付く」
「ジルはバンパイヤと蝙蝠獣人とのハーフといったところか」
「なぜそれを…」
「腕の翼と線の細さそれにその耳はどう見ても蝙蝠の特徴じゃ」
「妾の見立てじゃとバンパイヤは人族の変異種であり不死といってもかなりの制約がある、日の光を避けねばならぬし、血しか飲めぬ。その状況で長生きしろというのもきついじゃろう」
「たぶんおぬしの祖先はハーフになることで科せられた制約を半分かまたは無効化する可能性に賭けたのやもしれぬな」
「姫様は面白いことを考えますね」
「学問の中からはそういった研究もたくさん生まれておるからな」
「できれば魔族の国を旅してみたいものじゃ」
マーシャはもともと冒険者になり天使から託された使命を早く果たすことが今のところ最重要課題であり。
冒険者つまりは旅人のようにいろんな場所を回り特定の人物を探すことができれば早く仕事を終えることができるわけで、そのためになるならば躊躇はしない。
すでに獣人や魔族という冒険に必要な仲間を得る作業も着々と進めており、マーシャの中では至って順調だというしかない。
時刻はすでに夜10時を回っており、気温はさらに低くなる。
魔法で周りの温度は上げてあるためさほど寒くはないはずなのだが、まあ若干冷え性の女子にとっては少し我慢しなければならないところでもある。
本来ならば火を焚き暖を取りたいところだが、それをすると煙が立ちそこに人がいると知らせてしまうことになる。
敵は魔狼も使うため臭いで待ち伏せも簡単にばれてしまうだろう、できるだけそういう危険は排除しておくに限る。
せめて敵に知られるのはこの谷に差し掛かってからでないと作戦も失敗に終わってしまい、せっかくの待ち伏せも残念な結果になるだろう。
それでもマーシャには何とかする手立てはいくつかあるのだが、そうすると騎士団や学生に活躍する場面は訪れない。
すでにこの3日でマーシャの身体能力は普通の人の最高である高みに届きつつある。
身長もいつの間にか110センチを超えて、胸も少し発育しだした。
マーシャの体もこれからはどんどん成長していくに違いない、昔聞いた話だが1年で50センチも身長が伸びたという話を着たことがある。
来年には130センチ近くまで身長が伸びていたとしてもなんの不思議もないのだ。
体より先に能力ばかり伸びていくが、目指すところがほかの武人とは違い人族でありながら頂点を目指しているため、彼女が大人になるころには魔王もビックリな人間が出来上がるだろう。
放っておいても自分はどんどん成長するのだから、自分のことよりできる限り仲間の生育にも目を配るのが上に立つ者の心得というものだろう。




