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救出成功

救出成功


土魔法と植物成長魔法を上手く使い足跡や匂いなども消していく10kの道のりだが魔法をかけ体力を補いながら進めば何とか歩ききれる距離だ。

すでに一度来た道であり帰りはさほど時間はかからなかった。


「今帰ったぞ!」

「皆さんお疲れ様です」

「少ないですが食料を分けますので並んでください」


馬車に乗せた緊急用の固焼きパンと来る途中で仕留めたイノシシの肉を調理し皆に配っていく。

そうこうしている間に魔族の捕虜を見つけた少年が敵とばかりに殴りかかる。


「こいつだ、父の敵!」

「まて!、こやつはすでに奴隷化しておる、おぬしの気持ちもわかるがこやつを殺してもおぬしの父は帰っては来ぬ」

「でも…ぐすっ…」

「この場で謝罪する、われらが遅かったばかりに皆には苦労をかけた、亡くなった者もおるだろうがしばらく、わらわに任せてくれぬだろうか?」

「どうすればいい、もう村には帰れんのです」

「娘も殺された」

「おらはかみさんをやられた」

「皆、ここはこらえてくれわしからも頼む」コバルト

「そんな領主様まで謝らんでください」

「あなたが来なければワシらはとうの昔に死んでいた…」


コバルト子爵は捜索隊を指揮し洞窟へ入ったが魔族の召還魔法で操られたゴブリンの数には太刀打ちできず、さらに村人を人質に取られ結局助ける事は出来なかった。

その後体力のない村人に代わりせめてもの償いだと過酷な労働を買って出たからだ。

女子共や老人が洞窟の掘削作業などどう考えても無理がある、騎士団の精鋭である若者達が加わったことで弱い村人を過酷な労働から遠ざけることになり死者をだせずに済んだのだ。


「それでこれからどうしたらいいんじゃ?」

「一度皆、ボロウロアの町に行って避難していてもらう、食料はトライデン領から運ぶので当分は大丈夫だろう、まずはこの地区から魔族を全て追い出す、そして2度と来れないようにする」

「そんな事できるのですか?」

「わらわにまかせよ、向こうの大ばか者にきついお仕置きをしてくるからのう」


この日にプラチナム領からの騎士団も到着しボロウロア町まで村人の護衛を任せる。

そしてマーシャ達は2日後に到着する魔族の輸送隊を待つことにした。


「ではこのルートで通るのじゃな?」

「はい間違いなく」

「そうするとここが、待ち伏せするのにちょうどよいな」

「姫様今度は俺たちも参加しますからね」

「いつもずるいですよ」

「そうです、訓練の成果をお見せすることができません」

「そうか、仕方ないな…」


ルルドの洞窟から北側は山道になる、この向こう側は最低2000メートルを超す山々が連なる、道も細く岩場や崖などが多く徒歩での山越えとなるため進む道は限られていた。

山を越えるとそこから先は魔族の国、さらに100k進めばようやく魔族の村が点在する地域になっている。

いくら魔族とはいえ数百キロある山道をそう何度も行き来することはない。

魔族の輸送部隊はせいぜい20人前後だという、そしてその内訳だが10名が交代要員。

いくら食料などが現地調達で何とかなるとはいえ、ひと月以上も敵国の内部に入り込み過酷な作業を行うわけで、どう考えても交代要員や支援物資が必要になる。

もちろんこの時フロウラやジルなどの上級士官は交代する予定になっているという。

まあそれはもう無理だというしかないが…


「それじゃあ山登りしないといけないのか…」テンマル

「山登り、きつそうだな」ジョシュ

「いやなら来なくても良いぞ」

「な いかないわけないでしょ」

「そうです」

「山登りなど大したことはありません」ロッド

「それでは魔族の奴隷2名獣人2名学生10名騎士隊10名じゃな」

「魔族も連れて行くんですか?」

「この者たちはすでに奴隷化されておる、逃げ出すことも反抗することもできないのじゃ、うまく使えば人質としても使える、ずるいようじゃがもともとこれは魔族側の攻撃なのじゃ、人の国へ勝手に攻めて来ておいてずるいも何もないじゃろうがな」

「確かに…」

「まあ輸送部隊には上級士官が必ず2名はおるらしいからそれ以外は皆に任せるとしよう」


ルルド洞窟から総勢25人の混成部隊は王国と魔王国を隔てる山脈のうちでも一番端を通る山道を選択する。

その道は標高2千メートル以上の山が連なる危険な道ではあるが、山道とはいえ頂上を超えるわけではない、道のある標高は千2百メートルが一番高い場所であり同じような登山道は東へ数百キロいかなければ国境を超える道はない。

なのでこの登山道以外ルルドの洞窟へ人員の交代を含む物資の輸送をするルートはないといってよい。


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