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ボロウロア町

ボロウロア町


「できる限り早くボロウロアの町に着かねばならぬ」


マーシャは時折索敵魔法を使い前方30kを危険な魔物がいないか調べているが今の所、魔物の気配は感じられない。

日が沈む前に町へ入ることができれば、マーシャの魔法で町全体を守ることも可能だ。

バリアの拡張術式を使用すれば200メートル四方の防壁を張ることができる。

魔道具を利用すればそれ以上も可能だが、即席での魔法発動では200メートル四方が限界というところだ。


「姫様わたくしもお供します」

「うぬ おぬしにも助けてもらう、みなもそのつもりでいよ」

「ひえ~~」

「御意!」

「・・・王国の姫様ってみんなこうなのか?」ラランカ

「マーシャ様は特別です」クレア


ボロウロアの手前の村を通り過ぎ、先を急ぐ。

すでに手前の村は人影もなく、避難が済んだ後のようだ。

そこからは避難してくる人間もまばらになり、馬車のスピードを少し上げる。

索敵魔法には今だ魔物の影は映っていなかった。

午後4時、丘の上に差し掛かりその先にようやく町が見えてきた、農作物の畑が見渡す限り広がるその真ん中にレンガや石と言った壁を並べ数百メートルぐらいの人が済むために作られた町。

少し離れた場所に領主の館も見て取れる。


「あそこがボロウロアか?」

「ああ俺の家も見えてきた」


馬車はややスピードを上げながら丘を下る、見た所魔族からの攻撃は今の所見られない。

町へ入る南の門には一人の騎士が立っていた。


「増援がきたぞ~~」

「トライデン領騎士隊副長ブルーノシーズンだ、町の状況を知りたい」

「現在北門を重点的に防衛線を張っている状態です」

「第三王女のマーシャじゃロドリゲスバイロンはおるか?」

「隊長は北門にて待機中です」

「分かった、そのまま警備を頼む!」


馬車を町の中ほどまで入れ厩舎へと入れていく、学院の生徒はひとまず町にある宿屋併設の食堂へと入って休むことになった。


「おぬしたちはここで待て」

「えっ姫様は?」

「今のうちにロドリゲスに状況を聞いておく」

「了解」


徐々に日は沈み暗くなってきてはいるが、町の中は空き家がそのまま残っている状態。

つまり魔物の侵攻を受けてはいないというところ。


「ロドリゲス!」

「ん?ひ 姫様!」

「お久しぶりでございます」

「ん おぬしも元気そうじゃな」

「はい 何とか」

「まだ魔物の侵攻はなさそうだな」

「はい ですがこの町より北側の村は全滅だと逃げてきた村人から情報が入っております」

「という事は今夜はかなり危険な状況じゃな」

「なぜ姫様はいらしたのですか、こんな危険な場所に」

「実はな、かくかくしかじかという王命じゃ」

「なんと!かわいい子には旅をさせろとは言いますが、無茶すぎます!」

「まあいやなら来てはおらぬ、わらわの鍛えた兵士の力も見たいのでな」

「そんな・・これでは絶対切り抜けねばならなくなりました」

「大丈夫じゃ妾の学友も加勢する。何よりわらわが来たのじゃ久しぶりにこき使ってやるのでな期待しておくのじゃ」

「おい隊長の顔見たか?」

「あれ姫様だろう」

「何か悪寒がするんだが・・」

「久しぶりに姫様のお顔を見たが、前にもまして恐ろしさを感じるぞ」

「なんだ、あれが第三王女か?」

「お前らは知らないだろうが、あの姫様隊長よりおっかねーんだぜ」

「うそだろ~」


王宮警備隊の面々はマーシャのことを剣術の鬼、麗しき剣聖と2つ名を付けていた。

もちろん隊長はそのことを知らないし、話してもいない。

もしばれれば文句どころかしごかれてしまう、出所は王宮騎士隊の副長なのだから余計ばらすわけにはいかないのだ。


「まあ見ていればわかるさ、あの可愛さで剣術は隊長の数倍強く魔法は全て使えるっていう話だ」

「へ~めんこいのにな」

「そう言っていられるのも今のうちだぜ」

「うぬ 町の入り口に突貫でバリケードを張ったのじゃな」

「姫様何かできることは?」


そこへリリアナがやってきた、マーシャの役に立ちたくて食堂で休むなどという考えは彼女には一切なかった。


「リリアナ良いところに来た、この防御線の外側にさらに壁を作るぞ」

「はい」

「高さは3メートル2か所にやぐらのような物見台を作る、それからその前方にこのようにな、できるか?」

「かしこまりました、リリアナシュローダー姫様の命を受けただいまより壁の作成を始めます」


そいう言うと現在ある防御線の外側に土魔法を使い厚さ1メートル高さ3メートルの壁をあっという間に作成してしまった。

そして物見やぐらを左右に作り階段と手すりまで、まるで精巧な城壁のように。

そして次にマーシャは物見やぐらに上るとその先の道に縦壁を作っていく、たった高さ1メートルの壁だが、道幅に添いまるで橋のように先を広くこちらへ来るほど狭く、そして外側には落とし穴を作り真ん中からはみ出ると、はい出てこれないぐらいの深い穴を作っておく。


「姫様これは?」

「まあお遊びじゃ、これで100匹ぐらいは排除できるじゃろう」


高さ3メートルの壁には真ん中に高さ2メートル幅2メートルほどの入口を作ってあり、そこしか入り口がないような作り。

そして手前には2メートルほどの壁を作りまるでトーチカのように物見窓のような隙間を作っておいた。

そこには魔法師か弓師を配置し真っ先に向かってくる魔物に攻撃しやすいようにしてある。

もちろん姫様はそこに陣取るつもりだったが。

リリアナに怒られてしまった。


「それはずるいです姫様、我々の活躍する場所が限られるではないですか?」

「じゃがそうすると魔物を見られないではないか」


それを聞いてリリアナはさらに5メートル後ろに台座を作り、それこそまるで砲台のような物見やぐらをあっという間に作ってしまった。

つまり2段の攻撃用トーチカを作った形だ、後ろのトーチカと高さが違うためどちらからでも攻撃可能。


「おぬし なかなかやるな」

「こうすれば姫様もちゃんと見学できますよ」


ご丁寧に後ろのトーチカはちゃんと円形に作成、後ろもしっかり敵の侵入を防げるようにしておいたようだ。

万が一の避難場所としても使える、壁の厚さも30センチさらに軽い不壊魔法までかけられていた。


「収容人員は5名までですから、ここに逃げられなかった人は左右の物見やぐらに逃げてください」

「いやいやここまで準備すれば半分以上は片が付くのでは?」

「いや、魔族がいれば魔法によっては土壁も壊されてしまうやもしれんからな」

「問題なのは魔物の規模と魔物の種類だな」


午後6時あたりはかなり暗くなってきた、魔法で建物の前には明かりがともるようにしてはあるが、この世界は夜ともなると人の目ではあたりがほとんど見えない。

もちろん視覚強化魔法を使えば暗くてもそこそこ見えるようにはなるのだが、全員が使えるわけではなく。

戦闘時にバフ掛けする必要があるだろう、結局魔法を得意とする女子全員にマーシャは視覚強化魔法を教えることになった。

当然学生全員男の子も覚えておいて無駄にはならないこの魔法、食堂にいた全員を対象に魔法のレクチャーを始める。


「光の加護を汝の目に授けん、サポートアイ」


魔法を唱えると目の部分が淡く光り、目の前の景色が夕方くらいの暗さに変化した。


「おお~」

「この魔法は中級魔法だがそれほど難しくはないから覚えておくとよい」

「はい やってみます」


リリアナやメイドであるクレアそれに今回参加したロジーやミミーはすでに知っているみたいだったが従者の一人であるフランと男子は全員、補助魔法であるサポートアイを知ってはいてもまさか覚えることなど考えもしていなかった。


「おぬしらも知っておいて無駄にはならぬぞ、戦闘以外でも使えるからな」

「戦闘以外ってなんだよ」

(覗きだよ)

(あ・・・まじ?)

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