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トライデン領

トライデン領


午後4時プラチナム領とトライデン領の領堺に差し掛かると、そこには小さいながら砦があった。


「プラチナム領騎士隊所属ハッサム・プラチナム、無事護衛を完了しました」

「トライデン領騎士隊所属ブルーノ・シーズン副隊長だ、ご苦労様です。ここからはわれらトライデン騎士隊が交代します」

「了解しました、副隊長伝令がございます」

「伝令?」

「はいわが領内で魔族の魔法陣がいくつか確認できました、こちらの領内でも同様の魔法陣が設置されている可能性がございます。」

「転移魔法陣か?」

「はい旅の途中見つけたものは破壊しておきましたが」

「ありがとう、わが領でも魔法陣は見つけ次第破壊しておく、情報かたじけない」


「姫様ここから先はわがトライデン騎士隊が護衛しますのでどうぞよろしく」ニッ!

「うぬ」


ひげを生やし槍を携えた偉丈夫がニッと白い歯をむき出して笑う姿は何とも言えなかったが。

昔どこかの映画で見たような北欧の海賊を思い出した。

トライデン領からは副隊長以下4名の騎士が護衛に着いた、この先のクウラン町でさらに6名が参加し、ジンジャー領の捜索に参加するということだ。

ハッサムたちは戻り捜索隊を編成し弟のジョルジョと共に4日後に合流するのだが、もしかすると魔法陣除去という緊急事項のため合流が遅れる可能性もあり得る。

編成の人数も変更される可能性もあるので、実際に洞窟を調査する日程は遅れる可能性もありそうだ。


まあマーシャ率いる学生部隊がその日程を守るかどうかは別な話だが、姫様がおとなしく全部隊がそろうのを待つということ自体考えにくい、なにせお転婆で元ヤンキーな彼女、何かが起これば即行動するだろう。


「ではそろそろ出発します」

「しゅっぱーつ」


トライデン領はプラチナム領と同じ農業生産物で潤う領だ、ただしこちらの領はイモ類の生産が盛んでその種類も豊富だ。

そしてこの領はイノシシの飼育もしている、まだ畜産としての日は浅いが領内の食肉を賄うぐらいには規模が大きくなってきている。


「姫様はご旅行ははじめてですか?」

「うぬ 今回が初めてじゃ」

「わが領はイモと肉の生産が盛んです、宿泊する町ではうまい肉を堪能できますよ」

「それは楽しみじゃな」


イノシシは野生の豚というのが普通の考え方だが、この領で飼育しているのはイノシシの原種。

その大きさは牛とほぼ同じで体毛はやや黒い。

突進力が強く、土の中に埋もれた根菜類を狙って食べ散らかすために、以前は農作物の被害がかなり問題だった。

現在は罠を作り捕獲してから魔法で行動を制限させイノシシ牧場で飼育するという形にしている。

エサは雑穀で、この地区特産の芋類を主に与えて飼育しているらしい。


「姫様楽しみですね」

「うぬ、前の領では肉類はほとんどテーブルには並ばなかったからな」

「基本肉は祝い事など特別なことがない場合は食べれませんからね」


この国、この世界では肉と言えば鶏肉が一般的で代表的なのはカモの肉、大きさもそうだが鳥料理でも結構贅沢な部類に入る。

イノシシや牛、鹿などのジビエは基本取れた時でしか食べられない。

常に食肉が手に入る転生前の世界がなんと贅沢な世界だったことか。

この世界もマーシャの見立てでは数十年もすれば畜産が増えてきて、高価であっても肉類が日常当たり前のように手に入る世の中にはなっていくのだろうと感じている。

これは戦争を回避する一つの手段でもあるのだ、食欲、食べること一つで人は争うこともある。

土地があればそれだけ畑をたくさん作れる、生えた草をついばむ獣が増えれば捕獲して自分たちの食料にできるのだから。


地平線まで広がる芋畑、小さな白や紫の花を付け、あと2か月すれば収穫の時期を迎える。

やせた土地でも育つイモ類、魔族の国でも同じような芋の栽培は行われているらしい。

そのあたりの技術は特に秘匿されているような様子はない。

街道を進んでいくと風に乗りイノシシ特有の獣臭が漂ってくる。


「あれがイノシシ牧場か?」

「はい、柵には特殊な魔法をかけてあり、逃げ出すことがないようにしてあります」


柵の高さは1メートル50センチほど、ちょっと見だけではすぐ逃げられそうな感じに見えるが、魔法をかけてあるのならば納得できる。

柵の隙間からは大きな黒い生き物が悠々と行き交う姿が見て取れる。

中にはそれほど大きくない個体もうろうろしており、たぶんウリボウと呼ばれるイノシシの子供とみられる。


「このような牧場は他にもあるのか?」

「この領全体で今は10か所はありますね」

「ほほ~」

「芋が餌なので自給自足で飼育できますからそれほど手間はかりません」


(ヴフ~~~)


イノシシ牧場を横目にさらに進んでいくとそこからは又、芋畑が延々と続いている。

街道はほぼまっすぐに続いているがややアップダウンする個所もあり、ところどころで防風林のような林も見られる。

それからは特にアクシデントは無く本日宿泊予定だったトライデン領クウラン町にたどり着いた。


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