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魔法陣の除去

魔法陣の除去


頼んだ数が少なかったので食事の時間はかなり早く終わり、おじいさんに別れを告げこの日後半の旅を続ける。


「それでは次の町へ行きましょう」


馬車へ乗り込み次の町へ、我々より先に食事を終わらせて護衛の騎士2名は待っていた。


「姫様お早いお戻りでございますね」

「いやおぬしらの方が早いじゃろう」

「早食いも訓練のうちですからね」

「確かにな」

「それでは出立いたしますか?」

「ん 頼んだぞ」

「しゅっぱーつ」


プラチナム領はウスクの町を出ると2時間もすれば次のトライデン領に入る。

予定では領堺でトライデン領の護衛騎士と交代するのだが、その前に思いもよらない事態に巻き込まれる。


「姫様あれは?」

「転移魔法陣!」

「魔族の攻撃かもしれない、全員防御態勢で待機、馬車はそのまま様子を見よう」


魔法陣の回りには魔族の姿などは無く、どうやら時限式の魔法陣のようだ。

魔法陣の大きさは5メートル前後なので単発的な攻撃のようだが、魔法陣があれば又数時間すると魔物が転移されてくるので、魔法陣を消しておかなければならない。


「姫様たちはこのままお進みください」

「おぬしらだけで平気か?」

「大丈夫ですよ、お任せください」


転移魔法陣から現れたのは魔狼が3匹、だがそれを見て集まってきたのかさらに4匹が加わった。


「やはりわらわも加勢してやろう、皆はこのまま進むがよい」

「マーシャ様~~」

「あ~また始まったみたいだぞ」

「俺らより断然強いんだから、邪魔するわけにはいかない」


前の馬車に乗る男子たちは、とりあえず姫様がどうするかを見守った。

もちろん何かあれば加勢するのは当然だが、余計な手出しをして足を引っ張っては元も子もない。

マーシャは馬車を飛び降りると、俊足スキル甲と速足魔法を使いあっという間に騎馬へと追い付く。


「姫様!」

「後ろを借りるぞ」


そういうとハッサムの馬に飛び乗り、ハッサムの腰に手を回す。


「捕まっていてください」

「ん」

「プロテクション」

「エクストラパワーアップトリプル」

「これは補助魔法!」

「まあないよりはましじゃろ」

「ありがとうございます」


騎馬が2頭に対し魔狼7匹は普通なら五分五分といったところだが、それではこちらもけケガをする。

マーシャは騎馬の上から魔法を使い魔狼の足止めをする。


「アイスバインド」


魔狼7匹が足を取られこちらに転がってくる。

同時にマーシャは手を放し馬から飛び降りる。


「今じゃ」

「おう!」


素早く馬から降りると抜剣し魔狼の首を刈っていく、3倍増しの魔法で剣の力も高まっており2匹同時にとどめを刺すのも、難しくはない。


「こりゃすごい」


まるでバターを切るように剣が魔狼の体へサクッと吸い込まれていく。

7匹の魔狼を刈るのに5分もかからなかった。

その間にマーシャは魔法陣があると思われている地面へと歩いていく。


「これじゃな」


地面には赤黒いインクのようなものでいくつもの文字と線が描かれていた。


「アースクリエイション」


土創造魔法を使い魔法陣を破壊する、幅5メートルほどの魔法陣があっという間にただの地面へと変化する。


「ほかにも魔法陣は無いか?」

「こちらにもありました」


もう一人の騎士がほかの魔法陣を見つけたらしい。

マーシャはすぐに駆け付け、同じように魔法陣を破壊していく。

合計4つの魔法陣、転移魔法として動作するのはどうやら転移元の魔法に依存するタイプらしい。

もしかしたらこんな魔法陣があちこちに設置されている可能性がある、これらを放置しておけばもし戦争になったとき、後ろから挟撃される可能性が高くなる。

検問などを設置しても簡単に破られてしまう。


「ん~かなりまずい状況じゃな」

「姫様!」

「魔法陣に使われているのは魔石の粉と血液じゃな、これならばサーチ魔法で魔法陣の場所は特定できそうじゃ、じゃがこの様子すでにこちら側の土地にかなりの数、魔法陣を設置されている可能性がある、すぐに対処しなければ単発的な嫌がらせだけではなく有事の際、足元をすくわれる原因にもなる」


とはいえ常にサーチ魔法を出し続けるなどということは通常できない、マーシャの場合はスキルなので意識すればずっと発動しているが。

今回も便宜上一応魔法でということにしておくが、それでもマーシャだけで全部の魔法陣を撤去することは不可能に近い。


「ハッサム殿、このことをすぐに知らせ騎士隊の遠征時に魔法陣を破壊しながら向かうよう手配してくれぬか?」

「かしこまりました、すぐに伝令を出します」

「チューリオすぐに騎士隊に知らせてくれ、遠征しながら魔法陣を除去するように」

「魔法陣のサーチ魔法を使えるものが何人か必要じゃのう」

「魔法陣のサーチが得意なものも探しておいてくれ」

「了解しました!」


部下であるチューリオ・ロドリゲスに伝令を頼み、仲間の馬車へと戻る

魔族もなかなか面倒なことをしてくれる、まあ種が分かれば仕掛けを何とかするのはわけがないが。

それでも面倒なことに変わりはない。

魔法陣は規模にもよるがほぼ平らな場所にしか設置できない、文字や線が歪んだだけでも魔法を発動することができなくなるからだ。

それに材料となる魔石も分量は決まっているため、無尽蔵に魔法陣を設置できるかというとそうでもない。

たぶん潜入した魔族は平らな地面を見つけランダムに転移魔法陣を設置し、定期的に魔狼やゴブリンを送りこみこちらの出方を見ている節がある。

本番の戦争では別な場所に仕掛けてある魔法陣を使用してくるのだろう、そうでなければ単発での嫌がらせでは魔法陣の設置にかかる資金も無料ただではないのだから。

馬車に戻ると皆が目をキラキラさせて待っていた。


「姫様どうでした?」

「うぬ 少しまずい事態じゃ」

「え~」

「どこがまずいのです?」

「魔族のやつら転移魔法陣をあちこち設置したみたいなのじゃ」

「姫様、例の魔狼事件と同じやつですか?」

「ああそのようじゃな」

「何か手は無いですかね」

「今の所みんなで見つけ次第消していくしかないのう、道端の魔法陣全部が完全に機能するわけでもないがな」

「雨で文字が消えたりしますもんね」

「うぬ」

「道中に見つけたら皆で消してゆこう」

「はい」


それからは、街道から半径約30mの範囲でサーチ魔法を使用し魔法陣の検索をかけながら進むことにした。

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