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獣人族と奴隷制度

獣人族と奴隷制度


「くんくん 本当です匂いが消えました」

「おぬしらかなり長い間水浴びもしておらんかったのじゃろう」

「前に水浴びしたのは20日前ぐらいです」

「大変だったのう」

「はい、みんな無事ならいいですが」


彼女らは500k近くの道なき道を逃げてきたことになる、途中にも獣人村はあるだろうが王国内の獣人はどちらかというと羊や牛の獣人が多く、そこへ逃げ込んでも誰も相手にしてくれないだろう。

逆に敵視されて攻撃されたりする場合がほとんどだったと言う。

話の内容から、村を襲ったのは魔族軍の徴兵部隊、獣人村を回り強制的に徴兵していくのだ。

戦争用の兵士を徴用するためなのだが、そうすると捕まった村人はすぐに死ぬことはないと思われる。

今はまだ戦争中ではないので、たぶんこれから訓練され戦争が始まったときに魔族の先兵としてこき使われるという話だった。

食い逃げをしたのはこの地区のお触れのせい、獣人が単独で買い物をするには主人となる人族が一緒にいないと買い物をできないという奴隷制度の仕組みによる。

あの男が「俺に金を渡してもらえば食い物を買いにつれて行ってやるよ」と言ったのをうのみにしてしまい。

金を渡したのが全ての原因だった。


「そうかそうか、じゃがこれでひと安心じゃな」

「姫様はこれからどちらへ?」

「おぬしたちには悪いがまた国境近くに行かねばならぬ」

「それは構いませぬ、みんなのことも心配ですので」

「うぬ 魔族の強さがどの程度かわからぬ、確実に大丈夫だとは言えぬがな」

「魔族の将軍が一番強いとの話は聞きましたが、それでも竜族よりは弱いとの話です」

「その話では魔族の強さを測ることはできぬな、詳しくはまた後で話すとしよう、外で風呂を待っておる者がいるからのう」

「はい姫様」


風呂から出ると魔法を使い水分をまとめて除去すると風魔法であっという間に乾かす。

塀にかけていた衣服を手に取りさっさと着替える。

獣人たちには着替えを用意しておいたので汚れた衣服は後でフランとクレアに洗濯を頼んでおくことにした。


「次はシャーリー、ロジー、ミミーじゃ」

「はい姫様」


「彼女らで女子は終わりじゃ、そのあとは自由に使ってよい、終わったら知らせてくれ。もとに戻さなければならぬからな」

「了解」

「姫様も、とんでもないことを思いつかれる」

「そうか?このぐらい大したことはない、妾と一緒にいればもっと面白いことを見せてやるぞ」


その後男子も全員、先生も同じように泡風呂を浴び全員が終わったところでホテルの支配人がマーシャのもとへ。


「これは?どうやって」

「すまぬなちゃんと元に戻しておくので安心しておくがよい」

「いやいや待って下さい、壊さないでください、素晴らしい!このまま使わせていただきます」

「じゃが、魔法で作ったのじゃ数時間で壊れてしまうぞ」

「大丈夫です、不壊の魔法を使用しますので」

「おおそうか、じゃが風呂の中は使用する前に水の耐性を上げなければ水漏れを起こすのでな」

「そうですか・・いや何とかします」

「それで良ければこのままにしておくよいか?」

「はい構いません」


結局風呂は壁も含めてホテル側の意向で、そのまま保存することになった。

この日からこのホテルは露天泡風呂付きの旅館へと変わって行った。

時刻はすでに8時を過ぎており全員がそろったところでホテル併設の食堂で夕食をとることにした。


「姫様、こちらです」


夜8時を過ぎていることもあり、無理を言って作ってもらった夕食は質素なものだった、パンと何かの肉のシチューそしてハムとサラダ。


「姫様今回はかなり少ないな」

「うぬ、まあ仕方がなかろう、こういう食の変化を知るのも旅の目的じゃ」

「マーシャ様、本日父上には何の相談を?」

「一つは獣人への厳しい取り締まりの解除、それから2つ目は牧畜業の勧めじゃ」

「牧畜ですか?」

「うぬ、前の領では馬を飼っておったな」

「はい」

「じゃがこの領は花と奴隷売買」

「どう考えても食料となる農耕か畜産業が必要じゃ」

「でも何を飼えばよろしいのでしょう」

「わらわが教えたのは牛の飼育じゃ」

「牛ですか?」

「いや、姫様その考えはわからなくもないですが、少し無理がありますよ」

「そうこの地区の牛はほとんど野生じゃな、捕まえるのも一苦労じゃ」

「それじゃなぜ?」

「獣人にやってもらうんじゃ」

「獣人に?」

「人の数倍ある身体能力、そして感覚器官が発達しているが故 牧畜の管理を任せれば人より優れた能力を発揮する」


「フランカ、おぬしらはあのでかい牛を取って食べておるのじゃろう?」

「はいそんなに頻繁ではないですが月に5頭は捕獲していました」

「捕獲するのにおぬしらは何人で行うのじゃ」

「5人もいれば十分です」

「マジかよ」

「人族だと20人から30人は必要ですね」

「そうじゃ獣人の仕事としてはうってつけじゃ」

「なるほど」

「まずは牛を捕まえて子を増やすのじゃ、それと雌牛からは乳を取る」

「確か馬を飼う場合もおとなしくする魔法を使用していると思うが、同じように捕まえたら魔法で管理すれば、後は同じように飼育できるじゃろう」

「確かにうちの領は牧草地がたくさんあるのに畜産はしていません」

「昔は畜産もしていたんじゃろう、ホブルート領になってからは辞めてしまった可能性が高いのう」


50年前の魔族の侵攻でこの領の領主は裏切り行為が発覚し爵位剥奪、代わりにこの地を下賜された先代ホブルート侯爵は主に植物の栽培を中心に手掛けた、この地区は花や薬草などの産地として知られているが。

領の発展と共に花だけでは領民を賄えなくなってきた、そこで魔族領から逃げ込んできた獣人を奴隷化する法律を作り奴隷の売買を始めたというところ。

ただし奴隷の売買で領主の親族は潤うが領民は潤わない、すでに逃げてきた獣人は売り払われもともといる領民である獣人にまで手を付け始めた。


領民=獣人、それは領民を売り飛ばすことを指す、領民が減るだけでどんどん人口も減るということ。

これでは働き手がいなくなってしまう。


「シャーリー、学院に戻ったら畜産、特に牛の飼い方と牛の有用性を勉強してみよ、領民が潤う可能性はかなり高い」

「分かりました、父と協力して畜産業やってみます」

「うぬ」

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