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奴隷制度

奴隷制度


もちろん少し馬車の速度は上げて次の町へ向かったが、次のトルドの町についた時点ではほぼ予定通りの時間で到着することができ、これは御者の皆さんのおかげといってよい。


「今日はこの町で宿泊します」

「クレア、ホテルへ行って獣人2名の追加予約を入れておいてくれ」

「かしこまりました」

「御者の皆さんありがとうございました」

「いいえ例には及びませんや、姫様がいてくれりゃこっちも安心して操縦できるってもんです」

「それにしても食い逃げ事件の解決の早さ、もう我々には何が何だかわからなかったが」

「ええ 後で聞いたら真犯人までちゃんと捕まえちまうなんて」

「しかもあっという間に」

「わらわもここまでうまくいくとは、思わなかったがな」

「じゃあわしらはまた馬車を移動するのでこれで」

「分かった、明日もよろしくな」

「よし、私たちも宿へ向かおう」


先生が声をかけると一行は今日の宿であるホテルトルドへと向かった。


「マーシャ様問題が発生いたしました」


先にホテルへと2名追加の申し入れをしたのだが、その追加分が獣人だということを告げると宿泊を断られたということだった。


「そうかでは妾が直接交渉しよう」

「いらっしゃいませ」

「フロントはこちらで良いのか?」

「はい」

「本日予約しておいたマーシャ・オースティン・アルフレア、アルフレア王国第三王女である、本日宿泊人数に変更が生じたため2名分の追加宿泊を申し入れたのだが、どうして却下されたのか理由を知りたい」

「しょ 少々お待ちください」

(支配人!)

「これはこれは王女様」

「本日の宿泊人数のことだが」

「申し訳ございません、本日はすでに満室でございまして」

「構わぬ別に部屋を増やせというわけではない、わらわの部屋に6人泊まらせる良いな」

「あ ま お待ちください」

「何か問題でもあるのか?」

「はい 当ホテルでは獣人の方の宿泊はご遠慮させていただいております」

「何か理由でも?」

「はい領主様の布令がございまして」


各自治領ではそれぞれに領主による法律がある、例えば作物を外へ持ち出すなとか、入領税を課すとか。

他にもいろいろあるがこの領では獣人差別をしているということらしい。


「シャーリーおぬしの父上に一時的に了解を得ることはできぬか?」

「申し訳ございません姫様、先にお話ししておくべきでした」

「それは構わぬ、それではホブルート侯爵に謁見するしかないか…」


そこにホブルート侯爵がやってくる、侯爵邸は街の外れにあり、今日娘が到着することはすでに伝わっている。

彼は身長190を超える大男だった。


「これはこれは姫様。初めまして私がホブルート領を管理しておりますプラシル・ホブルートと申します、娘がご厄介になっております」

「初めまして、わらわがマーシャ・オースティン・アルフレア、アルフレア王国第三王女じゃ」


侯爵は膝をつき挨拶をする。


「ん 苦しゅうない」

「姫様なにか問題がございましたか?」

「うぬ わらわの同行者に獣人が2名加わったのでな、本日宿泊の追加を頼んだのだがな」

「じゅ 獣人!」

「なにか問題でもあるのか?」

「…その昔、この領で一時期獣人といさかいがございまして」

「だが確か、先代のシルバー・ホブルート殿はそのようなお触れは出しておらぬはずだが?」

「よ よくご存じで…」汗

「本日だけでも特例で認めるわけにはまいらぬか?」

(娘の前じゃ、良いところを少し見せておくのも後々プラスになると思うがのう)

(そ それはごもっともで)

「支配人 本日ホブルート伯爵令にて特例として姫様付きの獣人従者2名の宿泊を認める」

「はっかしこまりました」

「父上ありがとうございます」

「いや、そろそろ潮時か…」

「公爵殿、獣人のことで話がある、内密にな」

「はっ、それではわが屋敷へ、お話はそこで伺えればと思います」

「ん では参るか、その方らは部屋でゆっくりするがよい、訓練はちゃんとしておくのだぞ」

「分かりました姫様、いってらっしゃいませ」


急遽マーシャは侯爵邸へと足を運ぶことにした、この領で何が起きているのかを、予知してしまったからである。

もちろん侯爵だけが悪いわけではなく、もとはと言えば侯爵の兄弟が始めたことに端を発する。

それは奴隷売買、特に獣人達のことはシャーリーも知らないことではと思う。

昔のことといっても約50年ほど前だが、10傑が魔族を退けこの地にも平穏が訪れる。

プラシル・ホブルート侯爵の父シルバー・ホブルート(10傑の一人)は武勲を上げこの地を王様から下賜された、元々は他の伯爵位の土地だったが魔族との結託が表ざたになり国賊として元伯爵はとらえらえた。

その後、ホブルート侯爵が後任となりこの領を収めることになったが、当時この地には獣人が多く住んでいた、彼らが魔族側についたため約3分の1にあたる獣人の住民が国を裏切るという大きな事件になっていたのだ。

当時の法律はあまり確立されておらず、住民全員の総意を得るため裏切った住民の裁きを行った、だが住民の三分の1を粛清すれば国力(領の力)が落ちてしまい運営が成り立たない。


それを回避するために奴隷制度を大きく変更し裏切った国民を奴隷化することにしたのだ。

裏切り行為を働いた住民の多くは獣人だったため、通常の条文を少し変え獣人をよりきつく取り締まるような法律に変更したのだ。

後にそれが奴隷狩り(獣人狩り)へと変わっていく、そうこの地は現在奴隷の売買で利益を上げている土地柄でもある。

そうすることで奴隷の売買をやりやすくしているのだ、獣人ならば中央政府からの厳しい検閲を免れることもできるだろうと。

確かに獣人の扱いはそれほど悪いものではなかったが、だからと言ってこのまま放っておくこともマーシャにはできなかった。


「どうぞわが屋敷へ」

「ん」


ホブルート侯爵について屋敷へと歩いていく、ほぼ町の中央から歩いて数分の場所にある建物は2階建ての洋館と言った所だ。

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