ダーラスの目線
ダーラスの目線
マーシャが対応するというのですることが無くなった最強の竜族。
一応近場の魔族達を保護する魔法を使用しては、退避するように促してはいるのだが。
それでも、目の前で起こっている状況を見れば、心がどうしてもワクワクしてしまうのは仕方がないところだ。
巨大な暗黒竜に戻ることはマーシャにも禁止されている、その姿を見せたならば魔王国もひっくり返るだろう。
人型に変身していても角と尻尾はわずかに残る、今は新しくなったメイド服を羽織っているだけだがその力量は魔族とは比べ物にならない。
もちろん現在もいくつかのデバフ魔法具を身に着けている。
「ダーラ様」
「何じゃ」
「そろそろ行きませんと…」フロウラ
「いやじゃ」
「え~」
「まだ大丈夫にゃ」ヨツマタ
「あなたは黙っていて」
「こわいにゃん」
横から口出しをして怒られてしまったヨツマタ。
一応メイドの中での順位はフロウラが一番上なのだが、ダーラは竜族の頂上であることから現在の立場は逆転している。
そしてダーラが何かすればそれを見張っておくのもフロウラの仕事だったりする。
「おぬしにはあの者の監視を頼む、まあ余計なことをしないように見張るだけじゃ」
「私に始祖様を監視しろと?」フロウラ
「他に頼める者はいないじゃろう」
「そ そうですか、わかりました」
「あ奴には内緒にな」マーシャ
まあだからと言って命を賭けてまでダーラを阻止しようという事までは考えていない。
本当は自分もマーシャの戦いを見ていたい、今では従者というより王女様に憧れるファンの一人。
まるで物語の主人公が目の前にいてその方のお世話をできるなどという、この世に生まれてきて最大の幸運に恵まれているのだ。
「そこじゃ!」
「そこの、危ないぞ」
「ひえー」
「早く逃げるぞ」
「あの女、大丈夫なのか」
「ありゃ竜族だろ」
「鑑定しても全部?マークが出てる、関わらない方が無難だ」観客A
「確かに」観客B
「ドドーン」
「バラバラバラ」
「うひゃー、ここもやばいぞ」
「早く逃げんぞ」
観客席に飛んでくる瓦礫は大きいものだと数メートルはある。
魔物が振るう剣が建物を壊すたびに爆発が起こりあたりに瓦礫が飛び散る。
ガード魔法で少しは防ぐことができるのだが、ほとんどの魔族はそれほど魔法をうまく使えるわけではない。
1トン以上の瓦礫が100k以上のスピードで飛び込んできた場合。
上級の防御魔法でガードできても、その反動を受けずに無事で済む訳ではない。
「そろそろ決着がつきそうじゃ」
「すごいっすね」カユーラ
「おぬしは行かぬのか?」
「そうするとあの人たちが何をするかわからないっすから」
「そういうことか」
「まあそれでも主が負けるなどということはないじゃろ」
気配はダーラも感じていた、この場に残っているのは目の前の戦いが自分達に飛び火しても簡単に排除できると思っている者達。
たぶん魔王と一戦したとしても負けないと思っている魔公爵達である。
本来ならば自分達も魔王へと挑戦することを考えているのだろう。
この試合で自分が勝利できるかどうか、そして魔王の座を狙っている他の魔公爵の力量も同時に測っていたりする。
魔王と魔公爵の試合は冥界の魔物を召喚した邪神の仕業ということで終了した。
数十年に一度と言う下剋上の儀は中途半端な結末を迎えたが、これからも魔王と魔公爵の
戦いがなくなったわけではない。
それが魔王国のしきたりであるならば無くなるはずもない。
魔王と魔公爵の試合を見届け、魔王国内の情報を集めるべく旅を継続する第三王女マーシャ。
果たしてこの先に何が待ち構えているのやら。




