敵か味方か
敵か味方か
マーシャ達や魔公爵の娘であるミストル達とは別に、下剋上の儀である魔王と魔公爵の試合を見ていた人物がいた。
数十年に一度行われる魔王の交代を見届けるためにコロシアムへと見学に来ていた爵位持ちは沢山いた。
だが魔公爵が冥界の魔物にその身を乗っ取られた時、その場から逃げ出さない人物が数人いた。
「邪神の誘惑か、愚かな奴だ」フル・ミシャル・ダークエル(ダークエル魔公爵)
「主様ならば魔王とどう戦いますか?」ミロク・ホーウェン(ダークエルフ族の准魔導伯)
「Bクラスダンジョンの踏破者というだけで、単独で踏破したというわけではないだろう」
「魔鋼軍の精鋭部隊から数名を選別して攻略に挑んだという話です」
「あの部隊か、ならば閃光のビスタ、そして鋼刃のスウジャが含まれていたはずだな」
「おっしゃる通りです」ミロク
「それにしてもあの人族の雌はどこの手の者か?」
「王国の第三王女だと思われます」
「素晴らしい、あのような者がこの世界にいるとは…そう思わんか?」
「私には何とも」
ダークエルフ族には邪神がすでに手を貸していると言われていたが、魔公爵の一人であるフル・ミシャルは目の前の光景をじっと眺めていた。
「おー召喚魔法なのか、小竜まで呼び出したぞ」
「あれは伝説の召喚獣では」
「どこかのダンジョンで手に入ると噂されていた宝か」
「ということはあの女はかなり強いとみて間違いないな」
「ドドン」
「そろそろ立ち去るとしよう、最後まで見ているとあらぬ疑いを掛けられるかも知れぬからな」
「かしこまりました」
マーシャと冥界の魔物が戦う姿を見ていたのは彼らだけではない。
全部で7人の魔公爵とその配下数人がこの試合を見に来ていたはずだ。
他のブースには今までその姿さえめったに見せることが無かった者達も訪れていた。
「あれが邪神が言っていた娘か、なるほどあの娘を倒すのは骨が折れそうだ」
「いかがいたしますか?」
「雷蝶部隊から数人選別しておいてくれ、仕掛けてみよう」
「ハイ」
こちらはファウンデン魔公爵家、当主のアルバサール・ステルス・ファウンデン。
そして従者のワフ・チキラ、幻影魔法や召喚術などを使う一族であり。
一時期はエルフ族と共に生活をしていたこともあったが、今は邪神の手先となってエルフ族に反旗を翻した。
20年前、彼らが暗躍したことによってダークエルフ族がその地位を勝ち取りエルフ族が奴隷階級へと落ちてしまったらしい。
だが今現在はどちらもお互いに反目し魔公爵家として対抗しているようだ。




