魔王城再び
魔王城再び
マーシャ達は魔王城に来る時はいつも転移魔方陣を使用している。
今まで正門から入ってきたことなど一度も無かった。
だが今回はそういうわけにはいかなくなった、中央コロシアムから魔王城の騎士隊に守られて数台の馬車が大きな門から入っていく。
一番大きな馬車には魔族が10人近く乗ることができるが、今回その中には急遽ベッドのようなものが設置された。
魔王がケガを負うということなど今までなかったことだった。
竜人族の超回復スキルがあると知っても、胸に穴が開いた時には誰もが魔王の死を予感しただろう。
魔法が無ければあのケガからすぐに復活するとはだれも思わない。
「ガラガラガラ」
「まだ寝ていてください」マリオス
「もう大丈夫なのだが」
「丈夫なものじゃな」マーシャ
「そういえばロディトルの奴は…」
「ちゃんと生きておるぞ、おぬしより酷そうじゃったがな」
「運のよい奴」
「そうじゃな、あのまま放って置けば本当に死んでおったはずじゃ」
マーシャが居なければ被害はコロシアムだけでは済まない、王都自体が破壊し尽くされていたかもしれないのだ。
そして大勢の魔族が命を奪われ、邪神の力を借りた魔公爵さえもその命を奪われていただろう。
「あの姿はまさに悪魔」
「邪神の仕業じゃな」
「やはり」
「私の代でこんな事件が増えるとはな」
「運命じゃ」
「その方に言われると、あきらめが付く」
「邪神とやらは数体おるという話じゃ」
「数体?」
「よこしまな感情に付け入り制御できぬような力を授ける、すでに10人以上邪神の配下になっておると聞いているがな」
「どうしたらよいのだ?」
「魔王殿はそのままでよい、妾に任せておけ」
「それでことが収まるのならそうするが」
「その時になれば、魔王殿にも加勢してもらうつもりじゃ」
「そうか」
(あの一撃はなかなかだった)
「到着しました」
「開門!」
馬車に乗せたベッドごと、数人の騎士が神輿のように担ぎ上げ城の中へと運んでいく。
先に到着していた王妃が出迎えていたが、マーシャの顔を見て一瞬顔を引きつらせる。
だがすぐに一礼して魔王に付き添い寝室へと入っていった。




