魔公爵の防御
魔公爵の防御
そこからの試合流れは誰もが予想していた通り、わずかだが魔王側の力量が上だと思われるシーンが続く。
「ドン!」
「ギャイン」
「グッ」
「重い!」
「打ち込むたびに重くなる剣だ、切るというより叩くための重さだな」
「くそう」
「あといくつ耐えられるかな?」
「ガイン ドガン」
重いうえにこちらの剣の特性もあり、受けに回ると追加の爆発でさらに押し込まれる。
まあ半分は魔王側にも跳ね返っていくため、どちらも腕や籠手が壊されていく。
「それ!」
「ドガン」
魔王も魔公爵相手に手を抜くようなことはしない。
魔公爵の持つ剣が放つ爆発を受けて自分のHPがどんどん減っていくのが分かっていて、それでもなお重くなっていく大剣を叩きつけていく。
「ドガン」
「ズガン」
【2回戦目終了です】
攻守が入れ替わり魔公爵の守り、だがその結果は惨敗と言って良いだろう。
HPは残り20%まで落ち込み開始戦まで戻るのもやっと。
それなのに魔王は攻撃するほど重くなるという魔剣を手にしてものっしのっしと歩いて戻る。
手に入れた剣の特性を100%生かして戦いに挑んでいると言って良い。
「あやつ、何か切り札でもあるのだろうか?」
魔王という地位に就いてすでに20年以上、先代の魔王が病に倒れその皇子として後を継いだ彼。
竜魔族とは言え年齢と病には勝てなかった先代の魔王。
崩御したのが823歳であり、いくつもの魔法で余命を伸ばしていたと聞いている。
要するに何度もの暗殺や毒殺といった攻撃をやり過ごし、生まれてきた子らの死を目の当たりにしても。
守り通してきた魔王としての地位を、ようやく息子に譲り渡して眠りについた。
「次はこちらの守り、それで逆転できなければ終わるのだ」
「そうでございますね」魔術師
満身創痍とまではいかないが、さすがに数トンの鉄塊を叩きつけられて無事に済むわけがない。
その腕には外側からは見えないが骨にはいくつかの亀裂が入り、指は数本が外側に曲がり胸の骨も数本折れていた。
竜魔族の固有スキルである超再生があることにより骨は数秒で元に戻るが。
度重なる衝撃によって細かく砕けてしまっては、もとに戻るのにはそれなりの時間がかかってしまう。
(どうだ、決心はついたか?)
「邪神め…」
この状態から3回戦目で勝利をつかめるとは思えない、魔公爵は邪神の誘惑にとうとう屈してしまうのだった。




