魔法具制作
魔法具制作
そうこうしている間にクレアが買い物から帰ってきた。
「マーシャ様ただいま帰りました」
「ご苦労じゃ、はやかったのう」
「はい買い物を魔石と貴金属に限定いたしました」
(本当はもっと買い物したかったのに~・・)
この世界でも金と銀などの貴金属は普通にありその上に魔石がある、だがラノベでよく見かけるミスリルやアダマンタイトといわれる素材は無いようだ。
その代わり以下の金属があるという。
ダーククウォーツ(黒魔石)小10個
ブラッドクウォーツ(赤魔石)小2個
セイクリッドクウォーツ(白魔石)中1個
レインボーアイアン(虹鉄鋼)1k
ほかにもあるようだが、今回クレアが仕入れてきたのがこの4つ、ダークククウォーツというのがふつうの魔石ということだ。
そして装飾品が5つ、〆て金貨20枚(80万円相当)が消えたが王族の買い物としては微々たるものらしい。
それぞれの金属と装飾品を見て加工する物を決めていく。
ほとんどが指輪とイヤリングなのでその2種に絞って、創造魔法を使用し魔道具を作成することにした。
まずは金の指輪に魔石を加え創造魔法で合体させるのだが、この場合すでに金の指輪は出来上がっているものなので、魔石を宝石代わりに使用するのが最も簡単に作成できる。
生前の記憶から台座付きの指輪を思い出し指輪の一部に宝石を取り付ける場所を加工、そして魔石を加工し指輪につけやすくする。
基本的には魔石も表面をなだらかにした方が装着しても邪魔にならないと思うので表面のデコボコは磨いていく。
使用するのは創造魔法と石加工のスキル、目の前のテーブル上に魔石を置くと魔法をかけて加工していく。
魔法をかけたとたんみるみるうちに石が丸くなっていく。
「うん、こんなもんじゃろう」
「マーシャ様すごいです」
「器用度500じゃからのう」
「へ~私も器用度あげておこう」
「ちなみに器用度あげるには面倒ごとを省いてはいかんからな」
「え~」
早くもフランは脱落しそうだが、クレアもリリアナもすでに器用度は100を超えているので今後の努力次第でどんどん上がるだろう。
そして加工し終わった金の指輪に黒魔石を取り付け取れないように加工していく、通常の加工ならば指輪の一部にかぎ爪加工するのだが、魔法で加工するため丸く加工された黒魔石は一部を金と同化させることで完全にがっしりと取り付けができる。
そしてここからが肝心、魔法によって成長補助魔法を魔石に注入するのだが、魔石のランクにより魔力の保有力が違ってくる。
先ほどの魔石3種だが基本的に黒が凡庸でランクは五段階、赤が専用で火魔法と無属性魔法。
そして白い魔石が聖魔法と光魔法、というように使う方向性が違ってくる。
そして先ほどの黒魔石だがランクは全部3なので、かける魔法のランクも3までとなる。
魔術補助中級
成長補助(魔力)×3
魔術使用量減・乙(中級まで50%上級魔法は10%)
この3つの魔法を魔石に注入する。
「われ古の盟約に従い力の証をここに記す、成長補助マジカルグロウサポートトリプル」
「神の英知をここに現わさん、魔術補助中級マジカルアシストミドルレンジ」
「知の神に願わんここに英知の集積を現さん、魔術使用量減・乙マジカルアシストトリプルリデュース」
基本的にマーシャは言葉を発せずに魔法をかけられるのだが、これらを無音声で魔法をかけてしまうと皆に怪しまれるので一応適当な言葉をあてはめ魔法をかけるときに使用している。
ちなみに言葉を発すればバフが余計にかかり、より確実に魔法がかかることは言うまでもない。
「よしこれで一つできたな」
金の指輪は幅が3ミリ直径1.5センチという大きさ石の大きさも3ミリ程度なので、チェーンにつけて首からぶら下げても効果はある。
「そうだなこれはフランにちょうど良いかな」
「わたくしにですか?」
「まずは指にはめてからじゃ、もしかしたら指が太すぎて付けられないこともあるじゃろう」
「はいやってみます」
(そんなに指太くないですよ~もう・・)
フランはまだ9歳と半年、体こそマーシャより10センチは身長が高いのだが、彼女は他のメイドと違い従者としての扱いのため力仕事や日々の過酷なメイド業務は半減されている。
そのため指を見るとほっそりとしてきれいな指先が見て取れる。
フランは出来上がった指輪を手に取ると、自分の指にはめてみた。
するとやや太いかなと思われたが中指にピタリとはまり、手を胸の高さにあげるとひらひらと表裏を見せて喜んだ。
「マーシャ様ちょうどはまりましたよ!」
「ん よさそうじゃな、それではフランにはその指輪でよかろう、それでは同じやり方であと2つ作るとしよう」
マーシャはそういうと残りの装飾品の中から先ほどより少し大きい指輪を手に取るとまた、加工を始めた。
「よしできたぞ!今度は少し大きめじゃな、クレア 手を見せてみよ」
「はい」
少し驚いたような顔をしてクレアは左手を差し出す、まさか姫様がこんな簡単にメイドに宝飾品を下賜するとはクレアには思いもよらなかった。
実際彼女の手には何の指輪もつけてはいない。
マーシャは指の太さと指輪を交互に見ると。
「ん よさそうじゃなつけてみよ」
「はい!」
さすがに26歳になり大人な彼女毎日の過酷なメイド業務を完ぺきにこなしているし、すでにメイドとしても上級になりつつある。
その代わり指は多少かさついてはいるが、それほど太いわけではなく手に取った指輪も中指にすんなりフィットした。
「姫様ちょうどよさそうです!」
「ん ではそれをクレアに下賜する大事にせよ」
「あ ありがとうございます」
「次はリリアナじゃな」
「あ ありがとうございます」
リリアナはいつしか少しボーっとしていた、まさかこんなに簡単に王族の姫が自分で作った宝飾品を簡単に下賜するとは思わなかったのと、目の前で作られていく魔法具、それも宝飾品 たぶん仕上がった指輪一つでも買うとすれば金貨100枚は下らない品。
しかも目の前で魔石や指輪が変化していく様を見ているのだから。
この時代こういう作業風景は秘匿とされるのが普通で、作り方が分かってしまうと真似されることも当然あり、商売として行っている者にとっては特許にも等しい事だった。
それを目の前でいとも簡単に行っているのだから、それはリリアナにとっては夢のような出来事だった。
「ん できたぞ」
3つ目はプラチナの指輪だった、この世界では金の方が少し高い設定、なぜかというと銀と変わらない外観だから、ただしプラチナはさびることがない。
しかもその指輪は少しデザインが凝られていた為、金の指輪より若干広めに作られていた。
銀色の蝶のようなデザインその胴体の部分に黒い魔石をはめ込み作られた指輪は他の指輪より外見が美しかった。
「どうじゃ?」
「き 綺麗!」
指輪はリリアナのきれいな指しかも薬指にピタリとはまった。
「あ!・・うんこの指で!」
「リリアナ様その指だと」
「いえこれは運命、わたくしマーシャ様に一生仕えます」
「ん?」
「姫様薬指の指輪は婚約時と既婚者の証となるため薬指に指輪を付けた場合既婚者とみなされるのです」
「そうか、それは困ったな・・」
「いえ姫様この指で大丈夫です、姫様のもとに参ります」
「いや、それは」
「あらら」
「まあいいじゃろう、その時が来ればまた考えもかわるじゃろう」
「よしそれでは特訓じゃ・・・・とその前に夕食じゃな」




