試合開始
試合開始
下剋上の儀とは数千年前に始まった魔王になるための戦いである。
50年に一度現魔王に対して異を唱える公爵によって果たし状が送られる、それに魔王が了承すると両者による試合が執り行われる。
現在は8公爵家が現存しており、約10年に一度はこういった模様しがあると思っていいのだが。
現魔王に対して反感を持つ公爵家は現在3公爵家であり、他の3公爵家は魔王に対して従属という立場を示している。
残る2公爵家はどちらにも加担せず、成り行きを見守っているという姿勢だ。
【レディースアンドジェントルメン 長らくお待たせいたしました】
【本日のメインイベント 下剋上の儀を執り行います】
【かつて現王妃であるスルベリア様を賭けて死闘を繰り広げた魔王と公爵、今期は魔王の座をかけた試合となります】
【勝者は魔王となりこの国を導く権限を手に入れることになるでしょう】
「もう来る?」司会
「はい、公爵様が先です」
「分かった」
【それでは本日のメインイベント下剋上の儀、まずは挑戦者ロディトルグラディサザラードの登場だ!】
何処からか太鼓の音が鳴らされる、かなり大きな太鼓のようだ。
まるで地響きのような音がドンドンと鳴り響く。
「わー」
西の通用門から現れたのはロディトル魔公爵、ゆっくりと司会者のいる演武台へと階段を上っていく。
そして中央まで進んでいくと両手を挙げてひときわ大きな叫び声をあげる。
「グワー」
「ゴゴゴゴ」
「フフフ、この雰囲気久しぶりだな」
【マイク(魔拡声)をどうぞ】
【わが名はロディトルグラディサザラード、今日を持って魔王の椅子は我が物になる、賭けるのならば今の内だ、我に賭ける者には100Gを追加してやろう】
「わー」
【おっと魔公爵様から勝利宣言だ、しかも100G追加でもらえるらしいぞ、この申し出にあやかりたいものはすぐにベッドしよう】
「魔王様が」
「そろそろ来るのか」
「はい」
【おっと、皆様お待たせいたしました、魔王様の入場です!】
「ドドドドドドドドン」
「ドンドン」
「ドンドン」
「グォー」
ひときわ大きな雄叫びを上げて魔王が東の通用門から現れる、お付の刀持ちを従わせてのっしのっしと歩を進めていく。
「オー」
【待たせたな、この場で約束しよう、我が力は皆の為、そしてこの国の為、今期も我が勝利を約束する!】
東西に分かれて演舞場に上がった2人、その姿形は似てはいるが使用する武器には若干の違いがあるようだ。
【本日の試合は5本勝負、先攻は魔公爵様、2番勝負は魔王様・交互に攻守を変えての戦いとなります】
「わー」
【間違いございませんね】
【同意】
【うぬ】
普通の戦闘ならばそれほど難しくはない、だが試合の方式が先に3勝するというやや変則的な勝利認定となれば、その出方次第では勝利がひっくり返る可能性がある。
魔王は先に守り切ることで第一試合を勝たねばならない、だが両者共に持ってきたのは剣だった。
もちろん魔王が持ってきた剣も魔公爵の武器に負けず劣らず、かなりやばい代物だった。
「あの剣は妖剣じゃな」
「そのようですね」
「魔公爵の剣も同じようなものか…」
魔王の剣技、それは切るではなく打ち壊すと言った方が良いだろう。
魔公爵も同じように派手なエフェクトを出すような武器を好む、どちらも切るではなく壊す方に特化している。
そして3メートル近い身長と筋骨隆々の姿を見ればおのずと得物もそれなりに大きなものとなる。
刃渡りは2メートル近くあり厚みは3センチ以上、刃幅も50センチ以上はありそうな大きな物だ。
「面白そうな剣だな」魔王
「そっちこそ前の時に使った剣とは違うようだな」
「ああ、この剣は所有者を選ぶというやつだ、わしにしか使えん」
「ふん、まあ戦ってみればわかる」
「そういうことだ」
【それではお二方、開始戦までお下がりください】
5本勝負攻守を入れ替えるということは攻め側は守ってはいけない、そして守る側は亀になるという事。
どちらかがそれを破った時に勝敗が決まる、要するに我慢比べとなる。
既にいくつもの魔法具やバフ魔法をかけてあるので、死ぬようなことはないはずなのだが。
果たしてこのまま無事に試合が始まるのだろうか。




