下剋上の日が決定
下剋上の日が決定
翌日マーシャ達は解放された奴隷たちをアマンダとフォルダンに任せ、魔族の国へと再び調査に出ることにした。
既に盗賊の首領と末端の盗賊を手下にしたおかげで、そこから先へ行くのは多少楽になると思われたが、またしても問題が。
「ではそろそろ行くとするか」
「結構良い宿でしたね」
「マルソー家の紋章を見せたせいじゃろう」
「びびっていたにゃ」
「さてそろそろ密偵から知らせが届くころなのじゃが…」
「シュン」
「姫様、ただいま戻りました」カユーラ
「どうだった?」
「それが、少し問題が起こったようです」
「そうか、詳しく話せ」
魔王国の暗部に5年ほどいたことがある兎人のカユーラ。
現在でも魔王国内に独自の情報網を持っている。
「どうやらサザラード公爵が魔王に対して下剋上の儀を発動させたようです」
「本当ですか!」フロウラ
下剋上の儀、魔王国では強者が王になる、強者にとって大切な挑戦権の行使。
これは千年以上前から続けられてきた、魔王になるための戦いである。
現在の公爵家は8家あるがこの8公爵家、千年の間に一度は魔王になったことがあることの証でもある。
現在は5公爵に候補が絞られてはいるが、過去にはダークエルフ族が魔王になったこともある。
50年に一度、現魔王に対して各公爵家は一度だけ下剋上という、魔王に対して戦いを挑むことが許されている。
もちろんその挑戦を受領するか拒否するかは現魔王の判断ではあるが、特に今のような国内情勢が不安定な時期は魔王の人気が下がっている時でもあり。
拒否すると反魔王派を勢い付かせてしまう恐れもあるので、慎重に判断する必要があるのだが。
どうやら魔王はその申し出を受け入れたという話が魔貴族の間でもちきりになっているらしい。
「面倒なことが起きたようじゃな」
「姫様、魔王様とロディトル公爵の試合は5日後に魔王国のコロシアムで行われるようです」
「そうか、そうなると魔王国の調査に出かけるより、下剋上とやらの試合を見に行く方が公爵の強さを図るのによさそうじゃな」
「ちなみにコロシアムはチケット制ですよ」
「チケット制か!」
「一人金貨1枚の、マジカルチケットとかいうやつです」
「※マジカル?」
「競争率が高いということです」
※魔法がある世界なだけに、プラチナチケットのことをマジカルチケットと呼ぶ。
要するに手に入れられたならそれこそ魔法のようだということなのだろう。
「手に入るか?」
「やってみます」カユーラ
「アタイも手伝うのにゃ」
「その方らに頼めるか最低5枚じゃ」
「やってみます」
「やるにゃ」
チケットの方は潜入調査が得意な2人に任せ、当初の予定通りマーシャと従者2人はグレイド領へと瞬間移動した。




