ミッチェル城
ミッチェル城
メイド館に新たに従者として参加したヨツマタ、そしてフロウラとジルを連れて、旧ミッチェルグレイドの城へと移動する。
王様からは既にグレイド領にあるミッチェル城は自由に使って良いと使用許可を得ている。
そうこの領には城がある、どうやって城を作るだけの金を用意できたのか。
ここまでの調べだとその金は全部魔族との交流で得たということだ。
奴隷売買だけではない、王国ではご禁制となっている呪具や物資、中には麻薬の類や魔王国で禁止している毒物など。
そういった品物を売り買いしたことで得る利益によってミッチェル城は建てられたのだと聞いている。
「シュン」
「おお、来たか」フォルダン
「来ましたわ」
そこはミッチェル城の転移魔方陣、本来ならば城主の許可なく転移門は使えないのだが。
現在は隣の領主であるフォルダンが仮りの城主として管理を任されている。
彼の父であるコザットマルソーは便宜上隠居することで罪を減じてもらうこととなったが、その前に息子のフォルダンの補佐として動いていたりする。
「初めまして、姫様」コザット
「初めまして第三王女のマーシャじゃ」
「一応父を呼んでおいた、私が調査に行くとなると留守を管理する者がいなくなるのでね」
「それは構わぬ」
王国から2人も王族が来るのだから黙って隠居というわけにもいかず、元侯爵の父親をフォルダンは呼んでおいたのだが。
どうやら、本当にコザットは魔族とミッチェルに嵌められた形だったようだ。
息子のフォルダンは父が嵌められたことに気が付いて、何とか魔族の侵攻を阻んではみたものの。
騙されたとはいえ王国に仇をなしたと言う現実は変わらず、侯爵の位は息子が継ぐことで罪を償ったという形。
「ではさっそくまいりましょう」コザット
城から先の魔族との国境線へは馬車に乗っていくようだ。
「わたくし共で調べた情報では現在、国境線から魔族の村まで魔族の盗賊が蔓延こんでいるということです」
「魔盗賊もまだこちら側へは入り込んでいないようですが…」フォルダン
一応国境警備隊として近くの領から数人とマルソー領の警備隊が数人交代で警備をしているが。
簒奪行為や侵略行為などは今の所ないという話。
「ですが、本当に魔族の国へ行かれるのですか?」コザット
「もちろん行きますわよ」アマンダ
「道が悪いのは分かっておる、国境からは機工車を使うつもりじゃ」
今回、魔王国への調査には魔真隊から最新鋭の機工車を借りてきたマーシャ。
もちろん現在はストレージへしまい込んでいる。
「機工車ですか?」
「馬車では馬をやられると調査が進まなくなるのでな」
「よく借りられましたね」
「改良に少し助力をしたことで一台手に入れる事ができたようじゃ」
「あれですね」フロウラ
「うぬあれじゃ」
「さすが姫様」ジル
馬車とほぼ同じ大きさだが、高さはホロ付の馬車よりやや低い。
全体に角ばった車体だが、2年前に乗った機工車の改良版と言っていい。
タイヤホイールを小さく地面との接地部分を厚めにして、サスペンションとなる機構を一つ追加したことで悪路での走破性が格段上がった。
そして今までは前面にしかなかった魔法のガラス窓を側面へ取り付けることで、3方向からの視認性が増した。
背後だけはガラスではなく魔法で作った鏡を使用したバックミラーを装着した。
「後で見せていただけますか?」コザット
「興味がおありで?」
「ええ、私は魔真隊にいたことがあるのです、もう30年以上前ですが」
話してみると本当に人の好い、いかにも騙されそうな感じだと言える。
すでに彼の妻は病で亡くなっているので、彼に助言する人間が息子しか残っていなかったのだろう。
だがその息子が学院にいる間、近くには相談する者がいなかったようだ。
魔族、特に邪神と手を組んだ者はずるがしこく狡猾だ、何かおいしい話を条件に魔族に協力するように誘いこんだのだろう。
気が付いた時にはすでに騙されていた事になる、そうだとしても国に背いたことだけは変わらず。
フォルダンが知った時には魔族の企みを正直に話し、魔族の計画から離反することぐらいしかできなくなっていた。
「着きましたよ」
「ヒヒーン」
約1時間の馬車移動、距離は40kと言ったところか。
国境線と言ってもそこは荒れ果てた山間の道、所々に草や木が生えてはいるが岩の方が目立っている。




