縫製デザイン工房(閑話)
縫製デザイン工房(閑話)
学院の女子寮でアマンダと話した後すぐにマーシャは新しく手に入れた縫製工場へと向かった。
すでにいくつかの魔法機械が設置され、お針子たちが機械の説明を受けている。
これら装置の発案者はどうやら転生者だという話だが、どう考えてもマーシャがいた世界とは別な世界からの転生者のようだ。
「シュン」
「あ マーシャ様」
「どうした?」
「あと1着で斑蜘蛛の糸が在庫切れになります」
「魔虹蛾の糸も後5着分です」
「分かった、今すぐに作成しよう」
「マーシャ様!」
「どうした?」
縫製デザイン工場として手に入れた館は1週間で内装工事を終え、その五日後には新たに雇い入れたお針子を含め30人態勢でフル活動しているが、在庫の資材がその分あっという間に消費されていく。
糸は現在5種類、カラーは20色、全部魔法で作られたものだが。
作業に使用する魔力から、お針子になる者も魔力量がそこそこ無いと務まらない。
染色器械も縫製機械や生地作成の器械も、魔法のある世界では電気の代わりに魔力を使用する。
それが当然であり、コストの面でも安くつく。
「この棒ですね」
「そうだ、この棒を真ん中まで下げると機械の速度が上がる、通常はこの位置で使用する事、一番下まで下げるとスピードは上がるが、生地がセットされていないと失敗して材料が無駄になるからな」
「はい」
最新式の縫製機械、これらを導入したのはマーシャの工場が初めてではないだろうか。
南東諸島連合国のドワーフ工房から仕入れた高価なものだが、その性能は今まで王国で作られていた生地と比べたら月とスッポンほどの差がついた。
細かい模様迄挿入できるし、特殊な魔鉱石をセットし魔法を込めると全体に付与魔法を込めることも可能だという。
「この部分に魔力を込める」
「ここですね、動きました!」
「シュンシュン」
「ダダダダダ…」
「できました」
「やり方は分かったようじゃな、では頼んだぞ」
新人のお針子、と言っても縫製だけではなく染色も糸作りも全員で行うのがマーシャ流。
誰か一人だけしか動かし方を知らないと、いざというときに対応できない。
「ダダダダダ…」
「ガシャガシャ…」
まだ新しい工場は始まったばかり、これからが肝心。
それにこの館の隣は聖教会もあり、いつ何時問題が飛び込みでやってくるかも分からないからだ。




