ハイエルフの3人
ハイエルフの3人
魔王国に編入されたエルフの王女様、立場的には本来マーシャと同じなのだが。
魔王国での立場は負けた国の市民は王族も含め奴隷ということらしい、30年前の魔王国動乱で周辺諸国を巻き込んだ暴動が起きた。
ダークエルフ領を治めるマルロイ・ダークエル公爵、彼がエルフ族の暮らす民をたきつけ暴動を起こさせ。
それを鎮めてまんまとハイエルフの住む地区をダークエルフ領に併合した。
表向きはハイエルフの王族が起こした反乱となっているが、住民の怒りを王族がいさめることができなかったのがこの動乱が起きた理由とされている。
「明日はお引越しですね」
「姫様お召し物を受け取りにまいりましょう」
「このお洋服ではいけませんか?」
「ちゃんと制服なるものがあると女神様から言われております」
「本日、お店の方で受け取る算段です」
「そうなのですか」
「そのついでに普段着も数着、手に入れませんとね」
「そうですわね、確かに洗い替えが無いといけませんね」
もちろん支度金はマーシャの懐から出すようにしてある、制服もそしてお付の従者が着る物も全てブティックマルシャールが請け負っている。
それらは特殊な魔法がかかっているわけではないが、一応何かあった時のために一着ずつ現在位置が分かるように付与魔法がかけられている。
「ここですわ、姫様」
「素敵なお店…」
「いらっしゃいませ、お洋服の件ですね」
「はいそれと何着か着替えも手に入れようかと思いまして…」
「かしこまりました、少々お待ちください」
数体のマネキンにはきれいな洋服が何着も着せられていた、魔王国では見たこともないデザインであり。
それらはチームマーシャだけではなく、この国のデザイナーが作成した服も含まれる。
普段着から制服までを作成し、販売している1号店。
このお店で売られている服は一般のお客様用の品がほとんどだ、新しくできた2号店の方はバトルドレスや冒険者用の魔法具を専門に扱うようになっている。
「お待たせいたしました、こちらが制服とメイド服ですね、他にも何着かご購入になるとか?」
「はい私達、着の身着のままこの国にやってきましたので」
当然だがかれらハイエルフのことはマーシャから全員が話を聞いている、店員はすぐに用意していた服を持ってきた。
それはエルフ族が身に着ける様式に沿って作成されたものだった。
「それはエルフ族の…」
「マーシャ様が文献を読んでデザインしたものです」
「すばらしい、まさか他国でこの模様のお洋服を手に入れられるとは思いませんでした。」
エルフ族の様式はそれほど変わっているわけではない、だが生地には独特な刺繍が施され、一目でエルフ族の着るものだとわかる。
全体にグリーンを基調とした色合いに赤と青の植物を模した図柄。
エルフ達が正式な場で民族衣装として必ず着ている物だ。
「きれい、この糸は…」
「魔虹蛾の蚕から取れた糸を使っています」
「どうやって手に入れたのですか?」
「王国の南にはこの糸を紡ぐために一番良い環境があるようです」
「生産方法は秘密ですけどね」
魔法があると糸を作るのに蚕を煮て糸だけ取り出すなどという、旧式の生産方法や面倒なことはしない。
魔法科学が発展すると原材料となる素材さえあれば魔法によって生み出すことが可能だからだ。
成分と様式そして過程などを分析し、魔法によって糸を作成する。
斑蜘蛛の糸も同じように魔法科学を応用し作られた素材だ。




