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男の子

男の子


それを見て他の3人の女子も急いで作り出す。

この馬車に乗っているのは全員魔法がそこそこできるので、皆 クッションの作成が上手く行ったが、前の馬車に乗る男の子達にはたぶんクッションの作成など無理だろう。


「おい、後ろの女子ども何か作ってねーか?」

「なんだろう?」

「敷物ですかね」

「そう言えば尻がかなり痛くなってきたな」

「男は我慢と根性だろう」

「それはおまえだけだろ」

「うるせー、じゃあどうすんだよ」

「この位置からだと何を作ってるかはっきり見えませんね」

「旅行なんて転移魔法使えればすぐなのにな」

「それが出来たらすぐ商売できるでしょう」

「そうか・・」

「転移魔法は上級魔法ですからね、僕らには無理ですよ」


15歳クラスで使えるのは中級魔法が関の山、よしんば転移魔法を使えたとしても遠くへは転移できずせいぜい1kから2k転移できればかなりの術師と認められる。

王宮や有名な魔法師の自宅などには魔法陣があったりして、指定の場所のみ転移が可能な場合もあるが。

そのためには王宮図書館で分厚い転移魔法陣を勉強する必要がある。

それに魔法陣を書くためには魔石を粉にしたインクが必要で、インク代だけで金貨数10枚が必要だとのこと。

何処の世の中も楽をするならそれ相応の対価がまず必要だということだ。


「休憩地まではもう少しだから我慢するしかないな」

「所であの姫様どういうつもりなんだ?」

「唯の旅行だろ?」

「いやおまえのとこについていくなんて、おかしいだろう」

「何だよ俺が袖の下でも使ったと?、そんな金無いことぐらい知ってるだろう」

「いやいやおまえに気があるとか」

「まってくれそれはありえない、俺のとこは子爵だぞ公爵や侯爵なら別だろうけど」

「あの姫様には今のところ恋愛感情は無いと思うぞ」


「何でそんな事わかんだよ?」

「15歳クラスの剣術自慢が全員勝てないんだぞ、男なんか必要ないだろう」

「そうそう、必要な男は全部下僕にすればいいんだから」

「所でこの先ジョルジョの領からは山賊出るんじゃなかったか?」

「ああ、だけど最近は兄貴達がかなり駆除したという話だから、まあそれほど危険は無いと思うけどな」

「それよりその先が心配だ」

「そうか・・カバネルのとこは親父さん行方不明だから・・」

「山賊の残りがカバネルのとこに移動していたら・・」

「どちらにしても姫様たちを危険な目には会わせられないからな」

「いやいや逆だろ、姫様がやり過ぎないように俺たちが前に出てがんばらないと」

「それはいえるな」

「昨年姫様は10歳クラスの卒業オリエンテーリングで魔狼相手に大立ち回りしたらしいぞ」

「強さで言ったら盗賊なんか目じゃないな」


「だから姫様が全部終わらせる前に俺らがいい所見せないとだろ」

「そうしないと良いとこなしで終わっちまう」

「確かにその通りだな」

「まあできれば何もない方がいいけどな・・」

「おまえビビってんのか?」

「おまえこそどうなんだよ」


男子が乗っている馬車は女子とは違い、戦うことしか頭にない者たちのしょうもない考えで終始していた。

確かにマーシャが前に立てば簡単に盗賊など粛清できるだろう。

そうなれば噂は姫様に守られた爵位持ちの家の男子という話になる。

最低姫様と一緒に戦ったという話にならなければ、実家から追い出され学院に通うこともできなくなる、そんな考えが全員の頭をよぎる。

3つ目の領で別れるジョルジョは早めに活躍の機会はなくなるが、4つ目の領からは盗賊もそうだが魔獣出没のうわさもちらほら聞く地帯。

日頃の剣術の腕が試されるいい機会なのだが、果たしてそのぐらいで済むのだろうか・・・

そんな男子たちの考えをよそに馬車は順調に、牧草地帯を抜けていく。


「わ~~見渡す限り牧草だね~」

「当分この景色が続きますよ、それを過ぎたら今度は牧場です」

「へ~」

「姫様は乗馬はなさるのですか?」

「騎士団で少し練習したが、この体の大きさではなかなか鞍の上で操るのもコツがいるな」

「そうですよね」

「うぬ まあ最近は何とか乗れるようになってはおるが、後で股にヒール魔法をかけないと大変なことになる、早く大きくなりたいものじゃ」

「あ~確かに」


15歳にもなれば女子の身長も160センチぐらいには伸びており、乗馬もそつなくこなせるが。

マーシャの身長は105センチ、ここ数日で5センチも伸びたが、それでも背が低いことに変わりはない。

もちろんそれが当たり前なので仕方のないことなのだが、転生前のスケ番だった時には174センチはあった、周りの男子からも一目置かれるのに背の高さもけっこう役に立ったのを覚えている。

前世のことを思い出しても7歳であれば100センチ超えていればそこまで心配することなどはないのだが。

この世界の女性の平均身長は175センチと割と高め、母親である第2王妃も177センチ以上あるので、あまり心配することもないのだが、マーシャには体格も冒険者になる資質として必要なのではと考えている。


「マーシャ様そろそろワラニー町につきます」

「うむ なかなかこの体にはこたえるな、クッションを作っておいて正解じゃ」

「この道具は明日も使えますかね」

「うむ 縫製は別として藁にかけた魔法とバリア、それに空気魔法はかけなおすようじゃな」

「そのぐらいならできそうですね」

「できなければまた痛いお尻を我慢せねばならん」

「もうそれは嫌です~」

「ふふふ」

「さあ皆さん降りますよ」


付き添いの魔法術の先生であるアルバートが先に馬車を降り全員に支持を出す。


「それではこれで、姫様をどうかよろしく」

「はいお任せください」


ここまで警備として付き添ってきた王宮騎士が5人、来た道を引き返す。

時刻は午後5時、王宮騎士達はこれから引き返して境界線にあたる首都守備隊の詰め所まで戻りがてら街道の警備を行うという。


「さあ今日の宿へ行きましょう」

「御者の皆さんは後をよろしくお願いします」

「はい、かしこまりました」

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