夏旅行
夏旅行
馬車は4台、人数のこともあり1台は丸ごと荷物や食料になってしまうが20日間の旅、本来ならば王族の場合護衛も30人規模でつけねばならないのだが、今回マーシャの意向もあり警備は最小限の人数で済ませるようにお達しが出ている。
特に伯爵領までは治安もそれほど悪くないため、護衛は数人それぞれの領に所属する騎士数人が交代で護衛をすることになっている。
「荷物はこれで全部か?」
「あと少しです」
「まって~~~」
「ん?やっと来たか」
「あなたたち遅いですよ」
「申し訳ございません」
今回従者となって付き添うミミーとロジーそれにシャーリー。
「だから早くって言ったのにー」
「なによ~あたしのせいだっていうの?」
「言い争いなぞ後にして早く荷物を積み込め!」
「は~い」
「これで全部じゃな」
「はい姫様、町の境界線からは王宮騎士に次の領まで護衛していただく予定です」
「分かった、それでは出立しよう」
「御者の皆さまよろしくお願いします」
「出ぱーーーつ」
1台の馬車に乗るのは6人前後3台に分乗し、最後の馬車は荷物用となった。
ジンジャー子爵領までは約1000kの道のり、馬車や馬には俊足の魔法や防御魔法をかけ。
事故が起こらないように最速で目的地まで行く予定だが、それでも1000kといえばかなりの距離だ。
1日200k時速20kで10時間、途中で馬の手入れかまたは交換をしなければならない可能性もあり。
アクシデントがあればその予定も大幅に狂うだろう。
今回使用した馬車はホロ付き1頭立ての馬車4台、御者も4人雇ったのでその分の食料も加算されている。
馬車はゴトゴトと音を立て、小刻みに地面の轍を拾いながら総勢19人を乗せまずはアルム市の郊外へと向かう。
次の街はレント市、王都には8つの市があり、レント市を出ればコールマン公爵領となる。
公爵領には3つの町があり、我々が通るのはワラニーという町。
農産物、特に畜産で有名な町だ、まずはここで一度馬を交換する予定。
この町までが初日の行程になっている。
ここまでの間は特に危険な場所はない、ほぼ道の両側は畑と牧草地のため。
農家の家が点在しており、道もなだらかだという話だ。
「チャッピー、あんたんとこの馬ってあれだよね、競馬だっけ」
「うんそう、競走馬や伝令用の早掛け専門の馬はほとんどうちの領から出荷してるよ」
「王宮御用達にもなってるよね」
「今期王様に献上された白馬は私の兄が育てた馬よ、早や駆けさせたら右に出る馬はいないと思うよ」
現在マーシャが乗る馬車にはメイド2人と次の公爵領で降りるチャッピー・コールマンそれに次のホブルート領のシャーリー・ホブルート、そしてリリアナの6人が乗っている。
シャーリーとチャッピーは歳も一つ違いで隣の領ということもあり、小さいころから交流があるみたいだ。
各領はそれぞれに特産品があり次のホブルート侯爵領は花が特産品だ。
一日目、早くも馬車の乗り心地がみんなの体へと影響してくる、いくらクッション代わりに布を敷いても、この時代の乗り物に対する工夫はそれほど進んではいない。
馬車の車輪は木製、強度を上げるために一部鉄を使用しているが。
21世紀(地球)の人間にはかなり堪える、この時代の人間もそこはほとんど変わらない。
マーシャはこの状況が後四日続くことを考えると少し憂鬱になってきた、だがそれでは馬車での旅をする意味がない。
「馬車の乗り心地とはみんなこんな感じなのか?」
「マーシャ様乗り心地はやはり王族御用達の上級馬車の方がよろしいかと思います」
「上級馬車には車輪と車体の間に板バネを使用した緩衝装置を付けておりますので、民間で利用されているこの馬車と比べたら乗り心地は月と鼈です」
「やはりか・・・」
「それでは魔法で少し工夫してみるか・・」
何もないところへ魔法をかけ、お尻を楽にすることも可能だが、空間魔法でお尻を振動から守るのと布のようなものに魔法をかけた場合の強度は、布に魔法をかけたほうが断然強い事は、今までの実験で立証済みだ。




