ペアの部決勝
ペアの部決勝
とうとう大会最後の種目、ペアの試合時間が迫ってきた。
双方のペアに不調な様子は一つもない、逆に4人共に気力に満ちており、早く戦いたくて我慢できないと言った所だろうか。
「ようやくここまで来たわ」
「そうね、絶対に負けないから」
「それはこちらも同じ」
「いつもの通りには行かないぞ」
【これよりペアの部決勝を開始いたします、双方開始線まで下がってお待ちください】
アマンダもリンダもバトルドレスはマーシャ謹製、だが双方身に着けている魔法具には若干の差がある。
アマンダの方がやや財力は上の様だ、その差で勝敗が決まるとは言えないが。
トラムとフォルダンでは魔法具でかなり差が付いているので、こちらの勝敗はトラムの方が有利と見た方が良いだろう。
身体的には5センチの身長差や筋力の差はフィジカル面でフォルダンの方に分がありそうだ。
【はじめ!】
「フィジカルアップ、プロテクション、スピード、アタック」
「バリア、プロテクション、アタック、ディフェンスアップ」
それぞれに魔法をかけて行く、一歩早く動いたのはリンダだった。
トラムがフォルダンとかち合うと同時に敵陣へと切り込もうと後衛が自ら飛び出す。
勿論それを待ち構える為にアマンダはディフェンス系魔法を先に掛けていた。
「ガイン!」
「グ!」
「バシュ!」
「スパン!」
「早いわね」
「そっちこそ」
「パシンパンパンドン!」
「ハイハイハイ ヤ!」
どう考えても前衛より後衛同士の攻撃の方が目立っている。
どちらも退けない勝負であり、この勝負でお互いの未来が決まるのだ。
「よそ見をするな」
「それはお前の方だろ」
「ギャインガンドン!」
「大剣は嫌いなはずではなかったのか?」
「嫌い?俺はお前が大剣を使うから他の剣にしただけだ」
「ガン!」
「同じ土俵だと負けるからか?」
「俺達の勝負は五分五分だった筈だ」
「同じ剣なら分が悪いのはお前の方だろう」
「先日まではな」
「バキン ガキン」
「やるな」
「俺が何時までも同じだと思うなよ」
「それはこっちのセリフだ」
「グラビティアップ」
「ズズッズ…」
「グ…」
「バギャン!」
トラムとフォルダン、この二人はライバルでありここまでの対戦は387戦156勝156敗75分けだ。
トラムは二人の勝負では大剣を使用せず、小型の盾と普通サイズの剣を使用する。
たまに槍を使用することもあるが、やや守りを重視した武器を選ぶ。
対するフォルダンは大剣のみを使用し、一応マルソー流大剣術と言う流派がある。
貴族のほとんどは家紋と同じように剣術や魔術の流派を持っていたりする。
それぞれに良いところがあるので、ここではわざわざ比べないが、マルソー流は大剣と言っても大振りを得意にせず割とコンパクトに構えるのが特徴。
最初の構えは中段から下段寄り、振り下ろしよりも突きから防御へと変化する。
大剣を大きく振り回さないと言う事は隙ができにくいと言う事になる。
トラムもそれを知っているので、二人での試合では盾剣を使う事が多かった。
王家の剣で大剣を使用する場合、今までは膂力が及ばず大剣に振り回される可能性が高かったトラム。
だがこの試合では魔法具の力もあり、マーシャから借りた大剣ならば今迄より楽に振り回すことが可能だからだ。
「ガイン!」
「慣れない剣で勝とうとは」
「一応訓練はしているぞ」
「そうか、ならば手加減はすまい」
「そんな余裕があったのか?」
「いうな」
「甘く見るな!」
「バチュン!」
どうやら二人の戦いは決着をつけるのに時間がかかりそうだ。




