ジンジャー家から
ジンジャー家から
辺境を守護するジンジャー子爵はそれほど長い歴史を持っているわけではないが先代が王から下賜された土地を守る剣に秀でた人物だった、その子どもは3人、長男は15歳次男は11歳そして娘は10歳。
3人共にアカデミーに修学させており、長男は剣技もかなり上達していると聞いている。
そんな時ジンジャー家からアカデミーに一通の手紙が送られてきた。
「姫様申しわけございません実家から帰郷の要請が入りました」
「ふむ、どうした?理由は書いておらんのか?」
「どうやら父が行方不明になったと言う知らせが入りました」
「それは大変じゃな、わらわとの約束よりそちらを優先するがよい」
「有難うございます」
季節はちょうど夏に入る時期5日後から一月は夏休みに入るという、この頃には15歳クラスのほぼ60%約130人がマーシャの従者かまたはメイドと化していた。
「そう言えばおぬしの実家は涼しい所と聞いていたが?」
「はい避暑には適しており泉と湖の風光明媚な田舎にございます、さらに温泉もございますが」
「お 温泉か・・・・」
「姫様いけません、そのような場所、行くには相当な人数が必要になります」
「かまわん夏じゃろう、休みじゃろう、わらわが何処に行こうがおぬしらの指図は受けん」
「だめです~~~」
メイドであるフランや学友のカトリーヌから反対の意見が相次いだが、マーシャには誰の言葉も耳には入らなかった。
「マーシャ様ジンジャー子爵領へいくのなら私も従者として付いて行きます」
「良いのか、おぬしも休みは実家へ帰るのではないのか?」
「いえ、一度従者になったからにはこのリリアナ・シュローダー何処までもお供いたします」
鼻息荒く最初にお供を宣言したのは、メイドのフランではなくリリアナだった。
さらに負けて従者となったジョシュとロッドも同行すると言い始めた。
「そうかそうか、ではリリアナに命ずる、まずはそこがどのような場所か調べよ、そしてカバネルよおぬしの故郷の地図があれば拝見したい、用意できるか?」
「はっ!すぐ持ってまいります」
結局反対する事はできず5日後総勢15人でジンジャー子爵領へ行く事になった。
参加者
マーシャ・オースティン・アルフレア 8歳 王家三女
クレア・シルベスター 25歳 マーシャ付きメイド
フラン・エルウッド 10歳 メイド兼学友
アルバート・コンタロト 39歳 担任 元A級冒険者
☆カバネル・ジンジャー 15歳 子爵家長男 同じクラス
ジョシュ・リーゼンバーグ 15歳 男爵家長男 同じクラス
ロッド・アダムス 15歳 騎士団所属 同じクラス 空撃隊見習い副官の弟
リリアナ・シュローダー 14歳 公爵家次女 同じクラス
カトリーヌ・バイデン 15歳 ドワーフ商会 長女 同じクラス
シャーリー・ホブルート 15歳 ホブルート侯爵家次女 同じクラス ②コールマン領の次の領
ロジー・ホーリーウッド 15歳 エルフ族 同じクラス
チャッピー・コールマン 14歳 コールマン公爵家4女 同じクラス ①学院から次の領
トッド・トライデン 15歳 トライデン男爵家 長男 ④隣のクラス、ジンジャー領の手前の領。
ジョルジョ・プラチナム 15歳 プラチナム伯爵家 3男 ③隣のクラス、ホブルート領の次の領。
ミミー・オルレオ・アンドルトン 15歳 アンドルトン騎士爵家 長女 隣のクラス
クレアとフランそして担任のアルバート以外は全て従者、マーシャに負けた者達で構成することになった。
この人選には行く場所への都合も関係していた、たとえばトッドはジンジャー子爵領へ行く手前の領の子息であり、殆どが学院からジンジャー子爵領への道筋までの途中の領が実家である。
各自治領は境界線で出入りをきびしく監視している場合があり、中には許可が無い場合は立ち入りが出来ない領もある。
その為、従者になった子息令嬢達の帰省を利用し同行することで煩わしい許可制限を短縮しようと言うわけだ。
全日程20日間、ジンジャー子爵領までは5日かかるという。
途中4箇所の境界線を越える為その手前の領で数人、従者になった子息達はお役ごめんとなる。
15人の一行は11人にまで減るが、もしかしたらさらに増えたり減ったりする可能性も有る。
公爵家や伯爵家は姫様が通ることで護衛を買って出る騎士団もいるかもしれない。
それにリリアナの調査によるとジンジャー子爵は魔物に襲われた村の調査に向かい消息を絶ったという事が判明した為、近く近隣の領主達で討伐調査隊を結成し派遣するという話も出ている。
そこへ姫様自ら赴くのだ、この時とばかりに参加する強わものが出てくる事は予想の範囲内だろう。
実は姫様そっちが本命だったりする、生前読んだ漫画や小説に出てくる魔物、ゴブリン、洞窟とくれば=ダンジョンという図式はどうしても冒険心をくすぐられるのは仕方の無いことだ。
それに少し前の魔狼出現のことも有る、マーシャの未来予知スキルはまだ未熟だがジンジャー子爵が死ぬ未来予想は出ていない。
そう、捕らえられていて助けだせる可能性があるのだ。
だがそれを知って将軍クラスに進言したとしても、すぐには救助隊を組織する事はできない。
どちらにしても調べなければならないのなら、自ら赴き確実に証拠をつかんでからの方が信憑性も増すだろう、まあ見つければ自ら解決するのもやぶさかではないのだけれどね。
この事は王様にも知らせてあり、本来一番下の姫がすることではないが、すでに北の砦に出張中の王宮騎士団隊長である疾風のバイロンには知らせてあるため5日後には10人からなる護衛隊を指揮してマーシャを向かえる手はずは付いている。
今のところ北の砦周辺での戦闘は無い状態、もし戦争が始まればマーシャの旅行も中止になるが。
国境線は今の所安定している為バイロンも砦は部下に任せてマーシャの護衛に専念できるということらしい。
「姫様持ち物はこれでよろしいでしょうか?」
「うむ、あまり多いと運ぶのに大変じゃ、できるだけ少なくして皆の負担を減らすよう心掛けよ」
「かしこまりました」




