王様ペアVS第二王子ペア
王様ペアVS第二王子ペア
とうとう五回戦最後の試合、この試合で明日の決勝へと出場するペアの部のもう一組が決まる。
先ほどの王様の試合を見た者ならば圧倒的に王様へ有り金をかけるだろう。
だがトラムとリンダがここ数日でかなり実力を上げて来たのは誰もが知る所。
それにリンダは必ず第二王妃へターゲットを向けるに違いない、という事は第二王妃が肉弾戦に対してどう対処するのかがこの試合の見どころとなるだろう。
【少々お待ちください現在グラウンドの整備を行っております】
アマンダとリカルドの試合で地面がかなり荒れてしまったようだ、当然のことながら試合はちゃんと整地してから行われる。
約20分がグランドメイクに費やされる、既に日は落ち始め午後4時を回っている。
天候は晴れ、時折雲が流れて行くが雨が降るような事は無いだろう。
【お待たせいたしました、それでは本日のメインイベントとなりました、第五回戦第二試合を行います】
王様のペアと第二王子のペアが、審判のいる場所へと進んで行く。
「わー」
「成長具合を測るにはちょうど良いな」
「はい王様」
「父上よろしくお願いいたします」
「うぬ」
「私からもよろしくお願い申し上げます」
「はい、頑張りましょうね」
【両者開始線までおさがり下さい】
いよいよ本日のラストバトルが始まる、誰もが固唾を飲んで見守る会場。
親子対決はどちらに軍配が上がるのだろうか?
【始め!】
「ロイヤルガード、ロイヤルアシスト」
「王家の守り、王家の力発動」
「フィジカルアップ極上、アシストアップ極上」
「ディフェンスアップ、パワーアッツプ、ホーリークロス」
前回までのアシスト魔法ではなく2ペア共に隠しておいた魔法や武具を使用するようだ。
王様も武具と盾以外に指輪や腕輪が増えている、もちろんリンダ嬢もトラム第二王子も武具が変更されている。
王様の場合は先ほどより魔力増加に振り分けられた魔法具を、第二王妃の方はそのままのように見えるがグローブを新たに装着するようだ。
リンダ嬢は靴を変更し髪留めを装着している、トラムは盾をしまって大剣を取り出した。
トラムの戦い方からは想像つかないが、その剣はマーシャから借り受けた物だった。
「行くぞ!」
「うぬ」
「ザン!」
「ガガキン!」
「グッ!」
「なんだその剣は…」
「マーシャから借りた、サザンテラシスと言うらしい」
「良い剣だな」
「でしょう」
「ギャイン!」
どうやらマーシャが貸し出した剣はかなりの能力を秘めているようだ。
サザンテラシス:南部魔鋼鉄を使用し1千に近い魔法を込めたと言う意味を持つ、もちろんそんな魔法を込めたならとんでもない剣が出来上がるのだが。
重力魔法やアシスト魔法は全て上級魔法で付与されており、7色の魔石をふんだんに使用したために。
本来の南部魔鋼鉄の色が虹色に見えている、表面にそういう加工をしてあるのだ。
柄にも魔石が装着されており、付与魔力を数倍にも上げてあるので1千と言う文字を頭に名を付けたらしい。
「そうか、なるほど」
「手加減は無しだ父上」
「言うようになったな」
「こっちも行くわよ!」
「あらあら、楽しみだわ」
「ダッ!」
後衛のはずだったが、トラムの攻撃が王様に通用すると見て、リンダは第二王妃へと攻撃の矛先を変更したようだ。
「バシッ パシュン パンガン!」
「ハ!」
「なかなか」
「そっちこそ」
「負けませんわよ」
「ヤ!ハイ!」
「パパパ バシン!」
どうやらこちらも本格的にやり合う様子。
魔法の戦いではなくどっちらも肉弾戦と言う、決着が付きやすい戦闘で勝負を決めるようだ。
数分後…
始めはすぐに決着がつくだろうと思っていた両者の戦い、蓋を開けてみたら持久戦の様相を呈してきた。
魔力はどちらも同じぐらいか、だがどちらのMPも減りながらすぐさま補充されて行くように見える。
逆にHPの方は徐々に差が出始めた、オートリペアの魔法が付与されている武具を幾つ身に着けているのかがその勝敗を分ける事になりそうだ。
「バキン ガイン ガイン」
「ドン パン バシン」
女同士の戦いはまるでハリケーンの様、双方の攻撃がまるで嵐のようにぶつかり合う。
男同士の戦いの方が迫力があるのだが、女同士の戦いしかも接近戦はある意味男から見ると目の保養になる。
観客席からは黄色い声援が第二王妃とリンダ嬢に向かって浴びせられる。
「ワオー」
「ピーピー」
「すげー見たか?」
「みたみた」
第二王妃の豊満な胸が縦に横にと揺れる度、リンダ嬢のすらりと伸びた足を受け止める。
第二王妃はどちらかと言うと防戦に特化しているように見えるが、その動きは小さいため疲れはほぼなさそうだ。
逆にリンダからの攻撃は既に千発を超えるのではなかろうか?どんなに拳を叩き込んでもさらりと受け流す第二王妃。
王族の戦いと言うにふさわしい、観客たちの目を奪うような光景が目の前で繰り広げられている。
「ギャ キン ガン」
「そろそろか…」
王様が至高の盾を取り出した、だがこの盾を出すと言う事は守りに入ると言う事。
「ロックウォール」
「ゴゴゴゴ」
「換装イーグルソード」
トラムは土魔法で壁を作り出す、しかも壁は不規則にまるで盾のように。
どうやら土壁を盾にして死角を作り出し王様の盾を阻害してしまおうと言う事らしい。
そして大剣の動きまで封じる効果もある。
「これは…」
「父上 お覚悟!」
「面白い受けて立つ」
収納魔法で取り出したイーグルソードは双剣であり長さは50センチにも満たない。
速さとクリティカル率、そして命中率にアシストが付いている。
「行くぞ!」
「バシュン」
魔法で作った壁、その高さは1メートル80前後。
トラムの身長とほぼ同じぐらい、その陰に隠れて王様へと攻撃を入れる。
当然のことながら至高の盾を展開している王様にはそう簡単に攻撃が入ることも無いのだが。
「カイン カイン」
「ザシュ!」
「なるほど、こういう事か」
双剣にした意味、それはイーグルソードの特性にある。
この剣は投擲にも使用できる、その場合自動で戻るように魔法が込められている。
至高の盾は攻撃に対して絶対防御と言う、こちらも自動で攻撃を防御するものだが、同時に2か所から攻撃された場合同時に裁くことができない。
大剣での攻撃は全て無効化されてしまうのだが、双剣で2か所からの同時攻撃ならばどちらか一つの攻撃は必ず通る。
「そう言う事か」観客
「しかも土魔法で作った壁のせいでどこから攻撃が入るかわからないようにしたのか」
「第二王子もやるな~」
徐々に王様へと攻撃がヒットして行く、ダメージはさほど入らないのだが、ひと試合に定められた時間が終わろうとしている。
【終了!】
どうやら判定迄もつれこんでしまったようだ。
「ここまで長引くとは…」王様
【勝者 カイル第二王子・リンダ様ペア】
どうやら第二王妃とリンダ嬢の戦いは引き分けたようだが、王様とカイルの戦いは双剣を取り出した時点で決まった様だ。
そう今回の試合はポイント制でもある、一気にかたを付けるのならばでかい攻撃力で相手を倒すのが一番早い。
だが双方の力が拮抗していたならば相手に有効打がどれだけ届いたのかがカギになる。
終了前の5分間でカイルが王様に直接攻撃を入れた事により、ポイントで10%上回った。
「良い作戦だった」
「ありがとうございます」
「楽しかったわ」第二王妃
「こちらこそ」リンダ
ペアの部5回戦最後の試合が終了した、これで明日の対戦は全て決まった。




