王様VS市井の貴族
王様VS市井の貴族
どちらが勝つかというより何処まで王様と戦う事ができるかという予想で持ち切りになった。
当然の事だろう、もし王様に何かあったらいくら正々堂々と言った所でそれが守られるか。
いやいやどう考えても何をしても一線を超える事は出来ない試合。
だが仕組まれていたとしてもみすぼらしい試合になるのは避けないといけない、それこそ王様に対しての侮辱ととられかねない。
まあ王様を含め王族たちはそこまで考えていない、なにせ魔法のある世界での試合。
王様の身に着けた魔法具には再生の魔法具などと言う物も有ったりする。
王家に代々伝わる指輪であり、それを身に着けている者は頭さえ無事ならば3回まで復活することができると言う。
そんな魔法具を身に着けているのだ、しかもこの試合会場でそこまでのケガを負う事はあり得ない。
要するにそこまで行かないように魔法で会場ごと守られていたりする、そうでなければ判定の腕輪を身に着ける意味がない。
攻撃回数や攻撃力を積算しMPやHPが残り10%の所で勝敗の判定を行うのだ。
命をかけてまで殺し合うなどと言う事はあり得ない。
もしそう言う死を求めた魔法を使用して戦ったとしたならば、即将軍達が介入するようになっている。
会場ごと爆発させるような威力のある攻撃が有れば、それこそマーシャが黙っていないだろう。
「お手柔らかにお願いします」
「それはこちらの方であるぞ、だが手加減しては面白くない、まずは全力で戦おう」
「そ そうですね、では手加減無しで」
【双方試合開始線までおさがり下さい】
「うむ」
「はい」
「ワー」
【始め!】
とうとうペアの部四回戦最後の試合が始まった、結果が見えているとしても王様の強さがどのくらいなのかを知ることができる試合だ。
「ロイヤルアシスト、ロイヤルガード」第二王妃
「王家の守り発動」王様
「リペア、フィジカルアップ、プロテクション、シェル、マインドアップ」マーサ
「2重結界、重力半減、纏えよ魂・極獣」コリンズ
王様がゆっくりと中央へと歩き出す、まるで相手が攻撃してくるのを待ち構えるがごとく。
準備の魔法を付与し終わったコリンズとマーサ、他の選手とは少し毛色の違った魔法を使う。
遠く東の半島で生まれた獣剣術と言う、剣に獣を纏わせる付与に分類される魔法を使う。
「参る!」
「受けて立つ!」
「ギャイン!」
王家に代々伝わる大剣エルグラム、その剣は大きさもあるがそれほど特殊な剣ではない。
但し王家に代々伝わるにはそれなりの訳がある。
数百年前この剣で地竜を退けたと言う伝説が王家の記録に残されている。
この剣は魔力を込めると重さが増すのだ、土属性の地竜であれば外殻が硬くこちらの攻撃が中々通らない。
重さはイコール攻撃力に変化する、100kが200k1000kになったならばその攻撃力は計り知れない。
その代わり重くなった剣を扱える力が必要になるのだが、もちろんそれを解決するための魔法具があるからこそ装備可能となっている。
「グアウ」
「おー耐えたか、だがそのぐらいではかすり傷も付けられぬぞ」
「お 重い…」
コリンズの剣は大剣と言うより刀に近い、だがその長さは2メートルほどもある。
この剣は斬竜刀と呼ばれている、東方由来の剣。
そこに獣タイプの魔法を付与することで攻撃中に敵めがけて追加攻撃があるのだが。
あまりにも重い攻撃、それを受ける為に左手に付けた籠手で抑えなければ押し込まれてしまう。
刀に纏った魔法の威力がいつの間にか、エルグラムの重さでかき消されてしまった。
「ジャリン」
「ズ ズ ズサッ!」
コリンズはたまらず後方へと飛びのく。
「二の手を拝見しよう」
「纏えよ魂・極風」
魔法でアシストされた刀、今度は風を纏ったようだ。
剣に風を付与したことで全体のスピードが3倍上がる。
そしてコリンズは躊躇なく王様の懐へと飛び込んで行く、だが王様は中段に構えたまま動かない。
コリンズの動きは先ほどより数倍速くなった、残像を残しながら右に左にフェイントを入れつつ王様の懐へ飛び込む、だがコリンズの姿は王様の目の前からかき消えた。
(勝機!)
「シュン」
「ガキン!」
「ウッ」
コリンズの姿が現れたと思ったら、いつの間にか王様の背後に。
そして王様の背後から、断竜刀が振るわれ王様万事休すとなるように見えただろう。
普通の相手ならこれをよけるのは難しい、だが王様はいつの間にかインベントリーから国宝とも言われる盾を背後に展開。
その盾は敵の攻撃を自在に受け流す、しかも手に持っているのではなく盾自体が宙に浮いていた。
「まさか…」
「至高の盾と言う、これ以上の魔法具は私の知る所まだなかったと思う」
至高の盾、もちろん王家に代々伝わる最上級のお宝。
この盾には魔法が5つ付与されている、敵の攻撃を自動追尾し自ら動く。
DF力は+500、使用するにはMPを消費する為、剣士が使うにはMPを増やす訓練をしておかないとすぐに使用できなくなる。
「そんなものが…」
「だがこれはMPの消費量が激しくてな」
「ならば押し通すのみ」
「ガガガガガキンカキン…」
至高の盾を使用している間、王様はこちらからの攻撃ができない、何故なら盾が邪魔で大剣を振るう事が出来なくなるから。
問題なのはMPが何処で途切れてしまうかなのだが。
「クッ」
「ビュンビュンガガガ」
いくら攻撃しても全部弾かれる、既に2つ目の魔法・極風も切れてしまった。
「サンダーアロー」
コリンズの攻撃が途切れた隙を狙い、後衛の魔法職であるマーサが攻撃魔法で王様を攻撃するのだが、大剣エルグラムがそれを吸収してしまう。
「バリバ バリ…」
「この剣は一応土属性、重さに対してサポートが付くだけではない、雷に対しては100%耐性がある」
「はあはあ」
「もう息切れか」
「くっ」
「では行くぞ」
王様は剣を持ったまま前方に至高の盾を展開、そのまま一気に前進し。
既に余力を失ってしまったコリンズめがけて突進する。
その威力はコリンズだけでなく後方にいてサポートしていたマーサまで巻き込んで吹き飛ばした。
「ぐあっ」
「キャー」
「ドガン!」
【勝者王様・王妃様ペア】
「やり過ぎたか」
「あらあら」王妃
「パーフェクトヒール」
「シュイン」
吹き飛ばされたコリンズペアが一瞬で回復する。
「あ 有難うございます」
「大丈夫?」
「あ はい」
「わーオオサマー」
ものすごい声援、王様もそれを聞いて手を振る。




