リカルド・ロキシーペアVSカイル・ブレンダペア
リカルド・ロキシーペアVSカイル・ブレンダペア
ペアの4回戦第二試合は王族ペア同士の戦いになった、まあ半分以上が王族のペアなのだからいずれ王族同士が戦う事になるのは必至。
問題なのは第一王子のカイルがCクラスダンジョン攻略でどこまで力を付けて来たのか?
そして先ほどまでマーシャと共にサザールダンジョンを攻略していたロキシーが何処まで強くなったのか。
ダンジョン攻略で対人戦が有利になるかどうかは解からないが、戦いに置いて使える作戦の幅はかなり広がっているだろう。
王国としては第一王子のペアに花を持たせたいところだが、どうやらそううまくはいかない予感がする。
【お待たせいたしました、第四回戦第2試合を始めます】
前の試合で荒れた会場は魔法師が土魔法で綺麗に直していく。
爆心地のように崩れボコボコになった試合会場、さすがに魔法職の全力魔法が炸裂すると会場に張られた結界内は無事では済まない。
地面はわざと壊れても良いように不壊の魔法を使用していない、地面は土魔法を使用できるようにわざと魔法をかけていないのだ。
ある程度の破壊は試合の運行上認められている、そうでなければ見ていても面白くなくなってしまうだろう。
【カイル第一王子様そしてペアを組むのはお妃のブレンダ様、対するはリカルド第三王子様と魔王国のロキシー第二皇女様です】
2組が試合会場の中央へと進み審判から注意事項の説明を受ける、腕には攻撃された回数とHPMPの残量を計測する魔法具を装着する。
先ほどの試合もチャッピーのMPが枯渇し2人のHP残量が10%を割り込んだ事で試合の勝敗が決着した。
要するにそれ以上戦っても一方的になり試合ではなく殺し合いになってしまう。
それでもかなり切迫した迫力のある試合が見られる。
「では両者、試合開始線までお下がりください」
「うぬ」
「はい」
中心から2組が約10メートルずつ下がると、それぞれに最初のアシスト魔法をかけて行く。
「プロテクション、シェル、バリア」
「スピードアップ、フィジカルアップ、パワーアップ」
魔法職だけでなく前衛である戦士も自分でできる魔法は仲間に頼らず事前に掛けて行く。
その少しのMPが勝敗を分けたりすることもあるからだ。
【始め!】
「わー」
王族同士の戦い、第一王子はもちろん大剣を使用するが、第三王子は通常の剣と盾を手に持っている。
「行くぞ!」
「来い!」
2人が一気に距離を縮めると最初の攻撃が双方の剣と盾に吸い込まれて行く。
「ガイン!」
「グッ」
「俺の一撃を受けられるようになったか」
「いつまでも子供じゃない」
「さあそれはどうかな」
「ザ ザッ」
「ガンガンガン」
カイルが力に物を言わせてリカルドの盾を吹き飛ばす勢いだ。
まともに受けてはいくら魔法具の盾でも壊れてしまうことがある、一応ソードマスターの称号を手に入れたリカルド。
まっすぐではなくやや斜めに受けて、できるだけ大剣の威力を受け流している。
そして隙をついては剣でカイルの胴体へと攻撃を突き入れているのだが、それを嫌っているのかカイルはすぐに大剣でリカルドの攻撃を避けるように体を入れ替えるのだ。
「キャイン!」
「フン!」
「まだまだ」
カイルがなにやら策を実行に移すそぶりを見せる、そして自分に防御魔法をかけた。
「パワーアップダブル、カバードグラビティ」
「ズズズ」
どうやら自分自身の重量を増やして相手の攻撃を全て弾き返してしまおうと言う魂胆。
「行くぞ!」
「ズドン!」
地面に大きな足跡が付き、大剣を構えたまま、真っ直ぐにリカルドへ向かって突き進む。
その威力はリカルドの盾を破壊するがごとく襲い掛かる。
「バギャン!」
「ズズズ…」
さすがにこれはまずいと感じたリカルド、カイルの攻撃が当たる寸前にわざと後ろへと体をそらしていた。
「クルクルクル」
「スタッ」
「ウッ」
「ヒール」
「すまない」
「まだいけますか?」
「ああ俺にも重量魔法をかけてくれ」
「ハイ」
「パワーアップエクストラ、グラビティアップ、それからもう一つサンダーグランツ」
重力魔法を身に纏えば筋力を上げなければ体を動かすことも難しくなる。
相手がそうしたならばこちらも同じ魔法で対抗する、それは当然のことだが、それではまだ足りない。
だから雷魔法を纏う事で攻撃時に電撃を喰らわせようと言う物だが、果たしてうまく行くのだろうか。
「行くぞ!」
「ザシュン!」
2者が再び中央で激突するとカイルに掛けられた重力魔法が何故か消え去った。
「なんだと!」
カイルの重力魔法は中級クラスの物、確かに相手が同程度の魔法を纏っている場合ならば魔法力としては同等なはず。
だがさらに敵が同じクラスの別系統の魔法を纏っていた場合どうなるのだろうか。
カイルの大剣は南部地区の青魔鋼と言う金属で作られた、一応魔剣の一種なのだが。
その力は切れ味と重さに重点を置いている。
付与された魔法は切れ味と修復、そして敵を怯ませる(ブレイクハート)魔法を付与してある。
強い敵には効果はさほどないが、それでも一瞬敵の動きを邪魔することが可能だ。
だが…ロキシーが最後に付与した雷魔法はいつの間にか上級の付与魔法に進化していた。
まさか雷魔法で体が麻痺してしまうとは思ってもみなかった。
「何?嘘でしょ」
「ぐ 動 か な…」
「リムーブマジック、リペアメントプラス」
慌ててブレンダが補助魔法を飛ばすが、それは少し遅かったようだ。
「これでどうだ」
「ズドン」
リカルドがさらに攻撃を加える。
「ズズズズズ」
重力魔法が完全に解けてしまい片膝を付くカイル、その3メートル後ろにはブレンダがいる。
「ダークウィップ、ストーンレイン、アイスジャベリン」
リカルドがさらに攻撃を加えようと剣を構える、だがその隙にロキシーから魔法の攻撃が敵陣目がけて襲い掛かる。
勿論全て上級魔法、それは中級魔法しか扱えないカイルとブレンダには防ぎようが無かった。
特にアイスジャベリンの威力はすさまじく、2人が直線状にいる為、後ろにいるブレンダを守るには避ける事も出来ない。
ほぼ全ての攻撃魔法をカイルが一人で受け止める、これでは回復魔法も追いつかない。
「え、嘘でしょ」
「バシュバシュバシュ ガガガ バキン」
「グハッ!」
【勝者リカルド・ロキシーペア】
「ワー」
大番狂わせと言っても良いだろう、まさか第一王子であるカイル・ブレンダペアに勝つとはマーシャ以外には誰も予想できなかっただろう。




