海王城の宴
海王城の宴
その大きさもあるが、海の中といった場所で行われる宴は想像を超えていた。
海王城へと最初通された時は王族専用の広間だった、急かしてしまった事もあり盛大なお出迎えと言う形は今回が初めてだろう。
しかも王妃の帰還と言うこの国で一番待ちわびていた出来事なのだ。
『すごいと言うより、目が回りそうじゃ』
『まるで色の饗宴です』
目の前には色とりどりの魚人族だけではない、彼らが操る魚の群れも数万匹。
それらの魚は目の前にも切り身として置かれている。
どうやら魔法がかけられており数メートルから下には海の流れを制御してある為、切り身が流れてしまうと言う事は無さそうだ。
『マーシャ殿、改めてお礼申し上げる』
海王が自ら頭を下げる。
『いやいやこちらは仲間の救出でこうなっただけじゃ、お礼などはいらぬぞ』
『そんな事はござらぬ、王妃を契約から解き放っていただいた、それはどんなにお礼を申し上げても足りないぐらいの事』
『そうです、私も諦めていたぐらいですから』
『まあそれは良かった、甘んじて受けて置こう』
『そう言っていただけると有難い、では我らから少なからず礼を尽くさせていただくことにしよう』
「パンパン」
海王が手を叩くと、従者達が次々に運んできたのはお宝だった。
その数、数百個。
海の中で取れる鉱石、宝石、そしてこれまでに沈没した船から収集した武器や魔法具。
大きな商船が1艘丸ごと運んで来たようなお宝の数々。
『こちらをマーシャ殿に受け取っていただきたい』
『良いのか?』
『少ないぐらいだが、あまり多いと持ち運びに困ると思ってな』
『確かにそうじゃな』
どんなに有ってもストレージにしまう事が可能なマーシャだが、別にお宝が欲しくて来たわけではないので、これ以上出て来る可能性を考えマーシャはお宝を持ちきれないと言うようにふるまう。
(マーシャ様?)
(あまり持ち帰っても悪いじゃろう)
(そうですね)
ロキシーもこのやり取りでマーシャの考えが分かったようだ。
『それよりこの宝じゃが、おぬしらに託そうと思うのじゃが』
海結界の腕輪:海王国の結界を操作できる、神又は王のみ使用可能、DEF+100AT+100HP+100。
『良いのか?』
『妾は明日にもこの地を去る、そうなるとこれは必要が無い物じゃ、それに鑑定すると使えるのは王と神だけという事じゃ』
『確かにこのような物が人族に渡っても使える品ではないかもしれんが…』
『多分これを使えば結界が無くなり人族との交流も可能になるのじゃがな』
『心配はわしも感じている、だがその頃にはマーシャ殿がなんとかしておるのではないか?』
そう言われて少しこそばゆい感じだが、あまり期待してもらったとしてマーシャには未来の事までは分からないし断言もできない。
『それは妾にもわからぬ事じゃ』
『結界が無くとも、それほど心配する事は無いと思うけどな』シャーズ
『シャーズ、マーシャ殿と一緒に行動して少し変わったか?』
『変わったと言うより、こうなるのが当たり前なんだろう?』
『父上、この度の攻略 我ら姉弟には貴重な経験となりました、全て姫様のおかげです』
『そうか、ならば迷うまい、但し解放の時期はわしと王妃で決める事にしよう』
(段階を踏まぬとまずいかもしれんでな)
(そうしてもらうと有難い)
結界とは言っても全部解放してしまうのは時期尚早だ、今までは安全な海の中だったが。
魔族も人族も簡単にこの海へと侵入することが可能になれば、戦争とはいかなくとも争いが起こる可能性が無いとは言えない。
どの種族も己の繁栄を考え行動する、双方が得をする交流ならば歓迎するが。
己だけの利益を追求する種族を相手にした場合、そこには最悪の結果を招いてしまう事まで考えられる。
この世界はまだまだ不安定だ、特に魔王国にはそう言った不安が幾つも残っているように感じる。
サザールダンジョン攻略完了
この後マーシャはアルフレア王国へと帰る事になるのだが、その前に一仕事しなければいけない。
それはグラッダの捕縛、命を奪う事まではしないマーシャだが、今回だけは逃げることなどできないと言っておこう。
この続きは3か月後までにまた書き溜めて掲載しようと思います。
武術魔術大会のその後も書かないといけないので、それまでしばらくお休みです。
それでは皆様次回をお楽しみに^^




