聖水竜(ウンデチィーヌ)
聖水竜
マーシャ達が到着する数時間前、サザールダンジョン100階層に招かれざる客が訪れていた。
その姿は黒、いや真っ黒い霧を纏った邪神、彼は聖水竜を操り女神を妨害するためにこの場所へと訪れた。
実はマーシャを引き込むのはついでの事であり。
本来の目的はサザールダンジョン100階層のボスを操ること、それは女神の計画をとん挫させる材料の一つ、それがこの聖水竜を駒にすることだった。
【なにか来たわね】
《いたいた》
【だれ?】
《これはこれは申し遅れた、わが名はダークと言う神の一人だ》
【神?】
《そうだ》
【その神が何のため?】
《おぬしをそろそろ解放してやろうと思ってやってきたのだが…》
【ようやく契約が終わるの?】
《契約…そうそうその契約だ》
【これでやっと終わるのね】
《そうだ、だがすぐに終わるわけではない》
【何?】
《この場所から解放するには我らの仕事を手伝ってもらうのが条件になる》
【神様の仕事を?】
《そういう事》
【何をすればいいの?】
《これからマーシャとかいう人族の娘がこの場所へ訪れる》
【ここに?人族が?】
《ああ、それもお前の子供達を連れてな》
【我が子も?】
《そうだ》
【あの子たちまで来るのね】
《だがな、困った事におぬしの子らは人族の娘に騙されておる》
【なんですって!】
《そうでなければこのダンジョンに人族が無事に来れるわけがない》
【あの子達に嘘をついて手伝わせているのね】
《その通り》
【それじゃどうすればいいの?】
《人族の娘が来る前にこのクスリを飲むとよい、人族だけを攻撃するクスリだ》
【そうすれば子供たちは無事に助け出すことができるのね】
《その通り》
(ふふふ、うまくいったぞ)
【お任せください、必ず人族に死を与えて見せましょう】
《頼んだぞ我が使徒ウンディーヌよ》
邪神の計画それは隔絶された海王国の解放、それだけならば何の問題も無い。
その先が問題なのだ、その後のシナリオ、それは海王国を使って魔王国や王国へと戦争をけしかける事。
そのためにはサザールダンジョンのコアであるウンディーヌを仲間に引き入れ、海王国を邪神の傘下にする。
既に魔王国のダンジョン数か所にも邪神は罠を張っていた、邪神の計画通りならば王国と魔王国は現在戦争中でなければならない。
だがその企みはマーシャのせいで1年前に流れてしまっている。
グラッダなどの小悪党をそそのかせば簡単な悪だくみはすぐにできるが、国同士の戦争となるとそう簡単にはいかない。
そこそこ力のある魔族や地位のある者をそそのかし罠に陥れる、それらは時間をかけて進めて行かなければ決してうまくいくものではない。
邪神達の企みは女神の計画やゴッドゼウスそのものの邪魔をする事である。
この世界を混沌に導く、それこそが邪神の願いであり、唯一彼らの娯楽なのだから。
《では任せたぞ》
【はい、お任せください】
聖水竜ウンデチィーヌは99階層の扉が開くのを感知して邪神から渡された薬を飲み干した。
【これを飲めばいいのね】
「ゴキュゴキュ」
普段聖水竜は元の姿ではなく竜人化しておりその姿は人魚に近い。
身長は2メートルを超えるが本来の姿の10分の1ぐらいと言った所だ。
渡されたのは小ビンに入った真っ赤な液体、それは呪いのかかった液体だった。
【なにこれ!く クルシイ…】
薬を飲み干すと神々しくもあったホワイトとブルーきらめく肌が赤く染まって行く。
そして変身魔法が解かれ、どんどん元の姿である巨大な海竜へと変貌して行った。




