サザールダンジョン46階層
サザールダンジョン46階層
その頃46階層へと飛ばされたロキシー、扉の前には海中ダンジョンではなく洞窟のような通路があった。
31階層とは違い目の前に見えているのは崖の下にある洞窟から出て来たと言うような場所。
そこからは通路が伸びており片側は壁がずっと続く、足元は苔むしておりごつごつしてはいるがそれほど足を取られるような道ではない。
どうやらこの崖にある通路を奥へと進むようになっているようだ。
ロキシーは用心深く辺りを警戒しながら通路を進んで行く。
「この先に行けって言う事なの?」
「ピチャン」
洞窟の天井から水滴がしたたり落ちる、下に見える水路はやや畝っており。
この場所が満潮時には通路も水没してしまうかもしれない場所なのだと感じ取った、その理由は壁側の上部にも藤壺のような生き物が付着していたからだ。
そんなことを考えながら奥の方へと進んで行くと、今度は階段があり下の方へと降りるようになっている。
その先は海の中になるが、これ以上先へ進むには海の中へ入る以外方法はなさそうだ。
(また海の中を進まなければいけないのね)
マーシャが隣にいた時はそれほど苦手意識が無かったが、いざ一人になると海の中に対する恐怖が徐々にロキシーの心を浸食して行く。
(うえ~ん)
それでも進む事以外考えられないロキシー、足元を確かめながら一歩ずつ階段を海の中へと降りて行く。
頭まで海水の中へと浸かると海中が見えて来る、そこは海中の水路のように先へと伸びている。
意を決して階段から海中へとその身を投げ出すと、思ったよりスムースに海中を泳ぎだす。
指輪に掛けられた魔法のおかげか息は苦しくないが、何があるかわからない海中での戦いに備えてロキシーは防御魔法を自分に掛ける。
『プロテクション、トリプルガード、ドレインマジック』
ついでに魔力回復魔法を展開、現在のMPはそれほど減ってはいないが海中からMPやHPを回復できる海竜族の話が、もしかしたら自分にも応用できるのではと考えた。
それはもちろん魔族であっても魔法を使用すれば同じような効果があるはず。
思った通りこの魔法をかける事で魔力は徐々に回復して行く。
『やっぱり、それならもう一つ、ドレインエナジー』
これでMPとHP両方が1秒で10ポイントずつ回復して行く。
『来たわね』
目の前には海の底で眠っていたのか、魚人族の物とみられる骸骨が数体ゆらゆらと揺れているのが見える。
こちらに気付いたのかそれらが数体こちらへと泳ぎ始めた。
『海洋スケルトン?』
海中にいるスケルトン、その姿は人族のそれではなく元は魚人族のようだ。
尾ひれがあったり、指の長さが長かったり、スケルトンなのに泳ぐスピードは何故か速かったりする。
(なんなの!)
その姿と速さを見て、ロキシーはややパニックになる。
(どうすれば…)
スケルトン、通常ならば武器は鈍器が有効だ、だが海中や水の中はそれらの武器は相当な膂力が無ければ振るうことなど出来ない。
そうなると魔法一択と言う選択しかない。
『マーシャ様、やってみます ビッグトルネード!』
「ゴー」
目の前に渦が生まれ、徐々にそれが大きくなり魚人スケルトンが1体また1体と飲まれて行く。
「ゴー」
(あと少し…)
魔力の保有量はもちろんロキシーとマーシャではかなり違う、同じ魔法を使用したとしてロキシーの場合。
使用するMPはマーシャの10倍以上必要になり、それを維持するとなればさらにMPを食うことになる。
ドレインMPの魔法で10pずつ回復したとしても魔法のMP使用量の方が大きく上回る。
『はあはあ…これで全部かしら…』
約30体の海洋スケルトン、海中に発生したトルネードにより目の前はまるで洗濯機の中身の様になる。
結果としてスケルトンは殆ど片づける事が出来たが、保有していたMPはほぼ全部使い切ってしまった。
『マーシャ様~』
今までが楽すぎたのだから一人でこの先へ進むならば腹をくくるしかない。
だが彼女は別に弱いわけではない、魔法で作るトルネードは一応上級魔法でありMP保有量も5千以上なければ途中ですぐに霧散してしまう魔法だ。




