サザールダンジョン32階層~35階層(陸)
サザールダンジョン32階層~35階層(陸)
砂浜を歩く事約20分、海の中で暮らす海洋獣人達には陸地はやはりマイナス面の方が多いようだ。
32階層の入口である扉を開くと今度は坂を下って行く、入口は草に覆われた木製の扉だった。
中はややひんやりとしており、そこからは洞窟の中を下って行く。
このダンジョンで初めて地上の洞窟だが、この階層は地上の魔物が多いがさほど攻略も難しいものでは無かった。
現われたのはトカゲや蜘蛛などの魔物であり、サイズもさほど大きくなかったのでマーシャとロキシーが簡単に屠って行く。
そして33階層へと到達する、魔法陣がある部屋から次の扉を開けると向こう側にはまた扉。
「向こう側は又海の中のようじゃ、また水があふれて行くぞ」
2重扉の場合は減圧室のような仕組みになっている、前後の扉が閉まると海水がどんどん満ちて行く。
完全に海水に浸かった所で前方の扉に手をかざす、その扉がゆっくりと開いて行くと向こう側にいたのは。
『黒洋エイ』
『大きいな』
その姿は大きなマントの様、背は真っ黒だが腹は白くまるで空飛ぶ絨毯のように見えるがその尾にはやはり毒があると言う。
『ここは我らにお任せください』
『良いのか?』
『慣れております』
大きさはともかくとして尾の部分には毒とそしてのこぎりの歯のようなぎざぎざが付いている。
敵を効率よく毒まみれにする為なのか。
『行くわよ』
『おう』
アローリアとシャーズは人型のまま巨大なエイが舞う洞窟の中心へと入って行く。
こちらに気付くと突進してくるようだ。
ちなみに本物は何もしなければ攻撃してくることなど無い、ここにいるのはダンジョン魔物であり侵入者を攻撃するように作られている。
「ビシュンバシュン」
「ゴボゴボ…」
「ビシュン」
約30匹いた巨大黒洋エイは2人の海竜族の前では手も足も出ないようだ、海に特化している種族には相手による相性があるのかもしれない、特に相手が大きい魚である場合は彼らにとっては食料として見ているようだ。
『これで良いか』
30匹中27匹を退治したところで残る3匹は離れて行った、どうやらある程度の数を減らされると戦闘を辞めるようにもなっているらしい。
『これで次へ行ける』
ここまでは確かに順調だった、だが35階層へと進んでみるとそこは不思議な空間だった。
『なんだ?何もいない』
『ボス部屋ではないはずじゃな』
その場所はまるで生前見た事が有るプールのような白い壁で囲まれた部屋の様だった。
『魚もいないな』
『休憩場所か?』
『いや判らぬ、用心して進む方が良かろう』
だが、何もない場所で用心すると言っても難しい、マーシャもサーチ魔法を使用してみるが、何の変化も無く罠のような所も見当たらなかった。
だがそれは視覚の盲点を突いて現れる、白い柱のような物が2つその間を通った時に海水がいきなり渦を巻き始める。
『なんじゃ?』
『何もしてないぞ?』
『柱の間を通ると動き出す仕掛けか?』
「ゴー」
『引き込まれるぞ!』
『まずい』
『マーシャさま~』
数秒すると床がゆっくりと開き海水が徐々に動き出す、それは渦 どんどん渦が大きくなり底なしの海底へと全員が引き込まれて行く。
海水にも魔法がかけられているのだろう、逃げ出そうとしてもその渦は4人をバラバラに巻き込み海底のその先へと引き込んで行く。
逃げ出すことができなかったのは油断していたわけではないがこの仕組みを逃れる事は難しい。
それはこの空間全てがある目的で作られていたから。
この場所は来訪者の強さを測る意味で作られていた、それは選別する為でもあり弱い挑戦者をふるいにかけるためでもある。
ダンジョンの仕組みはそれぞれに異なる、思いもかけず今回の攻略にチャレンジしたのは神ほどの力を持つ挑戦者、ダンジョンの内部を司るシステムが4人を別々な場所へと導く。




