ダンジョン飯(調理&実食)
ダンジョン飯(調理&実食)
マーシャやロキシーの姿をまねてスキルである変身を行う、2名の姿が徐々に人型へと変わって行く。
多分、途中の変化を見たことが無ければ彼らが海竜族だと判ることも無いだろう。
但し2人は裸なので服はと言うと。
(なるほど大事な部分は洋服を着ているように色を変えてしまえばよいのかフムフム)
変身魔法、服自体の材質は真似できなくとも、その色や形まではまねる事ができると言う事。
「こ これでおかしくはないでしょうか?」
「おお~素晴らしい人にしか見えないぞ」
「本当です」
「お 俺は…」
ちなみに大事な部分は服で隠されているように変身しており、特に出っ張る部分などは見られない。
「ようこそ我が家へ」
小屋の扉を開くと、海中ダンジョンなのに木の香りが漂う。
中は質素な山小屋のような感じ、窓はあるがこの場所では風景は壁しか見えない、だが中には暖炉や台所も設置してある。
「それではそこの椅子に腰かけてお待ちいただこう」
マーシャのストレージには出来合いの食材もかなり備蓄してあるが、一応この場で肉を調理して持って来たパンと合わせて出そうと考えた。
一応日持ちも考えたパンは数種類持ってきている、海竜族がどのくらいの分量を食べるのかは不明だが、最低8人前は作ろうと考えているマーシャ。
「私も手伝います」ロキシー
「頼む、このパンを切ってくれこのようにな」
フランスパンのような長細いパンを斜めにカットする、1本が80センチほどの長さがあるが、それを2本8つぐらいになるようきり分け合計16個にする。
さらに野菜を数種取り出しボウルにいれるそれを2つ、次に肉をドンと取り出すと二人の様子が変化する。
「そ それは?」
「これはわが国で飼育した猪でトライデンビッグと言う品種じゃ」
その肩ロースと言う部位であり重さは5k以上、それをやや大きな包丁で2センチの厚さで丁寧に切り分ける。
魔法のコンロを温めフライパンに魔法をかけ2枚ずつ焼いて行く。
「ジュー」
肉を焼きだした途端、海竜族の顔が何とも言えない表情に変化していく。
海の中だけではなく空気中でもその鼻は確実に獲物の匂いをかぎ分けているのが分かる。
肉の焼ける匂い、脂 しかも最高級の猪肉。
一応10枚焼いてそれをさらに半分に切って出そうと考えている、熱さ2センチだが焼くと少し小さくなるが、1枚の大きさは20センチ以上あるので、サンドイッチのような食べ方であればそのぐらいがちょうど良い。
「ブルブル」
「姉上!」
「あれが地上の食べ物?なんて香り…」
「どう考えてもうまいはずだ」
「そうかやはり地上の生き物を調理したことは無かったようじゃな」
「はい、恥ずかしながら我らは海の食材しか食したことは有りません」
「海王様もいればよかったがな」
(城の応接間で海王がくしゃみをする)
(なんじゃどこかで噂しとるのか?)
ちょうど良い脂の乗った最高級のイノシシ肉、もちろん熟成もしてある肉をストレージで寝かしてある為、腐りも痛みもしない。
「これを2つに、そうそう」
野菜と肉そしてストレージから取り出したのはビン詰めのピクルス、原材料はカブに似た根菜類、それを輪切りにして酢とスパイスに着けてある。
それらを薄く切って挟んで食べるのだが、そこに秘伝のたれを付ける事で味は一層引き立ってくる。
「これもテーブルに出しておいて」
「はい」
ピクルスもたれも基本的にはスプーンやヘラで取り分ける目の前でマーシャがそのやり方を見せると。
待ってましたとばかりに目の前の海竜族は慌ててパンを手に取り肉を乗せると口へと持っていく。
「ハムン」
まるでそんな音が出て居そうな食べ方だ、こちらはせいぜい2つぐらい食べればそれで終わろうとしているがやはりその倍の量をあっという間に平らげてしまう。
「モグモグ、おいしい」
「こんなおいしいものがあるのか…」
固焼きパン(フランスパンの事)のロングタイプはやや柔らかいが、それでも再度焼き込んであるわけではないのでやや咬みづらい状態。
それを数回かみ砕くとすぐに咀嚼する、パン2枚肉一切れが5秒以内。
16枚に切ったパンがあっという間に彼らの胃袋へと入る、もちろん足りないのだろうがここであまり食料を放出すると予定が狂ってしまう。
後何日ダンジョン攻略にかかるかはまだ分からない、元々海竜族の体の大きさを考えればこの程度はおやつとも言えない分量なのだろう。
「終わりでしょうか…」アローリア
食事前はあれほど気を使っておとなしかった姉のアローリア、もう無いと判ると残念そうな顔をするとはシャーズも少し驚いている。
無理もない、肉もそうだが小麦で作られたパンと言う食べ物、人間でさえ虜にしてしまう魅力がある。
マーシャはコメの方が好きだが、この世界で広まった主食としては小麦の方がポピュラーであり、その食べ方は多種多様になっている。
加工の仕方も前世で目にしたようなヌードルタイプも多く出回っており、乾燥させて日持ちを良くした保存方法は似ているところが多い。
「あまり食べつくしてしまってはこの先の楽しみがなくなるじゃろう」
「そ そうですね」
判りやすい、確かに海の中で食材と言えば魚と海藻しかないと言った所か。
貝やエビ類も基本的には生で食べるのが普通で、彼らはそれを切り身にすることで料理としているようだ。
海の中では火が使えない、地上では逆に生で食べるより火を使う料理の方が一般的だ。




